2009年度現代企業法(租税法部分)(EX282)


期末試験(2010年01月27日4限実施) 解説
(1) 法人税率・個人所得税率が一律30%の比例税率である世界を仮想する。過小資本税制は無視する。第0年度末に、資本が無視しうるほど小さい法人A社に対して、個人である甲が、元利合計一括払の返済期日を一年後とする約束で10000を利子率年10%にて貸し付けた。一年かけてA社は借りた資金を元に事業をし、第1年度末までに2倍に増やすことができた。第0年度末に、個人である乙が10000を出資して新たに法人B社を設立した。一年かけてB社は出資された資金を元に事業をし、第1年度末までに2倍に増やすことができた。第1年度末に、B社は乙に対して税引前利益の1割を配当として支払った。第1年度の甲、A社、乙、B社の税額はそれぞれ幾らか。また、会社の資金調達方法として負債と資本のどちらが有利か。(15点)
(2) 50%の税率に服しているC社とD社が、それぞれ10000を税引前収益率20%のプランで運用することを計画している。C社は自分で第0年度末に10000を当該プランに投資する。C社は翌年度末に課税を受けた後の残りの全額を同プランに再投資する。D社は、同じ国内の非課税法人E社を通じて第0年度末に10000を同プランに投資する。E社は翌年度末の残りの全額を同プランに再投資する。第2年度末にE社は利益を全てD社に配当する。C社及びD社の第2年度末における税引後利益はそれぞれ幾らか。(10点)

【解説】 (1) A社は第1年度末に甲に1000の利子を支払うのでこれがA社の課税所得計算において控除される。甲、A社それぞれの課税所得は1000、9000になる。B社は乙に1000の配当を支払うがこれはB社の課税所得計算において控除されない。乙、B社それぞれの課税所得は1000、10000になる。税率は一律30%なので、税額はそれぞれ、甲300、A社2700、乙300、B社3000。以上のように配当に関しては二重課税があるので、資金調達方法として負債の方が有利である。
(2) C社:第1年度末税引前12000、税引後11000→第2年度末税引前13200、税引後12100。よって第2年度末におけるC社の税引後利益は2100。(「第2年度末における税引後利益」を「第2年度末における第2年度に生じた税引後利益」と解して1100としている場合も可とする)(第0年度末10000投資→第0年度末税引前12000に増殖、税引後11000→第1年度末税引後12100→第2年度末税引後13310計算し、C社3310とする答案が幾つかあるようである。第0年度末に投資し始めて第0年度末に2000の所得が生じるという想定は採用できない)
D社:E社第1年度末12000→E社第2年度末14400→D社に4400配当→税引後2200。よって第2年度末におけるD社の税引後利益は2200。(補足:3〜4年生対象の租税法の講義では、法人が子会社から受け取った配当について課税が軽減されるということを学ぶが、本講義では扱っていないので、D社が受取配当について単純に50%の課税を受けることを想定している。)
【採点基準】 (1)各3点×5
(2) 各5点×2。 但しC社について「第2年度末における税引後利益」を「第2年度末における第2年度に生じた税引後利益」と解して1100と答えている場合も5点とする。11100は0点。C社12100のように「利益」でなく残額を記している場合は各3点。3310、3640のように三回計算しているものは各2点。13310、13640は各1点。
【講評】 (1) 甲について無視する答案がかなりあります。「2倍に増やすことができた」を利益が20000であると誤解している答案がかなりあります。「負債と資本のどちらが有利か」に対して「負債」「資本」以外の言葉で答える答案が少数あります。3000万円などと勝手に「万円」という単位をつける答案があるのはなぜでしょう。
(2) C社が10000を税引前収益率20%で運用して50%の課税を受けると、10000→12000→6000→7200→3600となるとする答案がかなりあります。そんなに苛烈な課税で納得できるのでしょうか。
(全体) ペン・ボールペン以外で書いている答案、氏名を書いていない答案があります。限界に挑戦する気でしょうか。
 317通の答案のうち3枚目についての満点答案は17通あります。おめでとうございます。平均点は9.8点です。

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