2005年度演習3・4年次生 国際租税法


テーマ 国際取引に対する課税について、主に英文の論文・判例をもとに、勉強し議論していきます。

演習の狙い
○英文に慣れる。――どんな職業に就いても、内容が高度・先進的になれば英語による情報収集能力は必須です。英文に慣れてもらうことが目的であり、英文を課して苛めることが目的ではないので、和文の参考書等を見ることを禁じません。ただし、あくまで参考・確認にとどめ、自分の頭で悩んで英文を理解してください。
○発表・報告(presentation)の技術を磨く。用紙はできれば(A4か)A3で。
○議論する。相手の議論を理解する。自分の主張を整理し議論を分かりやすく組み立てる。
○演習論文について――演習の単位と演習論文の単位は別です。演習論文を書かなくても演習の単位は認められますが、できるだけ論文執筆に挑戦してください。締切は2006年1月16日15:00。  法学部からの注意の要約――単位修得論文または海外研究論文の単位が認定された場合、それと同一研究テーマまたは同一科目の演習論文の単位は認められない。よって、単位修得論文または海外研究論文が認定された場合は、それと同一研究テーマまたは同一科目の演習論文を提出しないこと(提出してもD評価)。単位修得論文または海外研究論文の単位が認定されなくとも、同じ論文で演習論文の単位は認定されるので、単位修得論文または海外研究論文の単位の認否の決定(2006年1月11日掲示)を見てそこで認定されてなければ、同一研究テーマまたは同一科目であっても、演習論文として提出すること。単位修得論文または海外研究論文と演習論文が、異なる研究テーマでかつ異なる科目である場合は、それぞれ成績評価を行う。

演習の進め方
最初1〜2回 国際租税法に関する簡単な講義をします
前期 英文抜粋を配布します。毎回、報告者は英文抜粋の内容を報告し、そして議論してもらいます。
後期 最終目標として、演習論文を提出してもらいます。そのために、比較的自由に課題を選定してもらいます。演習では、報告者(または報告班)の担当を決めて、演習論文のための中間報告をしてもらいます。演習での中間報告でゼミ生の意見を聞いて、演習論文執筆に活かしてください。

その他
○引用は恥ずかしがらず、且つ正確に。
○成績評価の目安:平常点(発言の意欲、議論の的確さ等)、報告、論文、その他、で評価しました。今年は、論文だけ別に抜き出して評価します。目立って良い所がなく、はっきりと悪い所(欠席、提出の遅れ等)がある場合に、B以下の評価としました(脅しの趣旨ではなく、まじめに取り組んでいる人に報いるための差です)。目立って良い所と悪い所があれば相殺されます。合宿は、未定ですが、してもしなくても成績評価に反映しません。

質問がありましたら、研究室に私を訪ねてください(ただし、月曜日は3・4限にも別の演習を担当していますので、本演習直前の質問にお答えする時間はとれません)。特にオフィスアワー(学生が教員に質問等をして指導を受ける時間を特定すること)を定めませんが、私が研究室にいるとは限らないので、事前に確認のために電子メールをください。


ゼミの進め方

 範囲の指定は、報告者向けと全員向けとで異なることがあります。
 なお、報告者も報告者以外も、訳文を参照して構いません。ただしあくまで「参照」であって、まずは自分で読む努力をし、分かりにくいところ等を確認する、という姿勢でいてください。なお、訳本はこちらから貸し出しません。資料を探す能力も鍛えてください。
 また、独力で読み込むことは必須ではありませんので、仲間と協力して読み込むことも構いません。私達も院生時代(公式のゼミとは別に)研究仲間と外国語文献購読の自主ゼミをしたものです。同格の人達と苦楽を共にすることで、理解と動機付けが高まります。ただし、協力と称して分担することは望ましくありません。
 最初は、1頁読むだけでも1〜2時間かかるかもしれません。しかし最初は誰でもそうです。私もそうでした。「自分は英語の力がないんじゃないか」と落ち込む必要はありません。みんなそう思うのですから。最初の1〜2ヶ月は我慢です。また、どうしても専門用語は分かりにくいので、私のホームページの簡単な訳語表や、その他の辞書を活用してください。


