2012年度現代企業法(租税法部分)(EX289)



期末試験2012年7月25日(水)4時限実施 租税法部分 担当:浅妻章如

1.租税の意義の一つは公共財提供のための資金調達であると説明される。公共財とは非競合性及び非排除性という2つの性質を併せ持つ財・サービスのことであり、公共財についてはただのり問題が発生するため市場の失敗が起きやすいので、政府が公共財を提供する必要がある、と説明される。軍隊(防衛)以外の公共財の例として (ア) がある。 (ア) に当てはまる適切な例を記しなさい。

2.利子率・割引率が年20%、所得税率が一律40%の世界を想定し、賃金にも利子にも所得税が課せられるとする。なお講義で所得控除は扱っていないので所得控除は無視する。第1年度に甲は500の税引前賃金を稼ぎ、第1年度末に所得税を納め、税引後に残った額を全て第1年度末に貯蓄した。甲は第2年度末に税引前利子込みの貯蓄を全ておろし、税引前利子所得60について24の所得税を納めた。甲が第2年度において他に所得を得なかったとすると、甲さんが第2年度末に税引後で消費できる額は336であり、第2年度末消費額336の第1年度末における割引現在価値は (イ) であって、第1年度末に税引後所得を全て消費する場合と比べて、不利である。 (イ) に当てはまる適切な数字を記しなさい。

3.400以下の所得について所得税率20%が課され、400超の所得について所得税率30%が課されるという超過累進税率の下で、乙が500の税引前所得を稼いだとすると、乙の所得税額は (ウ) である。なお講義で所得控除は扱っていないので所得控除は無視する。 (ウ) に当てはまる適切な数字を記しなさい。

4.付加価値税率が一律8%であるとする。おにぎり屋を営む丙が、税込価格324で米等を仕入れ、精魂込めて握って製造したおにぎりを税込価格540でコンビニ業者に売りつけたとすると、丙が納めるべき付加価値税額(講義では仕入税額控除適用後の額しか扱っていないので、ここでも仕入税額控除適用後の額を意味するものとする)は (エ) である。 (エ) に当てはまる適切な数字を記しなさい。

5.A国法人である丁社とB国法人である戊社は兄弟会社である。A国の法人税率は30%であり、B国の法人税率は40%である。丁社は1600の費用をかけて絨毯を製造し、戊社は当該絨毯を丁社から仕入れ、戊社は800の費用をかけてB国で販売促進活動を行ない、B国の消費者に当該絨毯を3000で売っている。戊社が丁社から絨毯を仕入れた際の価格は2100とされているが、B国課税庁は戊社における当該絨毯の仕入れ価格が不相当に高すぎると主張し、独立企業間価格としての仕入れ価格は1700であると主張した。戊社が主張する仕入れ価格が認められた場合の戊社の法人税額をCとし、B国課税庁が主張する仕入れ価格が認められた場合の戊社の法人税額をDとすると、CとDとの差額(絶対値)は (オ) である。なお戊社には他に充分な収益があるものとする。 (オ) に当てはまる適切な数字を記しなさい。なお、絨毯に関連する知的財産権(著作権、意匠権、商標権等)の課税関係は講義で扱っていないので無視する。

【解説】
1.講義ノート1頁。例として、裁判とか立法とか治安とか。
2.講義ノート5頁。336÷1.2=280
3.講義ノート6頁。400×0.2+100×0.3=110
4.講義ノート7頁。40−24=16
5.講義ノート11頁。|C−D|=|(3000−2100−800)×0.4−(3000−1700−800)×0.4|=400×0.4=160

【講評】
1.「道路」は正答ですが、「道路整備費」「道路特定財源」のようなお金は財・サービスではないので誤答です。「高速道路」は明らかに排除性があるので誤答です。
 「水道」「電力」など排除性のあるものは誤答であり、「インフラ」は公共財的である道路等のみならず公共財的ではない水道・電力等も含めるのが通例なので、「インフラ」も誤答としました。
 講義で「インターネット上で読める小説は、公共財的性質がある」旨を述べましたが、「インターネット」そのものは料金を払わないと使えないので誤答です。
 公共財の反対の例として「とまと」をくどいほど説明しましたが、30人程「とまと」と回答しているのにはクラクラしました。この問題で「とまと」と回答するのは立教生だけでしょう。
 「ベーシックインカム」「消費税」「関税」……いや、もう、何言っているのか分からないです。
2.計算結果があまり複雑にならない数値例を作るのに苦労したのですが、そこそこの出来でした。
3.よく出来ていました。
4.一番簡単な問題のつもりでしたが最も悪い出来でした。「17.28」(=(540−324)×0.08)という誤答が目立ちました(正しくは(540−324)×8/108)。勝手に四捨五入して「17」とするのは理解できますが(それでも誤答ですが)、「17.3」という誤答がどうしてでてくるのか謎です。
5.一番難しい問題ですが、よく出来ていました。以前正解がマイナスの値となる問題を出したところ、誤答が続出したので、今回は「絶対値」で答えさせたのですが、残念ながら「-160」は誤答です。

平均点は11.01点。法学科11.23点、政治学科11.25点、国ビ学科10.38点です。頑張りましょう。
400人中、租税法部分の満点(25点)獲得者は10名です。おめでとうございます。誰が満点かお伝えできないのが残念です。

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