学生コーチ・河野瑞希


〜立教の「常識」に挑んだ男〜




  男子ラクロス部が新人戦2冠を達成した。

  毎年、予選突破すれば御の字とされていたにも関わらず、である。

  ラクロス経験者の大型ルーキーが入部したわけでも、ゴリゴリの留学生が加入したわけでもない。早稲田を倒し明治を打ち破って創部史上初の偉業を成し遂げたのは、ラクロスが好きな、まだ少しやんちゃ坊主感が残る新入生たちだった。

  そして、ここにも躍進の立役者がいる。男子ラクロス部育成コーチ・河野瑞希(法4)。この男も、そんなラクロス好きの一人だ。コーチとして指導したのは1年余りだが、その間に新人戦優勝が1回、準優勝が1回。どちらも創部史上初の輝かしい実績は色あせることはない。だが結果以上に、河野の貫いた信念が教え子たちを飛躍へと導いた。

  立教が勝って当たり前の「常識」をつくる

  1年生の時に指導した小久保(営3)や柳井(済3)は主力として1部昇格を果たし、育成コーチを引き継いだ枝広(法3)が率いた冬の新人戦も制覇した。河野が目指した、立教が勝つ「常識」が着々とチームに根付いている。

立教の「常識」をブチ壊したい

河野が育成コーチに就任した当時、立大は六大学の中で唯一2部リーグに甘んじていた。3年後に日本一になるための指針である「3カ年計画」に基づき、育成からの底上げを担っていた河野。彼が最初に手を付けたのはルーキーたちの意識改革だった。

「早稲田、慶應といったら常に格上。やっぱりあいつらにはかなわないみたいな雰囲気が、チームの中に流れていたんだよね」

入部したてのルーキーに、他大学への苦手意識を植え付けてはならない。河野は徹底的に勝ちにこだわった。昨季、夏の優勝までの対外試合で敗戦はわずか2度。勝ち癖をつけることで、常勝軍団としての意識を育んだ。

そして迎えた夏の新人戦は、決勝で早大を破り優勝を決めた。早稲田だろうが慶應だろうが俺たちは勝てる。時には高慢ともとれる自分たちへの自信は、積み上げた戦果と凄まじい努力に裏付けされている。

もうチームの中で早稲田に気後れする者などいないだろう。


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