「戮力同心」

秋季リーグ戦直前

野球部智徳寮インタビューI


溝口智成監督


   18年ぶりの六大学制覇、59年ぶりの全日本制覇。その数字、その輝かしい功績は立大野球部の歴史を塗り替え、立大黄金時代の到来を予感させた。全191人の野球部員が「戮力同心」を心に刻み戦い抜いた、日本の頂への軌跡。その先頭で、采配を振るう名将#30溝口智成。秋季はさらに厳しい戦いが予想されるリーグ戦。全10回の特集の最後に、指揮官に今季を占ってもらった――。

◆溝口智成監督(90年度卒=湘南)◆

――日本一おめでとうございます。激動の春季、長く感じましたか
   リーグ戦と全日本選手権は繋がっている感じはしないので、でもいつもより真剣勝負をしていた期間が1ヶ月ほど長くて。その期間は長いとは思わなかったのですが、春が終わってから秋までの期間が短いなと感じることはあります。6月の初めまでシーズンがあって、その後に祝勝会などを開いて頂いて。実質、秋に向けて本当にスタートを切ったのは7月1日でした。ということで、例年よりも調整期間が1ヶ月弱短くて、本当にあっという間だな、という感じは受けます。

――パレード等たくさんのお祝いを受けますが、印象に残るものはありますか?
    特にこれというものはないですが、これだけ多くの人が立大の優勝を待ち望んでいたのだなというのが分かり、本当に感慨深いです。パレードの時にも、池袋の商店街の人や、その他の見に来てくださった方から「ありがとう」という言葉を本当にたくさんいただいたし、昔の野球部のOBの方も冗談で「死ぬ前にもう1度優勝を見せてくれてありがとう」というような言葉をおっしゃっていて。あとは前の会社の人が本当にすごく喜んでくれて、改めてとてもたくさんの人が待ち望んでいた、喜んでいた優勝だったということがわかり、感動しましたし、感慨深かったですね。

――全日本選手権決勝戦後に熊谷主将と握手をしている光景は
   あの時は「ご苦労さん、お疲れさん」と伝えた気がします。普段からよく喋っていますので特別な言葉はないですが、あの時はそのように伝えました。熊谷も本当に先頭に立ってよく頑張ってくれましたし、苦しい時もあったと思うのですけど、本当に「戮力同心」を意識して、浸透させようという気持ちで頑張ってくれたと思います。 

――春季シーズンの統括をしていただきたいと思います。日本一になった要因は何かありますか
   チームづくりとしてやってきた「一体感」というものを体現できたからだと思いますね。やはり苦しい戦いが多くて簡単に勝てた試合がなかった中で、1点差や逆転が多い試合ばかりの中で、きっと1人に頼り切ったり1人の活躍にこだわっていたら勝ち切れなかった中で、1点を皆で取りに行く姿勢であったり1人のミスを皆でカバーすることであったり、普段からチーム一丸となってやってきたことが、成果として出た要因かなと思います。

――選手起用の面では、秋は監督の真価も問われるシーズンとなりますね
   そうですね。まぐれと言われたくないので。日本一はまぐれではできないし、秋にもう一度優勝するために練習もしてきて、満足はしていないですけれど合格点はあげられるくらいの練習はできたので、それを結果に結び付けたいなと思いますね。

全日本選手権を経て、改めて「立教らしさ」を 再認識したという指揮官。

秋季の戦いに、全国の舞台 での経験を生かしていく



――連覇に向け、夏のキャンプのテーマがありましたら教えてください
   レベルアップですね。合言葉として、意識のレベルアップ、技術のレベルアップを言いました。意識のレベルアップは、チーム力向上につながること。徹底事項を守る意識、チームの約束事、決め事をもっともっと守ろうとする意識。技術はそのままですね。打率を上げるために振り込むとか、投手が低めの制球良くするとか、バント処理で一つ先の塁でのアウトを取れるようにするとか、外野の送球のぶれをなくそうなどです。

――秋は研究されて臨むシーズンとなることが予想されますが、連覇のために重要なことは何でしょうか
   春優勝したのが本当に久しぶりなのでね。でも、チャレンジャーの気持ちが大切なのではないかなと思いますね。うまくやろうとか、プレッシャーを感じたりだとか。もう一度、春は春、日本一は日本一。秋も強敵ばかりなので。ほんとに、春もぎりぎりでしたから(笑) そういうことを頭において、でも、日本一になったんだぞ、という謙虚な自信をもって。謙虚な自信とチャレンジャー精神をもってやっていかなければなと思いますね。

――秋は4年生にとっては最後のシーズンとなりますが
    去年の11月に新チームが始動して、坪井(コ4=北海)が戮力同心を持ってきて、一体感を持ってやるぞという気持ちで臨んだシーズンで、それで華が開いたので感慨深いですね。あとは、この代は僕自身が監督になった年の入学生なので、4年間まるまる見てきた代で。まるまる一緒にやった選手が、この前優勝したので、特別と言ったらほかの代に失礼ですが、印象深い代になると思います。59年ぶりに日本一になった代といえばすべての関係者が「あの代か」といわれる代なので。立大野球部の中でも特別な代になると思いますね。

――秋の連覇に向け、あえてキーマンを上げるとすれば誰になるでしょうか
   投手ですね。春もあの3人があそこまでやってくれるとは思っていなかったんですけど、秋もどれだけ進化してやってくれるかがカギだと思います。そこまで打ち勝つこともできないと思うので。ある程度は失点を計算できるようにして試合を進めていきたいので。実力伯仲の中ではやっていけないと思うので。(――投手陣は、今上がった3人を中心に、ということか)そうですね。まずは、あの3人が主力としてやってもらわないと。他に計算できる投手も欲しいんだけれど、まあそういった計算できる位置に近づいている投手も出てきてはいるけれど、例えば比屋根(営1=興南)とか、橋本(済3=大分上野丘)かな。3人+αになってほしいですね。投手ではなく「投手陣」ですね。

「謙虚な自信」。王者のプライドを持ちつつ、 挑戦者の気持ちを忘れない。
連覇に向けた戦いは もう、始まっている―― 。
――では最後に秋季に向けた意気込み、最後にファンの皆様に一言よろしくお願い致します。
   秋の目標は、秋のリーグ戦優勝です。そのために、春よりもレベルアップするということをチームのテーマにおいてやってきたと思うのですが、どの程度のレベルアップを他行と比べてやって来れたか、その答えが出るリーグ戦になるのが秋季リーグ戦だと思います。ちゃんと練習で来たなという印象を持っているので、さあ秋どんな戦いができるかという楽しみな気持ちもあります。どこまで優勝にからめるか分からないけれど、最後まであきらめず、応援してくださっている皆さまがさらに応援したくなる、見に来たくなるチームとしての戦いをやっていきたいなと思います。 ―ありがとうございました!


全10回に及ぶ野球部秋季寮取材インタビュー。「戮力同心」を体現した選手たちに率直な質問をぶつけたが、さすがは日本一の選手たちという受け答えばかりであった。「皆で戦う」という意識が全選手から聞かれ、これぞ熊谷主将を中心とするチームが完成しつつあることを表していると感じた。明日から始まる、熊谷立教最後の挑戦・秋季リーグ戦。1か月後、再び神宮の中心で喜ぶために――。 ファンも、選手も、戦う準備は整った。さあ、皆で神宮球場へ。「立教黄金時代」の幕開けを、見届けようではないか。





(8月31日 取材・川村健裕/編集・川村健裕)