千葉大学文学部

2007年度後期 メディア社会学a 最終レポート課題講評(提出者37名)


最終成績の発表に先立ち、今回のレポートに関して講評を行ないます。
特に目立った点のみを簡潔に挙げます。

まず目についたのは、レポートにおいて何をどの程度まで明らかにしたいのか、という問題意識が不明確なまま書き出され、最終的にどういった結論が導かれるのか、といったことが不明瞭であるものが多いことでした。あくまでレポートであるため、必ずしも考察範囲を広くする必要はないのですが、その範囲が明確でない以上は、レポート全体としての評価を判断しかねるわけで、逆に「洞察力」が不足しているような印象も与えました。

上記に関連して、ただ論点だけを羅列される形で、1について、2のことが明らかになり、その結果3ということが言える‥といった論理的な流れを持つ考察が見られないものも目立ちました。こういったものは、逆に論点を乱立させている印象があり、紙幅の狭いレポートではかえって悪い評価をもたらすものです。同じように、事実的な解説だけが詳しく、その事実をどのように考えるかについては、あまり書いておらず、考察不足な印象を与えるものがありました。
条件がなぜ『メディア社会』の形式を参考にするようにしたかといえば、事実の部分と考察の部分をきちんと基本に忠実に書き分けている本であったためであり、そこまでは減点と要素とはしませんでしたが、その意義をあまり踏まえないで書かれたものが多かったのは残念でした。

段落わけと章立てをうまく利用して、論点が整理された形で読めるレポートを心がけてください。

テーマとしては、それほど重なったものは見られませんでしたが、1月21日時点でちょうど「あるある大辞典」の捏造問題が発覚したためか、このテーマだけには相当数の重複があったため、独創性に関して減点をされたものがあります。捏造があった事実は確かに大きいものですが、事件の全貌が解明していないために論じるのが困難である一方で、手近なところから取ったという印象は否めませんでした。ただし、いくつかの文献に当たり、洞察を深めたものに関してはそれほど大きな減点にはなっていません。
 

また、ごく基本的なところで、指定された形式を守っていないものも目立ちました。特に資料を「添付」していないものや、参考文献の対応する部分がはっきりとしていない場合、減点要素としては重視しました。
 

 今回は平常点については一律に加点した分、レポートの方はかなり厳しく判定したところもあります。また、講義全体として、メディアが経験にいかに関わるか、ということを問題にしたのですが、そういう視点があまり積極的には考えられておらず、極端にいえば、「いかにもありがちな」レポートとして、この講義でなくても他でもよい、という感じでは、受講された皆さんとしても、半年授業をした立場としても、あまり実りがないのではないでしょうか。時間がなくてあまり皆さんの意見を聞けなかったのはこちらも反省材料としていますが、ただの提出物としてではなく、課題を通じて講義のテーマをどう理解したか、あるいは自分としてはこう考えた方がよい、というところを出さないと、レポートを書くこと自体の意味も半減するように思いました。

 講評としては以上です。

2007.2.16

是永 論