青少年の社会教育史


  IFEL研究−戦後青少年教育の出発点

                                田中治彦

 

   原題「青少年指導者講習会(IFEL)とその影響に関する総合的研究」

 (平成4年度文部省科学研究費補助金(一般研究C)研究成果報告書, 1993年3月刊)


  もくじ

序章  青少年指導者講習会(IFEL)研究の意義

第1章 占領期の社会教育政策におけるIFELの位置

第2章 IFEL実施当時の各青少年団体の状況

第3章 IFEL・青少年指導者講習会の企画と実施

第4章 青少年指導者講習会とグループワーク理論

第5章 IFEL・青少年指導者講習会の成果と影響

第6章 IFEL・青少年指導者講習会とは何であったか?


1.IFELについて

 IFEL(The Institute For Educational Leadership)は1948(昭和23)年9月から1952(昭和27)年3月まで8期にわたり、文部省およびCIE(GHQ民間情報教育部)の共催で教育関係専門家の養成を目的として開催された講習会である。当初教育委員会の新設に応じて、教育委員会職員、教育長等に対して新しい教育行政行政指導者に必要な専門的訓練を行なうことを主目的としていたが、やがて大学行政官、教育養成系大学学部の教授、附属学校教職員、小中学校校長等に対する教育にも重点がおかれた。日本の公式文書ではIFELは最初「教育長等講習」と訳され、後に「教育指導者講習」と称するようになる。

 青少年指導者講習会はIFELの一環として開催された青少年指導者に対する講習会である。IFELの第T期、第V〜Y期の合計4期にわたって開催された。IFELの日本側の呼び方が一定しなかったため1948年に開催された講習会はIFELではなかったという証言もあるが、米側の史料では第T期を含めて一貫してIFELの名称を使用している。

2.研究の目的

 IFELが開始された1948年という年は、戦時中に解散させられ統制されていた各青少年団体が民主的な装いのもとに復活しつつある時期であった。しかし、過去10年近くにわたって上から強制指導されてきた青少年指導者たちにとっては自主的協同的な団体運営を取り戻すことが極めて困難であり、民主的な青少年団体の運営ならびに活動という点ではまったく暗中模索の状態であった。

 この時にあってIFELは米国より講師を招き、民主的活動の方法論としてグループワークを青少年関係者に持ちこんだ。講習会は合宿形式で行われ、単に講義に終るのではく、プログラムそのものがグループワークの実習となるように、受講生の討論やワークショップを中心に組み立てられ受講生たちに驚きと感銘を与えた。IFELの意義はグループワークを青少年活動に導入したことに留まらず、それまで会うこともなかった計1315名もの青少年団体や社会教育行政関係者が合宿によて共通の体験をし関係を深めたことにある。ここでの人間関係が後に日本社会教育学会や中央青少年団体連絡協議会の結成へのひとつの契機となっている。

 IFELが戦後の青少年運動に果たした役割と影響が大きいものであったにもかかわらず、従来この分野での研究は十分には深められてこなかった。その理由は当時の資料が散逸し総合的な把握が困難であったことにある。本研究は当時の資料の収集と関係者の聞き取りを通して、IFELが戦後の青少年の社会教育に果たした役割について総合的に分析することを目的としている。

3.研究の方法

 本研究はまず散逸しているIFELに関する資料の収集と、当時の関係者へのヒヤリングにより青少年指導者講習会の全容を明らかにすることを第一目的とした。第1年次(平成3年度)においてIFELの会場となった4都市(東京、仙台、京都、福岡)の大学と国立国会図書館において資料収集を行い併せて関係者のヒヤリングを実施した。附属資料3にあるように国立国会図書館憲政資料室の「SCAP/GHQ資料」の中に大量のIFEL関係資料を発見した。また、東京大学とお茶の水女子大学においてIFELの講義録や関係資料を発見した。

 第二の目的は、IFELが各青少年関係者に与えた影響を調査することである。第2年次(平成4年度)に上記4か所の都市の公立図書館と東京に所在する各青少年団体本部(日本青年館、ボーイスカウト、YMCA、中央青少年団体連絡協議会)を訪問し、IFELおよびその影響を示す刊行物の発見収集に努めた。

4.本報告書の構成

 第1章において占領期の文教政策全般および社会教育政策においてIFELがどう位置づけられているかを考察する。続く第2章で、IFELが実施される当時に各青少年団体がどのような状況にあったかを見る。第3章で、青少年指導者講習会(IFEL)がいかに企画され実施されていったかを追う。第4章では、IFELで導入されたグループワーク理論の内容と各団体での受容について考察する。第5章でIFELがその後社会教育の理論と実践にどのような影響を及ぼしたかについて考える。第6章でIFEL研究から見えてきた占領政策の意義について考察し、今後のIFEL研究の課題と展望について述べてみたい。

 附属資料としては、@IFEL・青少年指導者講習会の概要、AIFELに関する通達、B『GHQ/SCAP資料』におけるIFELの概要、C第T期IFELの講義録、D青少年指導顧問制度職務規程、EIFEL関係文献目録および所在情報、FIFEL関係年表を付す。


本論文は「IFEL・青少年指導者講習会とその影響に関する研究」として、『岡山大学教育学部研究集録』第95・96号(1994)にも収録されている。

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