新たな社会の「形」を見据え
21世紀社会デザイン研究科では、様々な分野で活躍する有識者を招き、
新たな社会の「形」を見据えた公開講演会を開催。多くの方が来場してい
ます。今回はその中から4つについてご紹介します。
問われる医療の質と病院経営
〜地域医療の現状と課題〜
医師不足が叫ばれる昨今、最もその打撃を受けているのが地域医療です。崩壊すれば被害はかなりのものになる、そう
いった共通認識は持ちながらも、実際のところ、その再生への道は険しいと言えます。そこで、地域医療の危機にどう立
ち向かうか、現場で活躍する講師の方々を招いての講演会が「地域医療の再生〜地域医療の現状と課題〜」と題して行わ
れました。
医師であり医療経済学者でもある多摩大学医療リスクマネジメントセンター教授の真野俊樹氏、医療の質、及び病院経
営のモデルケースとされている松本市の地域中核病院相沢病院の院長である相沢孝夫氏、患者中心の医療を掲げ、様々な
試みにチャレンジしている済生会横浜東部病院の副院長・看護部長の熊谷雅美氏より、それぞれから理念や施策、提言等
を講演いただきました。
実際の医療現場の最前線で活躍していらっしゃる方々の言葉は、本やテレビを通してでは決して得ることの出来ない現
実感と切実さを持っており、4時間という長い講演会にも関わらず聴講者はその話に聞き入っていました。質疑応答でも
たくさんの手が上がり、最後まで活発な議論が飛び交う講演会となりました。
(2008年1月26日)
変革を迫られる文化外交
〜文化の社会デザインとは〜
グローバリゼーションが進む現代では、文化の置かれる状況も大きく変容しています。国際的な連携が必要なNPOも
その変化への対応を迫られており、それに伴ってNPO研究も大きな曲がり角に来ています。そのような背景を受け、「グ
ローバリゼーションの中での文化の社会デザイン〜NPO研究から言政学へ〜」と題した公開講演会が開催されました。
特別講演に文化庁長官の青木保氏、基調講演にUCLA、ハイデルベルク大学の教授を務められ、国際研究プロジェク
ト「カルチャーズとグローバリゼーション」をスタートさせたヘルムート・アンハイヤー氏、パネリストにはメディア教
育開発センター教授の小林登志生氏、本研究科教授の北山晴一氏、コーディネーターには国立民族学博物館教授の出口正
之氏を迎え、活発な議論が行われました。
青木氏からは、ソフトパワーを使った文化外交の有効性が示され、またアンハイヤー氏も「文化は紛争の理由や増幅に
使われることが多いが、文化のプラスの部分を忘れてはいけない。文化を使って紛争を解決する方法もあるのではないか」
と述べられました。パネリストの方々もそれぞれの見地から鋭い意見を述べられ、文化の持つ可能性を再認識する講演会
となりました。
(2008年3月17日)
社会企業家の眼差しと価値観
〜自ら問いを立て、答えを探し、行動する人びと〜
福祉や教育、若者の自立支援、貧困対策など、様々な分野で社会企業家の活躍が注目される中、本研究科では、新進気
鋭の若手社会企業家らを招いての「社会企業家がめざす世界の可能性〜自ら問いを立て、答えを探し、行動する人びと〜」
を開催、自分たちの問題意識や行動理念などについて熱く語り合いました。
パネリストには、様々な生き辛さを抱え、ニートなどの状態に陥っている若者の自立支援を行っている「Y―MAC(ワ
イマック・若者自立塾よこはまアプレンティスシップセンター)」の岩本真実氏をはじめ、学生時代からカンボジアの児
童買春問題に取り組み、「NPO法人かものはしプロジェクト」を立ち上げた村田早耶香氏、「NPO法人ETIC(エティック)」
で若手のベンチャーやNPOの支援を行っている佐々木健介氏、また、こういった若手企業家を企業の立場から側面支援
している、NECのCSR推進本部で推進室長を務めてきた鈴木均氏、そして研究者の立場から本研究科の中村陽一教授が参
加。コーディネーターは本研究科の石川治江・客員教授が務めました。
まず各パネリストが自分たちの活動や突き動かしている原動力などについて披露。村田氏は大学2年の時にカンボジア
