2006年度 メディア社会学科講義(後期) 
言説分析 レポート講評(提出者64名)


 成績発表に先立ち、今回のレポートに関して講評を行ないます。

 まず、全体としては、受講態度が良好だったこともあってか、きちんと作成されたレポートが多く、評価も高いものが多かったです。

 注意する点を挙げるならば、以下の二点になるでしょうか。


1)参考文献の使い方が効果的でない
   参考文献については、今回の場合、①分析方法について参考とするもの、②分析の目的や結果の考察について参考とするもの の二種類が使われるものと考えられます。このうち①についてはきちんと参照されたものも多かったのですが、②については参考文献を使って説明されたものが、ほとんどなかったように思います。

 次の点とも関連しますが、そもそもどうしてそのテーマとメディア素材を選択したのか、について、その根拠や事情に関する情報を参考文献で表さないと、分析を行なうことの意義が伝わりにくくなります。単なる感想でなく、分析した結果についてどのように考えるのか?なぜそのように考えるのか、ということが示されないと、特に洞察力として評価されるポイントが低くなります。

 また、明らかに参考文献に書かれていない内容が書いてあるなど、本当に文献を読んで提示しているのかが疑われるものもありました。インターネットなどからの剽窃も疑われやすい昨今、参考文献のどこに該当するのかを丁寧に示すことは重要でしょう。


2)題材を選んだことの意味:レポートから何を明らかにしようとしているのか
 今回は単純にいえば「言説分析をしなさい」という課題なので、どういう題材を取り上げるかについてはその根拠を示す必要はそれほどないのですが、少なくとも、何を明らかにしようとしており、そのためになぜその題材を選んだのか、ということがないと、それこそ「分析しました」だけで終わってしまいます。実際、レポートの構成としても、何を明らかにしたいのか、という目的が書かれておらず、いきなり題材の説明から入るものも多かったです。そういう分析だけを読んでも、特に言説分析の場合は、それをどう受け取ってよいのかは判断がしにくく、その結果、せっかくの分析がきちんとした評価を得られないという場合も生じてきます。こうした場合もやはり、参考文献を使うことによって、今までこういう分析が行なわれているから、といった根拠付けができれば、それと比較するなどの意義も見えやすくなるはずです。目的が書かれてない場合は、書かれている場合に比べて論理性の部分で評価が低くなりました。

 繰り返すように今回は言説分析という方法を試してもらうことが主眼であったので、成績評価としては厳密に問いませんでしたが、少なくとも分析に対してなぜ?という疑問を投げかけることで、次に何を考えるべきか、それについて何を調べるか、次の目的が明らかになるはずです。これがきちんと行なわれている場合は洞察力のポイントとして評価しました。



 受講者の大半が1年生ということもありますが、言説分析は、まず方法を厳密に覚えるよりも、社会で行なわれていることを、「言説」すなわち、人々の経験のあり方として理解するセンスを意識することが重要かと思いますので、今回で終わることなく、いろいろな対象に対して、「言説」として分析する可能性を考えてもらえればと思います。


講評としては以上です。
 

 

2006.3.6

是永 論

立教大学 社会学部 是永論研究室