2010年度 千葉大学文学部講義(後期) 
メディア社会学b レポート講評(提出者38名)

成績公表に際して、今回のレポートに関しての講評を示します。

 全体的にこちらの要求する内容を満たしたレポートが多かったように思います。課題に示した条件をクリアしていれば、一定の水準として評価されるように採点しました。
 ただし、下記の点については逆に課題条件の中で減点対象として指定していましたので、こちらが守られていない場合は、減点が大きかったものと理解されたく思います。

1)文献参照について
 今回は「書名を示すこと」という条件で指示していたのですが、全く書名がないものや、あげられていたとしても内容的にどの部分に使われたものなのか、判断ができないものが目立ちました。こちらとしては、課題に対してふさわしい文献を自らで見つけだしたり、あるいは授業で触れた部分を中心に読解を深めたりした結果をレポートに反映していただくプロセスを想定して、期間や提出条件を考えています。
 何よりも、そういったプロセスがない場合、いくらデータを挙げて細かく分析をしても、結局はその内容を独自に解釈しているだけで、その解釈がどのような根拠を持ち、またどういったものと共通して考えることができるのかが判断ができないことになります。特にCMを対象としている場合は、ただのCM批評になるところもありましたので、記号論などの考えを明示して分析した場合との差を重く見て減点したところがあります。

2)分析対象の明示
 もう一つは、何を分析対象としているのかが明示されておらず、記事(コンテンツ)が挙げられていた場合でも、その記事をどういった観点から分析しているのかが明示されていないため、単なる参考資料以上のものとしては考えられませんでした。レポートは試験に準ずるものでである以上、こちらの要求に対して最適な形式で論述が行なわれていること(簡単にいえば、出された質問にきちんと答えていること)が第一条件であるためそこが抜けてしまっては、レポートの意味をなさないことになります。
 特にこのレポートでは単なる記事の内容ではなく、記事の「理解」が問題とされているわけですから、その「理解」に対して「ことば」を結びつけて社会関係について考察を行う必要があり、その間を飛ばして何かの「社会関係」について書かれたとしても、「このCMにはこういう送り手がいる」といった、少し想像すれば自明なことを書くだけでは、何も記事内容を分析する必要はないことになります。

 今回はやや授業が変則的な形で進んでしまったため、履修者の方にはご迷惑をかけましたし、後半の相互行為分析について説明が不足していたので、その点はあまり問いませんでしたが、一方では「ことば」という観点での分析を要求していることから、より詳細なレベルで「ことば」について分析し、それに文献を使って考察を加えたものに対しては、それだけの高い評価を与えました。

 最終的な成績については、今回のレポートに加え、4回の授業内課題提出への評価にもとづいて総合的に算定しております。

以上

2011年 2月24日
是永 論