2007年度 社会学部講義(後期) 
言説分析 レポート講評(提出者102名)

 

 

成績公表に先立ち、今回のレポートに関して講評を行ないます。

 まず全体としては、レポートとして求められている基本的な条件を概ね満たしていると思われましたが、その一方で、特に洞察力の不足から、レポートとしてAの評価に相当するものは非常に限られるという結果になりました。

 以下では、洞察力についてポイントになった部分を述べます。


1)分析の視点について

 「言説分析」という科目なので、当然考察する対象も「ことば」になるはずなのですが、実際に「ことば」やシークエンスといったものに細かく注目しながら分析を行なったものは多く見られませんでした。対象が広告の場合、単に広告が伝えている大まかなイメージやその解釈だけが述べられていたり、広告やマーケティングの手法から解説を引用したりするといったものが目立ち、なぜ、その広告でそこにそのような「ことば」が用いられているのか、あるいはどういった人物がそこに登場して何をしているのか、といったことにまで考察を広げられずに終わっていました。

 また、対象となる記事や広告をただ一つだけ挙げ、その内容や背景の説明に終始するケースも目立ちました。特に複数挙げるように指示してはいないので、それだけで減点とはしませんでしたが、何を対象にするにせよ、分析を行なうにあたっては、同じような題材を用いている例を比較して、どのような「ことば」がそれぞれ同じように用いられているのか、あるいは同じ題材でも違った「ことば」が用いられていないのか、といったことなどをしないと、どうしても分析が表面的になものに終わってしまうおそれがあります。

  

2)文献参照について

 今回は文献の参照を必須としましたが、そもそも分析を行なうためには、その記事や広告が書かれた社会背景を照らし合わせたり、あるいは社会学的な文献で言われていることと比較するなどといったことも必要になるはずです。しかしながら、そのような点からきちんと文献を参照したものも多くは見られず、最後に文献の名前を書いているだけで、結局その内容がどの部分に使われているのかがよく分からないものが多いのが気になりました。

 文献を参照する目的の一つは、その文献にある一つの考え方を参照することで、考えようとしていることについて、新たな視点を取り入れたり、考え方を深めるためであって、ただ関係したものの名前を挙げればよい、というものでは決してないはずです。特にメディア社会学科の履修者については、基礎演習や社会学原論などの基礎科目の教科書を参照する場合が多く、機械的な印象を受けました。使用しているデータに即した文献を検索し、それを参照することが求められます。


 最終的な成績評価はレポートに授業での課題点などを付加して総合的に算出されます。


以上

2008年3月10日
是永 論