社会教育・生涯学習2  子どもの「遊び」の変化

田中治彦 後期第5回 2002年10月27日(木)


1.子どもの体力の低下

 

 10月10日の「体育の日」を中心に文科省等が各地で体力測定を行っている。それによれば、中高年の体力が向上している一方で、子どもの体力低下が顕著である。

 以前に比べて、子どもの栄養状態は大幅に改善されており、子どもの体力低下の原因として、「遊び」の減少が指摘されている。しかし、「遊び」時間自体にはあまり変化がないことから、「遊ぶ」の質や内容の変化に注目する必要がある。

 

2.「遊び」の機能

 子どもの「遊び」には、次のような機能があると考えられる。

  *運動能力や体力の向上  →特に、屋外での遊びが影響する。

  *社会性や人間関係の育成 →特に、異年齢集団による遊びが影響する。

 

3.「遊び」の環境の変化(配付資料参照)

 『子どもとあそび』(仙川満、岩波新書)によれば、日本の経済成長が真っ只中にあった1965年を境にして、子どもの「室内あそび」と「戸外あそび」の時間が逆転している。 横浜市のあそび空間の変化を見ると、1955年頃にはあった森や林などの「自然(空間)」や空き地など「オープン(空間)」が20年後の75年頃には、そのほとんどが消滅していることが報告されている。

●「戸外あそび」減少の理由

1)「遊び」空間の減少

 以前のような雑木林、里山、原っぱ、路地裏、空き地などが特に都市部では消滅。現在では、都会の子どもたちは、ビルの谷間、マンションの屋上、駐車場、商店街、校庭開放など、「遊び」の“すきま”を見つけて遊んでいる。しかし、物理的な空間の減少が決定的な理由ではない。

2)「遊び」時間の減少

 現代の子どもたちは、全国平均で週2日は、塾やお稽古ごとに通っているという報告がある。以前と比べて、子どもたちの遊ぶ時間が減少している。

3)「遊び」仲間の減少

 週2回とは言え、友達同士で遊ぶ曜日や時間帯を合わせることが難しく、いっしょに遊ぶ時間が減少している。したがって、戸外で大人数で行う遊びができなくなり、室内で少人数でできる遊びしかやらなくなっている。

 このように、「三間」(空間、時間、仲間)の喪失により、次のような状況が生まれている。

  @子ども集団の少人数化

  A同年齢集団化

  B「遊び」の室内化

 

4.「三間」喪失の社会的背景

 1950年代までは、“ガキ大将”を筆頭とする異年齢集団の中で子どもは遊び、上の子が下の子の面倒を見るという人間関係を経験することができた。しかし、1960年代以降の近代化の中で、三間の喪失が急速に進んだ。

 その社会的背景には、次のようなことがある。

  @都市化(郊外のニュータウン化、千里ニュータウン、多摩ニュータウンなど)

  A高学歴化(1972年、高校進学率が90%を超える)

  Bテレビの普及(1958年の皇太子ご成婚を機に普及)

  C少年少女漫画の週刊化(1959年『少年サンデー』『少年マガジン』発刊)

  Dメディアの発達(70年代のオーディオ・ブーム、1983年「ファミコン」登場)

 これに、「室内」の環境変化が加わる。

 高度経済成長前の日本の「家(室内)」は、夏は暑く、冬は寒い場所であり、親からは、@手伝い、A買い物、B弟妹の子守、C宿題・勉強、を言いつけられるなど、子どもにとっては“居づらい”場所であった。

 高度経済成長時代、「家(室内)」は冷暖房の効いた“居心地の良い”快適空間となり、室外は、交通事故や誘拐事件(1963年「吉展ちゃん誘拐事件」)などに遭う“危ない”場所となった。

 

5.アクティビティ:「私の遊び場マップ」づくり

 子どもの頃(小学生中学年〜高学年)の「遊び場」、「遊び」の内容、「塾」や「お稽古ごと」の状況などを、用紙に記入して提出した。

 

 


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