「ベンチャーは頑張り続けられること、これに尽きる」

アルテマ株式会社 代表取締役社長兼CEO 篠田 亘司

「Business Creator」は、ビジネスをクリエイトした方や、MBAという立場から見て価値のある活動を行われている方にご登場いただくコーナーです。

 インタビューを終えた帰りかけに、『社長失格』(日経BP社)で有名な板倉雄一郎氏と偶然出会った。板倉さんに間借りしています、と篠田さんはいう。ベンチャーの世界は浮き沈みが激しい。篠田さんも、ベンチャーは矛盾だらけ、アクロバティックだと表現した。篠田さんの起業動機は元クレイフィッシュの松島庸氏との出会い。その松島氏も、今は『追われ者』(東洋経済新報)と自らを呼んだ。「大変な状況」とみる今の日本経済に、篠田さんはどのようなビジネスでリ・スタートを切るのか。ビジョンの進化とビジネスのこれからをうかがった。

−篠田さんの起業動機というのは何でしょうか?

 私が大学3年(94年)のときにシノックスという会社を立ち上げたのは、当時武蔵大学、19歳の学生だった松島氏に出会ったからですが、彼は私より若いのにもう起業していた。彼のような天才肌で、傍若無人ともいえる人間が会社を立ち上げどんどん仕事を広げているのをみて、私もビジネスを始めようと決めたわけです。

―でも、どうしてビジネスの世界に?

 大学時代、一生を通じて社会に貢献するには、どうしたらよいのか考えていました。自分の存在価値は、どうやったら掴めるのか。宇宙のスケールに比べれば、人間の一生はわずかなもの。周りをみれば、人生の先がみえてしまう。同じことをしてもしょうがないですからね。
 ビジネスにたどり着いたのは大学3年生のときです。当時の製造業は強い競争力で海外に製品を輸出したのに、ソフトウエアの世界にはそれがない。海外製品を熟知して日本に紹介するエンジニアは多いのに、自分でソフトをつくって海外に売るのは少ない。そこで、興味のあったソフトの世界で製品をつくって海外に売れば、雇用などビジネスを通じた社会貢献ができると思ったわけです。

―シノックスを離れ、しばらくはシリコンバレーに?

 いろいろあって日本を離れ、シリコンバレーで会社をつくろうとしたんですが、壁が厚かった。しかし、アメリカで学んだことは多い。何を学んだかというと、さまざまな人間がいる、ということです。日本と違ってアメリカでは個人の能力差が大きい。コミュニケーションの取り方も、仕事の仕方も日本とは違う。シノックスの時代と異なり、共通認識のない人と仕事のやり取りをするという経験は初めてでした。他の会社の資産をうまく使い、こちらはノウハウを出すということもやる。日本では社員の仕事に口を挟み過ぎましたが、社員が動きやすいようにスケジュールと数値で管理すればいい、ということも知って、私もだいぶ柔軟になったと思います。

−帰国してアルテマ(株)を立ち上げましたね。

 6月10日に法人化しました。アメリカでの経験から、仲間をみつけて一緒にやっていくことがまず大切だと思い、今は「手弁当で働け、かつ優秀」な人間を集めています。ベンチャーの世界はロジカルなだけではない。資金調達ができても、きわめて高い割合のリターンには耐えられない。むしろ、仲間をどのように組織していくか、という方がベンチャーとしては可能性が大きいんです。
 大切なのは「頑張り続けられること」。ただし、バランスも大切。アナログ的に頑張れかつロジカルでないとやっていけません。最低限の活動資金、最低限のメンバー、最低限の顧客、という3つをフィックスできるかどうかが重要であり、しかも走り続けながら実行するということです。もっとも、簡単に集められたら苦労ないですよね。ようやく有能なメンバーを集めたと思ったら、奥さんの反対で「辞めます」、なんてことも多いですからね。

−最後に、若いビジネスパーソンにひと言。

 MBAは是非チャレンジすべきですね。でなければ、たくさんの本を買って読む。ここ数年の経済状況は本当に大変ですが、日本がどうなるという前に個人がどうするかを考えた方がいい。グロービスの本を読んでも分からないことは多いから、ビジネスの疑似体験をすべきだと私は思います。そうすれば、ベンチャーはビジョンの上にできている、というのが分からないほど矛盾の塊であることが実感できます。MBAが夜間なら、夜間だけでもできるビジネスを立ち上げたらどうですか?

(インタビュアー:大仁田香織・山田浩之/まとめ:廣江彰)

 

篠田 亘司(しのだ・こうじ)
 1994年大学3年時に、E-MailマーケティングソフトウエアとSIの会社であるシノックス(現エイケア・システムズ)を創業。2000年12月にCEOを退任、会長へ。2001年に渡米Altema Consulting, Inc.をカリフォニア州マウンテンビュー(シリコンバレー)に設立。2002年「モバイル、ブロードバンドコンテンツ向けのソフトウエア、サービス、コンサルティング」事業を行うアルテマ 株式会社を設立。

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