主将が語る「今季2勝」の意味



   昨季、ホッケー部女子は常に厳しい戦いを強いられていた。春秋あわせて公式戦成績は、2勝10敗1分。数値だけ見ても苦しい一年であったことは一目瞭然であろう。数少ない白星であった2勝も入れ替え戦での勝利。目標の1部5位はおろか、降格の危機を2度も味わった。そんな、苦しさの多かった2016年度シーズン。彼女なしでは、2勝の価値を伝えることはできないだろう。チームの誰よりもホッケーを愛した主将・上瀧くるみ(社4)。引退後もホッケー部を想い続けた彼女が語る今季「2勝」とはーーー。

「ホッケーがうまくなりたい」
  上滝がホッケーを始めた理由は「サッカーが好きで、似ていると思った」こと、そして「高校までにやっていた陸上競技を生かせる」というものであった。決して特別な理由ではなく、周りの同期と同じ、スティックを初めて持つホッケー初心者。
  「入部したその日から、試合に出たいと強く思っていた」。ホッケーを純粋に楽しんでいた大学1、2年。初出場は2年生秋のリーグと、同期の中では早いほうで、この公式戦の経験も彼女を更にホッケーの虜へとしていくのであった。

3年次の上瀧。試合ごとに頭角を表していた

  彼女の成長曲線はチーム随一であった。初出場からの彼女は試合ごとに成長を見せ、尊敬する先輩からポジションを奪うほどに。自身の強みである脚力を生かせるのは中盤だと感じた彼女は、努力を重ね、チーム内でのポジションを確固たるものとする。それに甘んじること無く練習を続け、いつの間にかチームにとって必要不可欠な存在へと成長していた。あっという間に3年の月日が流れ、楽しかった競技生活も大詰めにさしかかる。

「ホッケーが下手になるよ」

主将となった上瀧。
プレーでも常に先頭に立っていた

  ついに迎えた最終学年。主将決めは、先輩や監督からの指名によって決まるのだが、彼女は監督からの強い推薦により主将に就任した。理由は明白であった。「上瀧が1番ホッケーを楽しんでプレーしているから」。彼女が3年間、貫いたプレースタイルが評価され、ついにチームを背負う立場となった。しかし、この主将就任が彼女を苦しめることになる。
  先代の主将からかけられた「ホッケーが下手になるよ」の言葉。その言葉の通り、すべて自分にのしかかる重圧。
  「分かってはいたのですが、チーム全体のことを見なければならなくて。練習中から部員と積極的にコミュニケーションをとるなどを徹底していましたが、春季の入れ替え戦までは本当に苦しかったです」。
  春季リーグ戦は、入れ替え戦までの全試合無得点。収穫よりも課題が浮かぶ日々であった。通常の練習では同期に対しても厳しく接する彼女。「今思えば、リーグ戦期間は怒らなかったですね。怒っている暇もなかった」。彼女がいかにキャプテンとして苦悩の日々を送っていたかが伺える。苦しんだ末の、入れ替え戦での初勝利。この勝利は、上瀧がキャプテンとなっての初勝利でもあった。「入れ替え戦までかかってしまったのでホッとした気持ちが強かった」と振り返るが、その口調からは溢れんばかりの喜びが感じ取られた。

入れ替え戦残り1分。
得点した徳永に上瀧が抱きついた
「ホッケーを楽しむ」
  秋季もチームは苦しい戦いが続く。春季と同じく、リーグ戦は0勝。またも入れ替え戦に回ってしまう。絶対に勝たなければいけない試合、前半は2部1位の武蔵大相手に実力の差を見せつけ、2点をリードする。しかし、後半開始とともに流れが徐々に武蔵大に傾き、わずか3分の間に2失点。同点に追いつかれ、立大イレブンから前半までの余裕は全く感じられなくなっていた。  
  後半34分。試合終了まで残りわずか、1分。引退が目前となった4年生の目の色は変わっていた。ゴール前でこぼれたボールは徳永(観4)の目の前へ――。徳永は努力の詰まったスティックをこれ以上ない勢いで振りぬいた。決勝点となるゴールが決まり、上瀧はまっさきに徳永のもとへ。彼女たちは4年間最後の試合を、最高かつ最良の形で追えることができたのだ。  試合終了後はうれし涙を浮かべた彼女たち。どんなに負けても、目標を見失わず、上瀧を中心に作り上げたチームの、まさに集大成であった。

「ホッケーが大好き」

最後の入れ替え戦後の上瀧。
彼女は最後まで笑顔を貫いた

  引退後、個別にインタビューをお願いし、行われた最後のインタビュー。彼女が4年間を振り返る姿は、終始笑顔がこぼれていた。時に、まだ現役であるかのように悔しさを表す彼女の口から出る言葉はすべてが本音であった。その中、彼女が語尾を強めた言葉がある。「ホッケーを楽しむ。」 彼女が貫き通した、そして彼女のホッケーへの向き合い方の答えなのだと思う。彼女はもうスティックを持つことはないかもしれない。しかし、彼女がホッケーとともに歩んだ4年間は、彼女のこれからのためにも、そして彼女が愛している立大ホッケー部女子のためにもなる。 「OGとして応援することになるんですね・・・。でも、楽しみです!」 こうして、また、立大ホッケー部女子の歴史に新たな濃い1年が刻まれていく。



(3月24日 取材/編集・川村健裕)

引退後の取材にも快く対応していただいた上瀧。彼女の
人柄の良さがにじみ出た濃いインタビューとなった

  上滝くるみ(こうたき・くるみ)社会学部社会学科4年、立教女学院高出身。高校までは陸上競技部に所属。大学ではその脚を生かせる競技であるホッケーに惹かれ入部し、2年秋にリーグ戦初出場。そこからは、誰よりも熱いホッケー愛で4年時には主将に就任。どんな苦しい場面でも声を出せるそのプレースタイルは、幾度となくチームを救った。好きな言葉は「好きこそものの上手なれ」。休日は趣味のサッカー観戦のためスタジアムへ足を運ぶ日々で、大の鹿島アントラーズファン