公開講演会レポート

  公開シンポジウム

『環境の世紀〜問われる政治』  

      2002年12月7日(土)16:00〜18:00
    立教大学池袋キャンパス 8号館8101教室

       【パネリスト】
         愛知 和男氏 (関西大学客員教授、元環境庁長官)
         幸田 シャーミン氏 (ジャーナリスト:環境問題)
         橘 優氏 (朝日新聞社事業本部長、前政治部長)
       【司会】

          阿部 治氏 (本学異文化コミュニケーション研究科教授、社会学部教授)

       【レポーター】
          異文化コミュニケーション研究科1年次 小玉敏也

写真:左から阿部治氏、幸田シャーミン氏、橘優氏、愛知和男氏

 

愛知和男氏(関西大学客員教授,元環境庁長官)、橘 優氏(朝日新聞社事業本部長)、幸田シャーミン氏(ジャーナリスト)の、三人のパネリストを迎えて公開シンポジウムが開催された。会場は、300人近くの聴衆が参加し各人の主張や議論に熱心に聞き入った。

<各パネリストの講演>
(1) 愛知和男氏
「人類が地球によってほろぼされないために」というテーマで、ご自身の問題意識を語った。人間の知恵で人間を救うにはどうすればよいか考えて実行するのが21世紀の政治の重大な課題であるとしたうえで、二つの問題提起をおこなった。一つは、地球環境問題を解決するためには、第二国連を創設して各国が地球益を最優先に協力し合うべきであるということ。もう一つは、我々の日常生活を根本的に変えていくためには環境教育が重要であるということである。
(2)橘優氏
1960年代以降、公害反対運動等の住民運動の拡大や政治レベルでの環境政策の進展に見られるように、環境問題への国民的な関心や意識が着実に高まってきた。最近では、宍道湖の中海干拓事業が中止されたことが朗報である。歴代の政治家や環境省の努力は評価されなければならないが、環境問題を解決する主体はあくまでも市民である。市民が、環境問題解決へ向けての当事者意識を持って持続的に社会変革の運動を展開していくことが、今強く求められている。
(3)幸田シャーミン氏
地球環境問題の解決へ向けて三つのポイントがある。一つは、「ひと」が要であるということである。特に若い世代が、チャレンジャーとして想像力と調査能力を生かして問題に立ち向かって欲しい。二つ目は、未然防止の重要性である。費用対効果から見て、汚染を放置して被害者の健康悪化に対する補償をおこなう金額よりも、未然に汚染防止ができる設備投資を行う方が長期的に見てはるかに経済的であるという観点も忘れてはならない。三つ目は、グローカルに問題に取り組もうということである。市民一人一人が、地球環境問題に対するstake-holderとして身近な地域を舞台に社会に参画する能力を高めていく必要がある。
<ディスカッション>
環境問題の解決に向けて、パートナーシップ(市民・行政・企業NGO)をどのようにつくりだしていくかについて議論をおこなった。

 愛知氏は、環境に関心を持つ国会議員を一人でも多く国会に送りこむよう選挙で一票を投じるべきだと主張した。いまだに、国会では環境を切り口に政治が動いていない現実があり、マジョリティを形成していないとのことである。
  橘氏は、ここ十数年間で環境に対する認識は着実に進歩しているが有権者の発信力が極めて弱いとして、自分の考えを実現してくれるのはどの政治家かという観点で候補者を選挙する強い意志表示が必要であると主張した。
  また、幸田氏はハイデルベルク市長との出会いを例にあげて、政治家に問題解決のイニシアチブを全面委任するのではなく,有権者が行政施策に積極的に関与することで、共同の責任で市民による政治をつくりだしていくことの重要性を説いた。

三人のパネリストの政治に対する考え方に微妙な差異と共通点があり非常に有意義なシンポジウムであった。愛知氏は元国会議員らしく議会制民主主義の重要性を論じたが、幸田氏は一歩距離を置いて市民参加による政治の運営を志向されている印象を受けた。しかし、各パネリストに共通するのは有権者或いは市民が、政治の主体となって環境問題の解決に取り組むことの重要性を訴えられたことである。そこに、今回のシンポジウムの意義があると考えた。