サイバーアジア(41)

高行健とは誰か

 ノーベル文学賞<http://www.nobel.se/announcement/2000/literature.html>が発表された。プラムディア(インドネシア)でも王蒙(中国)でもなく、フランス在住のGao Xingjian(高行健)だという。欧米でも日本でも、各紙はコメント執筆者に困ったようだ。人民日報ネット版<http://www.peopledaily.co.jp/>は第一報(10/13)で初の中国系作家のノーベル文学賞受賞と、高が1940年江西省生まれで北京外国語大学卒、現在はフランス公民であることを伝えている。
 その後Yahoo!台湾<http://tw.yahoo.com/headlines/>で「朱鎔基が、高はフランス人だと言った」というデマが飛んだり、人民日報ネット版ではいかにノーベル賞にふさわしくないかという論稿が掲載されたり、中国当局は怒り、海外華人は民主派を中心にお祭り騒ぎ、という構図が見えてくる。全体像を知るには華夏文摘増刊のノーベル文学賞特刊<http://www.cnd.org/HXWZ/ZK00/zk234.hz8.html>がよいだろう。今回の受賞理由の筆頭に掲げられた長編小説『霊山』は、1987年のフランス移民後に完成した作品で未だ中国では出版されていないが、彼のその他の作品、特に戯曲は中国国内でも現代文学試験の頻出問題だ。
 南米のスペイン語文学やアフリカの英語文学が評価されるポストコロニアル状況下で、今回の出来事が東南アジアから欧米まで、あまねく海外華人、特に表現者へ勇気を与えたことだけは確かだろう。

(初出:『アジアクラブマンスリー』アジアクラブ、2000.11)