2001年度田中ゼミ 9p
1. 行政の対応
○ホームレス問題解決の基本的方向
ホームレス問題は、もはや放置できない社会問題である。路上生活は極めて厳しい生活状況におかれ、社会システムから排除されやすくなっている。さらに、路上生活は公共空間を占拠しており、地域との摩擦も生じている。
個人的要因と社会経済的要因が複雑に絡み合って生じた、大都市の抱える構造的な問題であるホームレス問題を解決する基本的視点として、まず、ホームレス自身の自助努力が必要であることがあげられる。また、社会全体で取り組むべき課題でもあり、国や自治体、民間団体、都民が連携し、セーフティネットを構築する必要があることもあげられよう。
○施策の基本的方向
・これまでの応急援護中心の対策から、長期的、総合的対策への転換が必要。
・就労、住宅、福祉、保健、医療など、各分野にわたる総合的な対策が必要。
・福祉施設としては、自立のための一貫した処遇システムの構築が必要。
・国と都、23区が一体となった取り組みが必要。
(福祉分野における対策の方向)
・社会復帰に向けての3つのステップにより支援。
@ 第1ステップ:緊急一時保護とアセスメント
A 第2ステップ:自立支援プログラム
B 第3ステップ:地域生活のサポート
・ホームレス化防止のネットワークの構築が必要。
(他の分野における対策の方向)
・就労、住宅、保健、医療分野をあわせた総合的な対策の推進が必要。
・公園等の公共空間を都民が利用できる場として再生することが必要。
○推進体制
・国に総合的な対策の確立と財政負担の拡充を求めていく。
・常設の都区の協議組織を設けるなど、都区一体となって対応していく。
・民間団体と連携、協働し、自立支援の仕組みを強化。
2. 現状
○福祉分野
・福祉事務所の相談体制→各区の福祉事務所では窓口相談、街頭相談、食料の提供や冬期臨時宿泊事業などの応急援護を行っているが、一時的な効果にとどまり、自立に結びつかないという問題がある。
・生活保護の適用→簡易宿舎の活用を認めるなど、保護の促進を図ってきたが稼動年齢層に対する保護のあり方、入所施設の不足、アパートの保証人などの問題がある。
・ホームレスへの支援施設→自立支援センター、更生施設、宿泊所、グループホームを設置している。
自立支援センター:就労による自立を目指す施設。利用者の6割が就職。
更生施設:施設不足。養護老人ホームの入所待機者が多く平均入所期間が長期化。
グループホーム:特別区人事、厚生事務組合で実施。
○他の分野
・就労分野→自立支援センターや更生施設は、公共職業安定所と連携し、職業相談員の派遣や就労情報の提供を受け、就労先の確保に取り組んでいる。
・住宅分野→単身者向都営住宅の特別割当募集を実施しているが、高い倍率である。
・保健、医療分野→出張健康相談、協力病院や救急医療体制の確保を図っているが、継続的医療が難しい、検診等への参加率が低いなどの問題。
・公共施設管理→ホームレスの多い公園では各管理者が巡回指導を実施。他所に移動させた後の対応が課題。
○民間団体が行う支援活動
・民間のグループホームにはきめ細やかなケアをしているところもあるが食事の提供のみに止まるところもあり、施設によって処遇内容に大きな差がある。
・その他、食糧支援、生活相談など、様々な活動を展開しているが、団体の少なさ、地域的な偏在、財政基盤の弱さ等が指摘されている。
○実際の利用状況等
3.まとめ
行政としては根本からの問題解決を目指してはいるが、ホームレスの方々一人一人が、傾向はあるといってもそこに至るまでの道のりは異なったりするため、それぞれに対応していくことは難しいようだ。
逆に、民間は、一人一人と触れ合ったりし、個に応じた対応ができて自立を促したり精神的な支えになったりすることはできることもあるが、数の少なさや財政基盤の無さ、それぞれの団体のやり方の違いなどがあり、これもまた問題である。