●報告者以外の参加者は、最低でも全員向けに指定された範囲を読み、全員向けの質問に答えてください。なお、回答は2部用意してください(ワープロが望ましいですが、自分だけでなく報告者にも読めるものを)。ゼミ当日、1部は自分の手元に置き、もう1部を報告者に提出してください。

●報告者は、最低でも報告者向けに指定された範囲を読み、それをレジュメに要約し、また、報告者向けの質問について考えをレジュメにまとめてください。その際、できれば配布資料以外の参考文献も自分で探して調べることが望ましいです(例えば、5月2日4月25日のefficiencyについての質問の答えは、配布資料だけでは充分には分からないかもしれません)。更に、報告者向けの質問以外に、自分でテーマに関する問題を作り、そして自分で答える、ということがあっても構いません(というより、それは非常によいことです)。
 報告者は、レジュメに沿った報告を終えた後、参加者と質疑応答及び議論を行なってください。報告者は、参加者から回収した質問票を見て、よく分かっていないような人にも分かってもらえるように努力しましょう。
 報告者向けの質問の中には、まだ何が正解かよく分かっていないものがあります。「間違ったらどうしよう」という恐れは抱かないでください。

***

4月25日 § 1.04: 経済分析
全員向け範囲指定:3頁下から2行目 〜 5頁13行目
報告者向け範囲指定:1頁最初 〜 5頁一番下

全員向け質問
●capital-export neutrality、capital-import neutralityとはそれぞれ何のことですか?

報告者向け質問
●なぜ外国の投資家が(アメリカ)国内に投資したり、国内の投資家が外国に投資したりするのですか?
●なぜ二重課税はいけないのですか?
●efficiencyとは何のことですか? 公平(equity)とはどう異なりますか? neutralityはなぜ大切なのですか、そして本当に常に優先すべき事項ですか?
●capital-export neutrality、capital-import neutrality、national neutralityとはそれぞれ何のことですか? それぞれの基準がどうefficiencyと関わっていますか? national neutralityは本当にefficiencyの問題ですか?

宿題
 次の課題について、考えてきてください。レポートにまとめることを義務付けませんが、各自考えて議論できるようにしておいてください。
●殺人税について
 △「金持ちが沢山好き勝手に人を殺せてしまう」という批判をかわすための制度を考えてください。
 △殺人税を課すことと罪刑法定主義等との関係を考えてください。

●関税について、このように明白に経済的中立性を害す課税が許されるべきか、考えてください。「場合によりけり」というのであれば、きちんと場合分けして考えてください。

追加宿題(余力があれば、ということで)

●効率性と中立性は同じことですか。
●国家所得免税は不公平ですか?
●国家中立性が効率的となる場合を無理やり論じてください。

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5月2日 § 1.05: 課税の基礎
全員向け範囲指定:7頁18行目(できれば3行目) 〜 9頁9行目
報告者向け範囲指定:6頁下から10行目 〜 10頁2行目

全員向け質問
●アメリカがnationalityに基づいて課税することは、なぜ正当化されますか?
●法人にとってnationalityに相当するものは何でしょうか?
●connectionがlegalかfactualか、とはどういうことですか?

報告者向け質問
●アメリカがnationalityに基づいて課税することは、なぜ正当化されますか? また、あなたも資料の説明に賛成しますか?
●法人にとってnationalityに相当するものは何でしょうか?
●connectionがlegalかfactualか、とはどういうことですか?
●(9頁参照)何のconnectionもない所得に対する課税は、絶対に許されないでしょうか?
●二国の課税が競合した場合の優先順位は?
●「外国人には参政権がない。『代表なければ課税なし』であるべきだから、外国人に課税してはならない」という言説があったとします。賛成しますか反対しますか、そしてその理由は何ですか?
●資料に掲げられた3つの課税の基礎はそれぞれ何ですか? それ以外に、課税の基礎となるべき基準として考えられるものはありますか?
●日本人居住者である貴方が、外国で所得を得ました。貴方の所得稼得地である現地国での課税の扱いの如何にかかわらず、日本国政府は貴方の所得に課税しないとします。他方、貴方の隣人が日本で稼いだ所得については、日本国政府に課税されます。この扱いをどう思いますか?(公平、効率、合理的等々)

