サイバーアジア(50)

韓国とどうつきあうか

 韓国IT産業の躍進がめざましい。世界有数のブロードバンド普及というインフラを生かし、ITベンチャー企業は海外進出をはじめている。1998年設立のKIPA(韓国ソフトウエア振興院)<http://www.kipa.or.kr/english/index.php>はアメリカ、中国に次いで日本にも東京IT支援センターを開設した。韓国発のIT文化ともいうべきPC房(バン)は日本に直輸入され、渋谷、秋葉原でインターネットカフェ<http://www.necca.ne.jp/>をフランチャイズ展開している。韓国企業サムスン<http://www.samsung.co.jp/>の電気製品は、量販店で目玉商品になるだけでなく、他社にない品揃えでメイドインジャパンに伍している。  モノの行き来が盛んになる一方、歴史教科書問題で日韓の交流が韓国側からの打ち切りなどで滞っている。日本国内では内政干渉という感じ方も少なくないだろう。しかし日本の終戦記念日が韓国の解放記念日に当たるのはもちろん偶然の一致でなく、日本の植民地だった朝鮮半島のほか、15年戦争を戦った中国や、日本軍政を経験したシンガポールなど、東、東南アジアには日本に対する共通の恐怖感があることは否定し切れない。  日本側の認識はと言えば、戦争の記憶はもちろん、現在の問題、たとえば島根県の竹島が韓国と領土問題<http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/takeshima/index.html>になっていることを多くの日本人がはっきりとは知らない。そして多くの韓国人は日本人のそうした無関心を知らない。学術研究の分野では、戦直後から朝鮮史研究の成果を上げつづけてきたのが他ならぬ日本の学界であることは、朝鮮史研究会のデータベース(戦後日本における朝鮮史文献目録)<http://www.zinbun.kyoto-u.ac.jp/~mizna/sengo/>を見れば首肯できる。しかし一般の認識は1982年の教科書問題からどれだけ変化しているだろう。  朝鮮日報<http://japanese.chosun.com/>によると、歴史教科書問題に抗議するため、韓国からネットを通じて日本の関連団体に抗議文を送るサイバーデモは、教科書検定前後などすでに数回に及んでいるという。日本国内の無反応と韓国の国民感情の隔たりは、日韓政府がいくら冷静に対応しようと埋まりそうにない。このまま日韓ワールドカップのお祭り騒ぎに紛れてくれるのだろうか。

(初出:『アジアクラブマンスリー』アジアクラブ、2001.8)