国のホームレス対策は今のところあまりにも現状に則していないのが浮き彫りになっているように思われる。自立支援センター等への補助制度だけではなく、もっと総合的な対策(資金の援助なども含んだ現場の人たちへの協力的な支援など)が求められている。
また、ホームレスの人たちは住所がないことが多い。住所がないとハローワークに登録できないということや、生活扶助が受けられないというようなことがある。現在は民間団体などが施設の住所を貸し出して対策を講じているが、自立を促すのなら行政からの働きかけも重要だと感じた。
しかしながら、ただそういった制度ばかりを作っていくだけでは足りないかもしれない。心のケアというかそういったものも必要であり、それは行政の力だけでは難しいのではないかと思うのだ。
そういった意味でも、行政の方針であったような民間団体との連携や協働をもっとしっかりもち、早急に現状に即した対応をすることが必要であると思った。
(星野)
ホームレス方達の住んでいる家に訪問させて頂き、直接お話を聞きました。自分達は好きでこの生活をしているわけではないし、いつかは元の暮らしに戻りたいと言っていたのが、印象的でした。直接会うと、皆優しい方達ばかりでした。また、ホームレスの方達のなかでも、貧富の差があることには、驚きでした。
私は今まで持っていたホームレスというイメージが、直に会い、話す事で、いかに偏ったものかを思い知らされました。私たちは、外見、イメージ、で物事や人を判断しがちです。そういった先入観の怖さを感じました。ホームレスの方も私たちと全く変わらない同じ命を持った人間です。でも偏った先入観に支配されてる私たちは、見下して見てしまうし、ホームレスの方を襲う事件も後を絶ちません。正直、自分の心の中に、ホームレスの方を自分とはちがう者として見てしまう自分がいます。頭ではいけないとわかっているけど、ココロがついていきません。経済的に価値を生み出せる人が、よしとされる現代において、経済価値を生まない人は隅に追いやられています。そうやって隅に追いやるうちの一人に自分もはいっていると、思いました。
(伊藤)
飽食のこの時代、一切れのパンでさえ口にできない人間がこの世に何人いるだろうか。駅の地下道や公園の裏側でダンボールと共に寝泊りするホームレスの人たちを見て、「どうせ奴らはなまけものだ」と思う者も何千人といるだろう。私もそのうちのひとりだった。ホームレス訪問活動を通して、自分の中で彼らに対するイメージが少しでも変わったことは間違いではない。
一般的に、彼らの中には、自らホームレスになるべくその道へ進んだ者もいたり、家庭環境、仕事関係、災害、病気などによって、やむをえない理由でホームレスという厳しい道へすすまざるをえなくなった者もいたり、個々により実に様々な個人背景がある。前者に関しては、ホームレス保護に値しないと考えるのが私の中ではなんの抵抗もなく普通であると考えるが、後者に関しては、我々の経済社会問題や、教育などに深く関わっていることから、ひとりひとりの相互理解が大切になってくるのではないかと思う。
私たちにできること、これが私の考える課題であるが、現実的に考えて可能であるのが慈善事業家たちによる、いわゆるボランティアである。私たち、「ホームレス班」が行ったようなホームレス訪問活動がひとつの例としてあげられる。スープの会というボランティアグループに参加して、毎週土曜日、新宿の三井ビルの広場にて集合し、その後何班かにわかれて公園をまわり、ホームレスの人々にパンを分け与えたり、声をかけて個々の状態や状況などを確認したりする。ホームレスの人々の数は、新宿中央公園だけで200人ばかりいるというのだから驚きだ。と、同時に日本の失業率の悪化を目の当たりにする。自由競争主義の世界である以上、貧富の差というのはどこの場所でもどこの国でも生じるものであって、その事実は食い止められない。それを理解した上で、対策をたてるべきなのだ。
その対策を講じるにあたっては、まず、ホームレスの実態を十分に把握し、それらの人々が社会的自立を果たすためのニーズを的確に捉え、その上で様々なタイプに類型化し、そのタイプごとに自立、あるいは保護にいたる施策体系を確立する必要がある。それを踏まえ、実際の対策を実施する際には、以下の4点を考慮する。
