1998年1月27日事件発生 大田隆幸 1. 事件概要 大田事件は、1998年1月27日朝、通勤途上の総武快速線の電車内で起こりまし た。たまたま身動きできない超満員の電車の中で、被害者といわれる女性の後ろに 立っていただけで、痴漢の犯人と間違われ本所警察署に逮捕されました。28日間の 勾留の末、起訴されました。本人は全く身に覚えのない逮捕に、一貫して否認して 闘ってきました。 2. 一審の経緯 東京簡易裁判所での裁判は、13回の公判の末、被害者女性の証言には変遷があり、全 面的に信用できないとして無罪判決が出されました。一審での争点は、 (1)被告人の供述の一貫性、自然さ、客観的証拠との符合。 (2)混雑状況について被告人と被害者の接触に時期、被害者の証言には変遷がある。 (3)被告人は鞄を手に持っていたか、肩から下げていたか。 (4)市川駅以降の接触の仕方に被告人の供述に変遷はあるか。 などでした。 被害者の証言に基づいた、再現写真、ビデオなどを証拠として提出し、採用され ました。 3. 検察控訴による控訴審 検察庁は控訴期限ギリギリの13日目に控訴しました。 東京高等裁判所での控訴審では、裁判官の職権による被害者女性の所在地尋問(千葉 地裁・非公開)が実施されました。弁護士による反対尋問の途中、被害者女性は法廷 から逃走、2度と戻りませんでした。しかし、反対尋問が成立しないまま公判は成立、 証拠採用されました。 裁判の結果は、控訴棄却。検察は上告を断念し2001年5月に無罪が確定しました。