彼らは諦めを知らなかった。今年度春季リーグ戦の対明大最終戦、1点リードされ迎えた最後の攻撃。バッターボックスに立つ選手に、奮いたつような爆音が降り注いだ。死力を尽くした、エンドレスの『行け立教健児』。叫び、踊り、演奏し続ける。それらは塊となって、選手の背中を押す。思いは届いた。四番の笠松が渾身の三塁打を放ち、因縁の相手から6季ぶりの白星を掴み取った。私は誰とも知らない隣の席に座っていた女性と、手を合わせて喜んだ。紫が大きく揺れる応援席、勢いよく上がる十字の団旗、ようやく表情が和らいだ応援団長。あの光景を、一生忘れない。

グラウンド外の熱戦

   応援団の存在は六大学野球の醍醐味の一つだ。試合前のエール交換を終えると、すぐさま観客を盛り立てて応援スタンドを熱くする。「互いに知った仲で、あいつらの気合いに負けないという気持ちがある」(川合団長=観4)。野球で勝利するためには対戦校に応援で負けてはならない。火花はグラウンドの外でも散らされているのだ。

真の戮力同心

   多くの野球部員は「応援スタンドも戮力同心」と応援団の存在の大きさを示す。フェンスの内側にいるナインが心を一つにすべきなのは勿論のこと、外側にいるものたちも心を一つにする。これこそが野球部のスローガンである「戮力同心」の真髄だ。もっとも体現されたのは、立大の春季リーグ最終戦、対明大三回戦だろう。
   延長12回の表で明大に勝ち越し点を許し、迎えた裏。ここで敗北を喫すると、目の前にはっきりと見えていた優勝が遥か遠くへ消えてしまう。一瞬漂った負の空気を力強く吹き飛ばしたのは、「立教第一応援歌『行け立教健児』、エンドレスいくぞ!」の声だった。応援団のまっすぐな爆音で、観客にも「諦めの悪い」顔が増えていく。そして、応援スタンドが一つになった瞬間。四番の笠松が快音を響かせ、明大相手に6季ぶりの白星をつかんだ。立大ナインとスタンドを「つないだ」応援団。フェンスの外にいた戦士たちが、真の戮力同心を確かに成し遂げた。

祭りの中心にいた戦友

  夜の池袋に伝統の大団旗が凱旋した。「六大学リーグ優勝」から「全日本優勝」に枕詞を 格上げし、満を持して行われた優勝祝賀パレード。沿道には約5000人の群衆が押し寄せ、今世紀初の快挙に酔いしれた。パレードは盛り上げ軍団の応援団を先頭に、選手を乗せたオープンカーが続いた。神宮の地で共に戦った戦友が、祭りの中心で共に笑った。


さあ、勝負の秋へ

  「勝って兜の緒を締めよ」。言われずとも、団員全員の視線は秋季リーグをしっかりと向いている。今年も行われた、10泊11日の夏合宿。川合団長は「優勝した分、求められているレベルも高くなっている。そういった期待に応えられるように臨んだ」と顔を引き締めた。地獄と呼ばれるこの合宿を経て、団員は更に諦めが悪くなっているに違いない。勝負の秋は目の前だ。応援団がいなければ、六大学野球は始まらない。

(取材=小西修平・松下咲貴子/編集=小西修平)



      神宮で叫ぼう。


  2017年六大学野球秋季リーグ戦日程
対東大 
9月9日(土)11:00〜
9月10日(日)第一試合終了後
対早大
9月23日(土)10:30〜
9月24日(日)第一試合終了後
対明大
9月30日(土)10:30?
10月1日(日)第一試合終了後
対慶大
10月14日(土)11:00?
10月15日(日)第一試合終了後
対法大
10月21日(土)11:00?
10月22日(日)第一試合終了後





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