「悔しい」
成長するチームの外で、怪我に泣いた"近未来エース・竹高成嘉"


   この男がいれば、3年ぶりとなるリーグ戦での白星が現実のものとなっていたかもしれない。
   今季、立大は結果からみれば10戦全敗。しかし、内容はここ3年間で最も良いといえるものだった。だからこそ、この春、すい星のごとく現れたルーキーの大怪我が悔やまれる。


4月9日の秩父宮杯対東洋大戦。
新チーム初ゴールを決めた竹高
   4月、秩父宮杯の初戦で立大は東洋大に1−17と大敗を喫した。1Pこそ2失点に抑えたが、2Pで6失点、3Pで9失点とコテンパンにされた。
   ただ、その試合で唯一得点をあげたのが、入部間もない竹高(法1)。インカレ3位の強豪相手に、臆することなくファイティングポーズを見せる姿は、氷の上で輝いていた。

   水戸啓明高校で3年次に主将を務め、全国16強入りを果たす。アスリート選抜で立大に入学し、2月に行われた長野・野辺山合宿からチームに合流。持ち前の視野の広さとゴールへの嗅覚で主将・野尻(法4)と1セット目でコンビを形成するようになった。
   秩父宮杯では東洋大戦に続き日大戦、専大戦でもアシストを記録する。「春で自分が通用しないことや、逆に大学でも通用することが再発見できたので、もっと筋肉をつけて、大学生に当たり負けない体をつくりたい。(秋リーグは)まだ1年生ですが、しっかりチームを引っ張っていきたい」。入学してわずか1カ月にも関わらず、すでにチームを背負う覚悟を持っていた。

   だがニューフェイスのストーリーは、前十字靭帯、内側側副靱帯、半月板の断裂という形で、文字通りプツリと途切れる。 
   9月に苫小牧で行われたサマーカップ最終戦、龍谷大との試合で激しいフィジカルコンタクトを受けた。負傷交代となり、即刻病院へ向かう。すると、右膝の内側側副靱帯が断裂していることが分かった。帰京後、さらに大きい病院で再検査を受けると、前十字靭帯と半月板の断裂も判明。1週間後、手術を行った。
   全治8か月。長いリハビリ生活が始まった。高校生の時に肩鎖関節靭帯を切ったことはあるというが、その時は復帰まで1か月半。これほどの大怪我は初めての経験だった。

   細谷監督は大きな期待を寄せていたようで、リーグ開幕前、悔しそうにこう話していた。
   「(チームにとって)とにかく痛い。さあリーグ行くぞって時に怪我して、僕が行けなかったので電話で聞いたときは頭が真っ白になった。本当に痛い。学生もそう思っているし、野尻は同じセットだし、竹高がいることでフォワードも2セットいいかたちでできていたので、すっごく残念」。


リーグ開幕戦、竹高のユニフォームが
ベンチで掲げられた
   開幕戦、竹高の姿は観客席にあった。MGに挟まれながら寂しげな表情で、乗るはずだった氷上を眺めていた。話を聞きにいくと、最初は努めて笑顔を見せていたが、話題がホッケーに移った瞬間、悲壮な表情に変わった。
   「ホッケーができないのもありますし、4年生とホッケーする機会がもうないですし、秋リーグが本番でそれに出られないという悔しさがあります。見ている辛さが大きい。練習には行って、問題点を指摘したりしているけど、やっぱりホッケーがやりたい」。


ドアマンとして、入れ替わる
選手に的確なアドバイスを送る
   右膝に大きな装具をつけ、松葉杖を脇に抱える。1週間のうち5日をリハビリに費やす生活。試合を見ていると、つい「自分が出ていれば」と思うこともあった。

   だが、少しずつ回復し松葉杖がとれると、リーグ終盤に差し掛かった11月4日の神大戦からはベンチ入りする。声でチームの力になることを決意し、自らドアマンを志願した。
   「チームのために何ができるかを考えたらドアマンで声を出すことだった。上で見ていると寂しいし、チームじゃないなと思ったので。一緒に戦いたかった」。
   そんな姿を主将・野尻は「1年生ですけど雰囲気を変える力を持っているし、今後立教のエースになる存在だと思っている。彼も出たいとは思うが、怪我しているからといってその面で貢献してくれている」と評価する。「来年以降は竹高が引っ張っていってくれるだろうな」。

   12月10日、1部B残留を決めた後は「(入れ替え戦で)無事に勝ってくれて、来年もできる舞台を整えてくれたので、来年爆発するしかないですよね」と笑っていた。日常生活には支障がない程度まで治り、表情にも少しずつ笑顔が戻ってきた。

   チームは25日、インカレの初戦を迎える。実家が八戸にある竹高にとって、地元開催の全国大会に出場できない悔しさは当然ある。だが、できることはただ一つ。「声出すことしかできないので、一生懸命声出します」。
   半年後の復活を夢見て――。今はドアマンとして、勝利への扉を切り拓く。


◆試合情報◆
第90回日本学生氷上競技選手権大会 ファーストディビジョン
1回戦 立大(関東Div.T−B 6位)VS専大(関東Div.T−B 3位)
12月25日(月) 16:00F.O.
@青森・テクノルアイスパーク八戸

(12月22日/取材・編集=浅野光青)



◆竹高が怪我をした部位の説明とその部位の怪我をした主なアスリート◆
・前十字靭帯…大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯。運動するときなどに膝を安定させる役割を果たす。サッカー・宮市亮、フィギュアスケート・高橋大輔、テニス・西岡良仁ら

・半月板…膝関節の中で大腿骨と脛骨の間にあるC型をした軟骨様の板。関節に加わる体重の負荷を分散させることと、関節の位置を安定にする役割を果たす。サッカー・長谷部誠、野球・平田良介、テニス・伊達公子ら

・内側側副靭帯…大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯。関節が許容範囲を超えて動き過ぎないように支える役割を果たす。スノーボード・平野歩夢、サッカー・武藤嘉紀、バレーボール・石川祐希ら





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