サイバーアジア(36)

網上文学 I

 前衛が文化圏の狭間から生まれることは80年代以降のノーベル文学賞受賞者リスト<http://nobel.sdsc.edu/prize/lists.html>を一瞥してもわかるが、こうした文学形態は、わが翻訳大国において応分に紹介されているとは言い難い。紙上にないものは網(インターネット)上に求めればよいわけで、たとえば21世紀の二大国アメリカ〜中国を掛け合わせた「アメリカ中国語文学」という非国語文学のサイトも網上で容易に発見できる。
 TODAY(今天)<http://www.jintian.net/>はカリフォルニアで編集、台湾で印刷されている中国語文芸誌で、文革直後の二年間、北島(現在アメリカ在住)、芒克(現在中国在住)、黄鋭(現在日本在住)らによって刊行された。天安門事件後の1990年にアメリカで復活して以来昨年までに47冊が出されている。北島らの詩作は日本でも書肆山田<http://www.longtail.co.jp/~shoshi-y/>などから翻訳出版され、読者も多い。
 同様に1988年に中国で創刊され、1993年からはマサチューセッツで編集、台湾で印刷されている文芸誌にTENDENCY QUARTERLY(傾向文学人文雑誌)<qingxiang@hotmail.com>がある。こちらは詩や散文の他、論説も多い。
 一方オールドチャイナタウン、サンフランシスコで編集、印刷されているThe Literati(美華文学)<http://www.chinesejournal.com/>は若干色合いが異なる。戦直後に移民してきた老華僑が取り仕切るせいもあるが、上記の二誌が両岸四地を中心とした世界の中国系民に発信しているのに対して、こちらは在米華人が対象である。古くさいリアリズムが、むしろ現地の華人社会の状況を知るには役立つことが多いのは皮肉である。

(初出:『アジアクラブマンスリー』アジアクラブ、2000.6)