2014年度現代企業法(租税法部分)(EX282)



期末試験2015年1月28日水曜日4時限実施
2014年度EX282 現代企業法(1年次後期) 租税法部分 担当:浅妻章如  (ア) に適切な語句を、 (イ) 〜 (オ) に適切な数字を記入せよ。
1.大島訴訟・最大判昭和60年3月27日民集39巻2号247頁では、給与所得を得る者について実額経費控除を認めない所得税法の規定が、自営業者(事業所得を得る者)に実額経費控除を認めていることとの関係で、憲法14条(平等取扱)に違反しているかが問題となった。裁判所は違憲でないと判断した。所得税法28条(3項)は実額経費控除を認めない代わりに (ア) を定めている。
2.所得税法の超過累進税率表が、「600万円以下30%」「600万円超40%」と定められていたとする(本問では所得控除を無視する。また、所得税法以外の租税法律を無視する)。浅妻と松井が漫才コンビを結成した。2人は所得を半分こにしようと約束していた。めでたく漫才コンビは人気を博し、2014年に2人合計で1000万円の所得を稼いだ。浅妻と松井は半分ずつの所得が帰属する前提で申告をした。この時の2人の所得税額合計額を α とする。税務署長は「漫才のネタは全て頭がいい方の松井が考えているではないか。浅妻に漫才の所得は帰属しない」との理由で、松井1人に全部の所得が帰属する前提で松井の所得税額を計算し直した。この額を β とする。 β − α = (イ) 万円である。
3.付加価値税率が20%であるとする(本問では付加価値税以外の税は無視し、国税・地方税の違いを無視する。また、講義で扱っていない簡易課税制度も無視する)。せんべい屋を営む上野は、600万円のお米を仕入れ、せんべいを作り、せんべいを販売して1200万円の売上げを得た。仕入額も売上額も税込み価格であり、この他に上野には仕入れも売上げもない。この時、上野が納めるべき付加価値税額は (ウ) 万円である。
4.法人税率が30%であるとする(本問では法人税以外の税は無視する。また、講義で扱っていないので欠損金の繰越・繰戻はないものとし、やはり講義で扱っていない法人税法132条《同族会社の行為計算の否認》もないものとする)。個人である高橋は、法人である加美社の株式を全て保有している。法律に詳しい高橋は、加美社に法務アドバイスを提供する契約を締結した。加美社は高橋にアドバイス料として1000万円を支払い、費用として計上した。アドバイス料支払い前の加美社の利益は800万円であった。加美社はアドバイス料支払いのため銀行から200万円を借りた。税務署長は「加美社が高橋にアドバイス料を支払うという契約は仮装であり、真実の法律関係は加美社から高橋への1000万円の配当支払いである」と主張した。税務署長の主張が認められるならば、加美社が納めるべき法人税額は (エ) 万円増える。
5.A国(法人税率20%)の法人P社はB国(法人税率40%)の法人S社の株式を全て保有している(本問では法人税以外の税は無視する)。P社はS社に1000万円を出資していた。S社はP社から1億円を利子率20%で借り入れ、後にS社はP社に2000万円の利子を支払った。B国の過小資本税制は、日本の制度と少し違っており、資本金の4倍の額を超える部分の親会社からの借入金に係る利子の費用控除を認めない、としている。B国の過小資本税制が適用されると、S社がB国に納付すべき法人税額は (オ) 万円増える(A国・B国の通貨がともに円であり、P社・S社ともに他に充分に所得があると仮定する)。

【解説】
1.ノート3頁。給与所得控除
2.ノート6頁。α=500×30%×2=300 β=600×30%+(1000−600)×40%=340 β−α=40(万円)
3.ノート7頁。売上税額=1200×20/120=200 仕入税額=600×20/120=100 ウ=200−100=100(万円)
4.ノート10頁。加美社の主張によれば所得=800−1000<0より税額は0。税務署長の主張によれば配当は加美社の所得から控除できないので所得=800−0=800、納めるべき法人税額エ=800×30%=240(万円)
5.ノート11頁。S社は4000万円(=1000万円×4)までの部分の負債に係る利子について控除できる一方、それを超える6000万円の部分の負債に係る利子を控除できない。すなわち、2000万円の支払利子のうちの6割、1200万円の利子の控除がB国の過小資本税制により否認される。B国の法人税率は40%なので、オ=1200×40%=480(万円)


【講評】

1.平均0.08点。昨年度の結果を踏まえ、計算が苦手のようだから単なる暗記系の問題ならどうであろうかと思ったところ、正解者7人。計算問題にしておけば良かったと後悔しました。
2.平均2.53点。−(マイナス)で答えている人は、税務署長の主張する税額の方が少ないと想定しているということでありまして、税務署長を仏か何かだと思っているのでしょうか?
3.平均0.48点。講義で所得税率と付加価値税率の違いを強調したつもりでしたが、圧倒的に120(恐らく(1200−600)×20%)という解答が多かったので、内税と外税の違いが立教生ですら分からないという事実を前にして、国民一般に消費税法の仕組みを理解してもらうのは無理なのであろうという絶望感を抱いています。
4.平均0.53点。この問いに限りませんが答が「240万円」のようになっていても(万円とかがついていても)正解としています。
5.平均0.53点。たぶん移転価格の方にヤマをはってしまったのでしょう。
平均4.15点、標準偏差4.26点、最高点20点2人、最低点0点180人(180/436=41.3%)。……\(^o^)/オワタ。他の3先生の温情に期待しましょう。

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