青少年の社会教育史


 少年団運動の成立と展開

英国ボーイスカウトから学校少年団まで  
田中治彦 著  
九州大学出版会 1999年      
      

 本書は日本の少年団運動の成立と展開について、明治後期から戦後にボーイスカウトとしての復活するまでの過程を、新たに発掘した資料等によって記述し分析することを目的としている。日本の少年団の起源としては江戸期の子供組や武士子弟の教育法があり、さらに明治期の宗教界の日曜学校、口演童話などの児童文化運動がある。これらのさまざまな運動が合流して大正期に少年団運動として展開されるのであるが、その際に決定的な役割を果たしたのが1907年に英国で興ったボーイスカウト運動である。ボーイスカウトの理念と方法論の受容の仕方は各少年団によってまちまちであり、純粋に英国式のスカウトを追求した少年団もあれば、それを排除して独自の方法で少年訓練を実施した少年団もある。

 

本論文では、第1章においてまず英国のボーイスカウト運動の起源と展開について述べる。ボーイスカウト運動は当初大英帝国の維持発展を目的として始められた青少年運動であったが、その方法論は創設者の意図を超えて国際的に受容されていく。その過程でスカウト運動自体も国家主義的で軍事訓練的な運動から、国際平和主義的で野外活動を主とする青少年団体へと変貌する。本章ではこれらの過程を跡付けた上で、他国においても受容されたスカウトの方法論の特質について分析する。

第2章では日本の少年団運動の形成過程について詳述する。ボーイスカウト式の訓練法をそのまま受容しようとした東京少年団や京都少年義勇軍、そしてスカウト方式を拒否し武士道に基づく訓練法を貫いた沼津の岳陽少年団や子供組の伝統の上に児童文化活動を展開した座間幼年会等についてみていく。

1922(大正11)年に創設される少年団日本連盟はこれら様々な少年団の連合体であり、その設立当初から「英国式」対「日本式」、「中央」対「地方」、「地域組織」対「学校組織」という対立や混乱を内包していた。このことが後に軍国主義の高まりのなかで日本連盟を動揺させ分裂させる原因となる。第3章では少年団日本連盟の成立事情と、その設立当初からあった対立や確執について分析する。本章では、日本の青少年教育の伝統と外来のスカウトの方法論との関係について、及び社会階層と少年団の問題についても明らかにする。

第4章において、少年団が昭和の軍国主義とともに分裂し、最終的には大日本青少年団へと統合される過程を追究する。文部省と一部の軍部は学校を基盤として団体訓練を重視する学校少年団の組織化に乗り出し、1935年にはそれらの連合体として少年団日本連盟とは別に帝国少年団協会を発足させる。1941年には男女青年団の全国組織と少年団の2組織をもって「大日本青少年団」が統制組織として発足して、戦前のボーイスカウト系の少年団運動は消滅する。本章において少年団と学校教育との関連、及び少年団と軍事訓練について考察する。

第5章では、戦後の占領政策のもとで復活するボーイスカウト運動について分析する。戦後の社会教育においてボーイスカウト及び少年団運動がどのように位置づけられるのかを最後に考察する。

 

 本書は1996年に九州大学に提出された学位論文「少年団運動の成立と発展に関する研究」をもとに、文部省の科学研究費の出版助成を得て発刊の運びとなったものである。上平泰弘、中島純の両氏とともに1991年以来5か年にわたって活動した「少年団研究会」の成果抜きには本書はありえなかった。同研究会の成果は『少年団の歴史−戦前のボーイスカウト・学校少年団』(萌文社、1996)にまとめられている。同書は本書と構成をほとんど同じくするが、内容的には各人の独自な問題意識にしたがって書かれており本書と見解を異にする部分も多々ある。本書とともにお読みいただくことで、複雑な戦前の少年団運動をより多面的立体的に捕えることができよう。


少年団運動の成立と展開に関する研究

も く じ

 

序章 少年団・ボーイスカウト研究の意義

第1節 本研究の主題

第2節 本研究の課題

第1章 英国のスカウト運動の起源とその方法

第1節 ボーイスカウト運動の成立

第2節 ボーイスカウトの理念と方法

第3節 第1次世界大戦とスカウト運動

第4節 英国のボーイスカウト運動の特質

第2章 日本おける少年団運動の形成過程

第1節 日本の青少年運動の系譜

第2節 スカウト運動と日本

第3節 日本におけるスカウト運動の起源

第4節 精神教育幼年会と東京少年団

第5節 日本式訓練の岳陽少年団

第6節 座間幼年会と座間少年団

第7節 山本瀧之助と少年修養団

第3章 少年団日本連盟の成立

第1節 皇太子の欧州歴訪とボーイスカウト

第2節 少年団日本ジャンボリー

第3節 少年団日本連盟の発足

第4節 スカウチズムと三部制

第5節 日本の少年団運動の特質(1)

第4章 軍国主義と少年団運動

第1節 満州事変と少年団日本連盟

第2節 ピオネール運動と労農少年団

第3節 校外生活指導に関する訓令

第4節 帝国少年団協会の成立

第5節 大日本少年団連盟の路線転換

第6節 青少年団体の統合

第7節 戦時体制と大日本青少年団

第8節 日本の少年団運動の特質(2)

第5章 戦後のボーイスカウトの復活

第1節 占領政策とボーイスカウト

第2節 社会教育政策と青少年団体 

結語 少年団とボーイスカウト


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『少年団の歴史』へ

『ボーイスカウト』へ

『鈴木利貞と座間村幼年会に関する研究』へ

「ボーイスカウトの謎(英国留学の思い出)」へ


 

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