@ホームレスの個々の状況に応じた自立を支援するための方策の実施
A関係機関の密接な連携による総合的な対策の実施
Bホームレスの自立に向けた一定の取り組みを行う社会福祉法人、民間ボランティア団体等の積極的な協力を得るとともに、必要な支援を行う
Cホームレスが地域社会の中で、自立して生活できるよう関係施設の立地をも含め、地域住民の理解と協力を得ることが重要である。
このホームレスの対策は、ホームレスが置かれた様々な状況に応じて、それらの人が自らの意思で自立して生活できるように支援することが基本となっていなければならないのである。同時に、老齢や健康上の理由などから自立能力に乏しい人々に対しては、適切な保護を行う必要があるとされているしたがって、野宿生活を前提とした支援は、あくまで緊急的、過渡的、限定的なものにとどめる必要があるとされている。
教育に焦点を当ててみると、「福祉教育」が深く関わってくるのではないか。ホームレスに施す教育としても注目を当てるところだろう。与える側は慈善事業家の一般市民などのボランティアたちだろう。また、ホームレスの人々から直接話を伺ったように、彼らに対して暴力をふるう者がいることから、彼らに対してどう接するのか、といった対応に関しても、一般市民教育、あるいは道徳教育という面では重要なカギになるではないだろうか。人間というのは、自分より下に人がいることに関して安心感を持つ。それが本質であるのは否定できないだろう。
また、政治家になって失業率を減らすというのも、なんとなく現実味にかけ、難しいことから、私たちひとりひとりにできることといえば、やはり代表的なこととして、ホームレスの訪問活動が一番大きな割合を占めるのではないか。
実際に、夜の公園に住むホームレスの方々を訪問してみると、予想以外に親切で明るく、そして陰険ではなかった。「パンをお持ちしましたがお召し上がりますか?」と聞けば「いつもありがとねー」や、「すみませんね」、「はいはいありがと」という返事が返ってきて、もはや、街中で道に迷って話しかけた人よりも、ホームレスの人々の方が感じがよくて、親近感さえわいたような気もした。私には、彼らに家を提供したり、お金をあげたりすることはできないが、せめて、彼らに対して持っていた悪いイメージを捨て、同じ人間だという考えを持つことのほうが大事なように思えた。
ボランティア活動をされている方々からしてみたら、突然ゼミの課題の訪問で訪れた私たちは興味本位でやってきたと気を悪くした人ももしかしたらいたかもしれない。しかし、私はそのボランティアの方々を心から尊敬し、小学校から教えられてきた「奉仕する」という意味がここでやっとわかったような気がした。
公園の、フェンスを隔てた向こう側には、若者たちがスケボーの術をみがき、はしゃいでいる。その反対側にはホームレスの方々が寝ていた。そんなふたつの正反対の光景を目の当たりにして、生きていくことの大変さ、不平等さを感じざるをえなかった。いろいろな想いを胸に公園を跡にしたが、その晩ずっと、建築仕事から体の不調で解雇されたおじさんの笑った顔と、「暇つぶしに植物を育てているんだ」と言っていたランニング姿のおじさんのことが頭から離れられなかった。親戚のおじさんよりも話しやすかったホームレスのおじさんたち、彼らに何かしてあげたいという気持ちがわき、再度訪問してみたいという気さえわいてきた。「してあげたい」という言葉は間違いであり、偽善好意の表れであるといわれてもおかしくない。
ただ、訪問活動を経て、彼らに対するイメージが変わり、世の中の動きに敏感になったのは事実である。いずれ日本の世の中を背負って立つ今の若者の、社会への貢献という意味では大変関わりの深い活動であるのは間違いないだろう・・・。
(川嶋)
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