2006年度法務研究科 特別演習6・租税法



シラバスから転載

科目コード/学科目名 NM906/特別演習6〔租税法〕
担当者名 浅妻 章如
単 位 数 2単位
履修すべき学年次・学期等 3年次・前期
備   考 随意科目

■科目のねらい
 昨年の中里教授の講義内容を踏まえ,そこで充分に扱いきれなかったケース等(主に『ケースブック租税法』による)を取り上げてケーススタディを行ない,更に租税法に習熟することを目指す。民法・商法等で様々な取引を学ぶと思うが,そうした取引に際し,租税法上どのような問題が生じそうであるか,という勘を養わねば,実際の取引を仕組むことは大変危険である。租税回避のポイント(納税者側も課税庁側も熟知する必要がある)として,所得(租税属性)を有利なものに移転する,という感覚を身に着けてほしい。
 租税法の問題を考えるには,或る取引がある場合に,お金の支払側と受け手側の両方の税務上の扱いを考える癖をつけるべきである。とりわけ,試験作成者がしばしば問題にしたがるのは,受け手側で課税がなされるのに,支払側でも経費・損金への算入が認められず,二重課税が発生する可能性がある場面である。また,プラス項目とマイナス項目を分けて考える癖をつけるべきである(特に,法人税法の場合,それぞれ益金と損金に該当するか否か考えることになる)。所得概念がどのように構成されているかを踏まえ,上記のような癖を身につけることが出来れば,実務でも調べるべき法条にアクセスしやすくなるであろう。
 なお,教科書中では法人税で扱われていても所得計算等に関わる事例については,本講では所得税と合わせて取り上げていく。また,昨年の講義で扱われなかった相続税についても,若干フォローする。

■成績評価の方法
平常点(授業への出席,授業毎の予習の程度,授業への積極的参加の程度,学期途中で課す小レポートや授業中の小テストの成績,等)による。ただし,70%以上の出席がもとめられ,出席率が70%未満の者は不合格となる。

■授業の概要
(111.01大嶋訴訟・164.02 相互売買事件は昨年扱われたため本講では扱わないが,極めて重要であるので再度各自自習しておくこと。なお,下の★は時間の都合で割愛する可能性がある)

1.租税法律主義,違憲訴訟(次の3例につき予習されたし)
121.01 固定資産税名義人課税主義事件
122.02 協同組合員登録免許税軽減事件
141.02 パチンコ球遊器事件

2.租税法の解釈,所得の人的帰属
外税控除余裕枠事件・最判平成17年12月19日
212.04 特許事務所賃借事件
213.02 歯科医院親子共同経営事件

3.違法な所得・支出,管理支配基準
211.02 利息制限法違反利息事件
232.03 仙台家賃増額請求事件
231.02 高松市塩田宅地事件
323.03 株式会社エス・ヴィ・シー事件★

4.年度帰属(タイミング)
232.01 雑所得貸倒分不当利得返還請求事件
323.07 大昭工業株式会社事件
興銀訴訟・最判平成16年12月24日民集58巻9号2637頁

5−7.所得分類(配当)(給与所得・事業所得)(譲渡所得)
162.01, 221.03 鈴や金融事件
323.02 東光商事株式会社事件
223.03 通勤定期券課税事件
223.01 弁護士顧問料事件
224.01 会社取締役商品先物取引事件
421.02 青森(?)りんご生産組合事件★
222.05 浜名湖競艇場用地事件
222.02 名古屋医師財産分与事件
222.06 支払利子付随費用判決

8−9.マイナス項目の利用(損益通算)(欠損の繰越・繰戻)(損失の利用)
231.01 経営コンサルタント事件★
222.04 サラリーマン・マイカー訴訟
241.01 岩手リゾートホテル事件
323.09 ケンウッド事件
323.14 行田電線株式会社事件
241.02 日野炭鉱飛躍上告事件★
411.01 クロス取引損失計上事件★
411.02 ストラドル課税繰延事件

10.法人の益金・損金
322.02 相互タクシー事件
322.03 清水惣事件
323.11 太洋物産売上値引事件★

11.組織,ヴィークル,同族会社
312.03 ネズミ講事件(天下一家の会事件)
421.01 南山興産事件★
123.01 光楽園旅館事件
330.02 山菱不動産株式会社事件

12.相続税1(制度概要)
511.01 法定相続分課税方式
521.01 贈与税の意義と類型
511.02 相続時精算課税制度
514.02 小規模宅地の負担軽減措置★

13.相続税2(ケース)
513.01, 513.02 農地売主/買主相続事件
514.01 殖産堂株式事件
522.02 相続税節税策錯誤事件

■教科書
金子宏他『ケースブック租税法』(弘文堂,2004年)
金子宏『租税法(第十版)』(弘文堂,2005年)

■参考図書・資料等
『租税判例百選(第4版)』(有斐閣,2005年)
『実務税法六法(法令編)平成17年』(新日本法規)又は『税務六法平成17年(法令編)』(ぎょうせい)

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