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5月9日 § 2.04 市民性、居住
全員向け範囲指定:20頁下から5行目(できれば最初) 〜 22頁6行目
報告者向け範囲指定:19頁13行目 〜 22頁下から4行目

全員向け質問
● “substantial presence” testを説明してください。

報告者向け質問
●Cook v. Tait, 265 U.S. 47 (1924):どんな事件ですか?
● “substantial presence” testを説明してください。
●韓国人俳優が日本に居住し日本の映画に出演し報酬を得たとします。当然日本の課税を受けます。このほかに、韓国も当該俳優に対し課税権を留保するべきであると思いますか?(現在できるかの解釈論と、立法論とを区別してください)
●或る個人(自然人)がアメリカの居住者であるかを決める3つのテストを解説してください。
●居住者を選択することにメリットはありますか。

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5月16日 § 2.04 市民性、居住 / § 2.05 出国
全員向け範囲指定:23頁10行目 〜 24頁8行目、 25頁4行目 〜 下から5行目
報告者向け範囲指定:22頁下から3行目 〜 26頁12行目

全員向け質問
●23頁2段落目最後のor vice versaとはどういう状況のことですか。
●23〜24頁の “check-the-box” Regulationsを説明してください。
●25頁のbasisとかfair market valueとかいうのは、何ですか。

報告者向け質問
●23頁2段落目最後のor vice versaとはどういう状況のことですか。
●23〜24頁の “check-the-box” Regulationsを説明してください。
●25頁の中ほどの例を解説してください。
●a long-term permanent residentとは何ですか。
●A国居住者であったB氏がC国に出国し、A国居住者でなくなるとします。B氏がA国に含み益のある土地を有していた場合、みすみす居住地の変更を許すことでA国の課税当局にとって困ったことが生じますか。含み益のある知的財産権(例えばA国特許権)の場合はどうですか、含み益のある宝石の場合はどうですか。
●出国する者に対し課税すること(逃散(ちょうさん)税などと呼ばれます)は日本国憲法に照らして許容されますか。(ついでに、日本史の教科書で「逃散」について調べてください)



シラバスから転載

科目コード/科目名 EX625/演習
担当者(フリガナ) 浅妻 章如(アサツマ アキユキ)
学 期 通年
備 考 国際租税法
単位数 4単位

 国際取引を行なうとどのような課税がなされるのかについて,英文の論文・判例等を題材にして勉強していきます。
 最初の1〜2回,国際租税法について簡単な講義を行ないます。租税法,国際租税法について知識がない人を前提としていますので,興味がある方は臆することなく申し込んでください。知識はあるにこしたことはありませんが,本演習においては意欲と興味の方が重要です。
 参加者を数班に分けます。前期には,毎回報告担当の班を決めて,その班に報告してもらい,その後全員で議論する,というスタイルをとります。もちろん,議論に当たっては,扱う素材を参加者全員が読み込んでいることが前提となります。後期には,各班もしくは各人が比較的自由に題材(裁判例,仮想例等)を設定し,報告していただきます。そして,原則として演習論文を各人が最後に執筆することを目指します。但し,参加者数次第でスタイルが変更される可能性もあります。
 本演習では,国際租税法という主題の他に,(1)英文に慣れる,(2)発表(presentation)の技術を磨く,(3)討論(debate)の技術を磨く,(4)自ら問題を設定・発見する,といった能力の開発も目指してください。

成績評価方法:平常点
教科書:素材は適宜配布します。参考文献は開講時に説明します。
採用人数:10〜20名程度 配当年次:3〜4年次
選考方法:レポート
1)題目:租税法もしくは国際取引の何れかもしくは両方について興味のあることを述べてください。
2)字数:1000〜2000字程度(ワープロが望ましい)
演習論文:実施する


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