「人口」「貧困」「環境」のトリレンマ

 


 今日本で広く行われている環境教育を見ると、環境破壊の原因を先進国の過剰生産・過剰消費に求め、その解決策として自然保護とリサイクルへの参加を求めるというスタイルが「定番」になっているようである。しかしこれでは地球環境は永遠に守られない。なぜなら、地球環境悪化の原因は先進国の過剰消費と並んで、開発途上国の人口問題と貧困の問題にあるからである。

 1999年の10月頃には世界の人口は60億人に達する。この半分の30億人であったのは横浜(大洋)が先に優勝した1960年のことであった。人類は約1万年かけて30億の人口に達し、その後わずか40年たらずで倍の60億人になった。ヒトの棲息域が拡大すればそれだけ野生生物の生活圏は狭められる。インド亜大陸の急激な人口増でトラが絶滅の危機に瀕しているのはよい例である。

 しかも問題はこの60億の人口の5分の1以上は、日常の生活のニーズ(衣食住・教育・医療など)を充たせないほどの「貧困」の状態にあることである。「貧乏人の子だくさん」という言い方があるように、貧困から脱却しない限り人口は増えつづける。そして貧困問題を解決するには一定限度の「開発」が必要なのである(ただし従来型の工業優先の開発である必要はない)。

 地球環境を守るために途上国は人口を減らしてください、といくら先進国側が主張しても説得力に欠ける。なぜなら一人当りに換算して、日本はインドの約14倍、アメリカは30倍以上のエネルギーを使っているのである。インドから言えば「インド人30人減らすよりアメリカ人1人を減らした方が地球環境によいでしょう」ということになる。

 私たちは「人口」「貧困」「環境」という相互に密接に関連した「3元連立方程式」を解く必要に迫られている。したがって地球環境を守るための環境教育としては、従来の環境教育に加えて人口・貧困・開発問題を扱う開発教育を同時並行して進めねばならない。あるいは人口・貧困問題を視野に入れた環境教育を実践していかねばならないのである。人口問題にも貧困問題にも触れていない地球環境や環境教育のテキストが横行している現状には警鐘を鳴らしたい。

 

『環境教育情報センターNEWS No.10』掲載

(1998年11月、田中治彦)


 

 

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