サイバーアジア(47)

サイバー戦争

 2001年2月以降、日本のホームページの書き換え事件が相次いでいる。国家間の軍事行動である「ネットウォー(Net war)」ではないにしろ、個人による非軍事攻撃は立派な「サイバー戦争(Cyber war)」である。
 元々コンピューター熟練者を指す「ハッカー」のうち、ネット犯罪に手を染める者を「クラッカー」と呼んで区別することがあるが、一連の犯行はH.C.Uと名乗るクラッカー集団などによるものと見られている。彼らの手口はネット上で誰でも知ることができる特定のサーバーソフトのセキュリティーホールを狙ってホームページを書き換えるもので、被害を受けたサイトの情報が集まっているEVERYDAY PEOPLE<http://people.site.ne.jp/>を見ると、一般企業、大学、プロバイダー、公共機関など進入可能なサーバーが手当たり次第狙われたようだ。情報処理振興事業協会セキュリティー対策室<http://www.ipa.go.jp/security/ciadr/top-j.html>などが管理者向けに対策の告知を行っているが、こうした攻撃がなぜある時期に日本に集中するのかという事実の方に興味をひかれる。
 改竄されたホームページの内容は、ここ数年来の省庁ホームページ書き換えの際には、文字化けして意味不明のことも多かったが、最近は特別な設定なしでブラウザソフトが多言語化されているため、サイバーテロリストの主義主張が表示される結果となった。多くは中国語で日本の「軍国主義」を批判する内容である。攻撃のタイミングは決まって、日本の閣僚の歴史認識発言や教科書問題、公安の留学生ら在日外国人への扱いについてのニュースが伝わった直後に集中している。こうしたパターンはまず間違いなく、今後も定式化すると見ていいだろう。

(初出:『アジアクラブマンスリー』アジアクラブ、2001.5)