「成長曲線異常アリ」


   大学から始めたアイスホッケー。初心者として一歩ずつ成長してきた。監督からの叱責を受け、精神的につらかった時期もあったという。それを乗り越え迎えたラストシーズン。ずっと守り続けていたポジションは、アメリカ人留学生と競う最激戦のポジションへ。悔しい、学びたい。様々な思いが中里(法4)の成長を加速させる。

   中里は控えめな人だ。インタビュー取材を申し込んだ際も、他の人にお願い出来ませんか、というほど。実際インタビューの場に現れた中里はとても緊張している様子だった。しかし、その緊張はすぐに解け、インタビューではゆっくりと言葉を選びながら、幼年期から現在、そしてアイスホッケーについての率直な思いを語った。
   幼い頃から人見知りで前には出ないタイプだった。自他ともに認めるマイペースな性格であり、休日は一日暇だと寝ていることも多い。そんな中里とアイスホッケーが初めて交差したのは2014年。大学入学直前に開催されていたソチオリンピックだった。画面越しのスマイルジャパンに魅了され、「大学で出来たらいいな」という気持ちを抱きつつ立教大学へと進学した。
   フィールドプレイヤーになりたくてアイスホッケー部の門を叩いた。しかし、中里が入部した頃、GKは4年生1人。それはすなわち、自分の代からGKを1人出さなければならないことを示していた。中里はその恵まれた体格からGKに向いているのではないかと言われ、一度やってみたらこれがハマった。「なかなか面白い」。
   アイスホッケーは経験がモノを言うスポーツ。2年生になったら試合に出ることが義務付けられた。当時の中里にとって、目標は「試合に出ても足を引っ張らない程度のレベル」になることだった。1年後、実際に試合に出るようになって思ったのは、試合ならではの「難しさ」。練習ではないようないやらしいシュート、相手のプレースピード、未知の世界に圧倒された。「試合に出てわかることがたくさんあって、自分のスキルのなさから、監督からずっと怒られ続けて2年から3年の前半くらいまではかなり精神的につらかった」。帰り道自転車に乗りながら涙を流し、共に帰宅する仲間から励ましてもらったことも一度や二度ではない。
   練習は人並み以上。練習時間以外にも自主練を行うのはもちろんのこと、先輩が築き上げたパイプを積極的に活用し他大学の練習にも参加した。これは今でも続いており、現在は自身のバイト先であるリンクで活動するクラブチームの練習に参加するなど努力を惜しむことはない。そうした他のチームの練習に中里は一人で参加するという。「一人で心細くないか」という問いにも、「よく言われますが、僕は全く感じていません」と笑顔で話す。GKは孤独なポジション。中里は孤独に耐えうる強さを先天的に持っているのかもしれない。

   「4年間やってきて、毎回の練習でうまくなってきたと思うが、この秋からが一番うまくなっている」。


互いに笑みを浮かべる中里とエリック。
2人の関係が垣間見える
   中里は桜が咲く季節になると危機感が芽生えるという。それは部の中で毎年経験者が入ってくるかもしれないという話があるからだ。それを聞いた中里が、今年は出られるかという不安に駆られたことは想像に難くない。男は蝉の鳴く季節にやってきた。エリック・スキャンラン(文4)。突然の留学生の加入に「これはやばい」と思ったという。
   不安は現実へ。初めてベンチに座ったのはリーグ戦第2戦。エリックの疲れにより第3ピリオドから出場した。試合後、中里は「正直出たいという気持ちはありますが、これでチームが勝つならそっちの方がいいかなと思います」とその実力を認めつつも「まだ完全に渡したわけではない」と対抗心を口にしていた。その後はエリックがスターティングメンバ―に名を連ね、中里はエリック不在時にしか出場できなくなった。

   「一試合一試合を大切にするようになりました。次があるかわからないので」


試合終盤でも集中が切れなくなったのは今秋の成長
   刺激が中里を強くする。「当たり前に出られているからといって、練習をサボっていたわけではなくてその頃もレベルに達していなくて真剣にやっていました。今の感覚は限界を突破した、自分で線引きしていたところから一個上に行けたのかなと思います。必死なのは前も同じだが、自分が必死の中で決めていた線、ここまではできるというところをエリックが来てぶちぬいた感じがします」。視野は広がる。今まではいなかったベンチからの景色。「試合中に集中しすぎていて、ベンチからの声はあまり聞こえていなかった。今は、ベンチにいると1年生すごく声を出しているなと思います。去年と比べてもみんなと戦っている感じがしていいなと思います」。試合に出ることが出来なくても学べることがある、わかることがある。その成長は止まることなくさらに加速していった。

   「後輩に何か残せたら」。

   リーグ戦は12月10日の入れ替え戦をもって終了した。2部筑波大との入れ替え戦ではしっかりと勝利を収め、1部Bの座を守った。残すのはインカレのみ。インカレについてはエリックと細谷監督が話し合った際、「中里が最後だしその方がいい」ということでまとまったという。舞台は整った。エリックと競ったこの秋を越えて。八戸の地で最後のブザーが鳴り響く。


◆試合情報◆
第90回日本学生氷上競技選手権大会 ファーストディビジョン
1回戦 立大(関東Div.T−B 6位)VS専大(関東Div.T−B 3位)
12月25日(月) 16:00F.O.
@青森・テクノルアイスパーク八戸

(12月20日/取材・編集=大場暁登)





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