を訪問し、「それまでは良い職業に就いて、お金をたくさん稼ぐことが大事だと思っていたが、彼らの姿を見て、自分の
『幸せの定義』が変わった。親の借金のかたに取られるなどして売られてしまう彼らを、どうにかして救いたいと思った」
と話し、鈴木氏は「現代の企業には『様々なステークホルダーと連携して、社会の課題解決に貢献する』というのが世界的
な潮流として求められている」と説明しました。
また、社会企業家として大事にすべき姿勢として、佐々木氏は「『世の中を良くしていく当事者になる』という価値観を
仲間と共有すること」と指摘。岩本氏は「マイノリティの視点を、社会を変えていくプラスの力に転じさせること」と語
り、中村教授は「企業家はバランスとタイミングの両方が大事で、バランスばかりだと『現状維持』にしかならない。逆
にタイミングで動くとバランスを失い、時にリスクも背負うが、この感覚が何よりも大事で、ここから『人が真似したく
なる』ようなスタイルやモードが生み出されてくる」と解説しました。
そして石川教授は「『いい仲間』というのは、ポーンとは現れない。つながりや絆をどう作っていくかは、『同じ視座』を
持って集まることで、その視座に『目標』を定め、ここを出発点にして進んでいくことだ」との解説を加えていました。
(2008年5月10日)
公益法人改革と民が担う公共とは
〜民間非営利組織のこれまで・これから〜
2006年6月、「公益法人制度改革関連3法」が公布され、民法34条に基づく公益法人に関する規定が110年ぶりに改正、
2008年12月1日に施行されます。10年前のこの日が、特定非営利活動促進法(NPO法)の施行日でした。21世紀社会に
おいて、新たな公共の担い手として期待される民間非営利組織の一つの節目であり転換期となる今年、非営利組織のある
べき姿と方向性について考えていくきっかけとして本講演会が開催されました。
第1部では、“正念場を迎えた日本の民間非営利セクター”というテーマで、公益法人協会に長年関わられ、今回の公益
法人制度改革で「公益認定等委員会」委員を務められる立場から、明治学院大学大学院法務職研究科の雨宮孝子教授より、
今年スタートする新公益法人制度について解説いただきました。続いて、今年10周年を迎えるNPO法成立に深く関わら
れた「シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」事務局長の松原明氏が、NPO法の成立の経緯や内容について解説、
制度=道具の役割、意味とは何なのか、民間非営利法人の役割とは何なのかを見つめ直した上で、今後のNPOの方向性
を考えていくことが大事であると述べられました。
第2部では“「民」の担う公共とは?市民社会のこれから”というテーマに対してパネルディスカッションが行われ、まず
日本NPOセンター副代表理事・法政大学現代福祉学部教授の山岡義典氏が、「2法人制度並存で日本の民間非営利セク
ターはどう変わるか」ということを主題に、新一般法人・公益法人とNPO法人・認定NPO法人の比較を行い、今後の
非営利セクターにおいて両法人が住み分けか共存かという点に注目していると述べられました。
続いて、朝日新聞東京本社編集委員の辻陽明氏が、「公共領域と非営利組織」という主題で、90年代に行政・企業によっ
て成り立つ社会に限界を感じて非営利セクターの取材を始められたことをふまえ、NPOには新たな課題に対して素早く
取り組める強みがあり、公共領域の一端を担う立場として重要性があると述べられました。一方、課題も多く、今後は世
論に非営利セクターの重要性を投げかけるためにメディアの役割が大事だとも述べていました。
中村陽一本研究科教授は、さいたまNPOセンターの代表理事の立場から、NPOの現状と課題について発言されました。
その中で今回の公益法人制度改革に対してNPO側として強い危機感を持っており、今後は中間支援組織としての存在感
を出していくことが大事だという認識だと述べられました。
最後に第1部の講師のお二人および本講演会のコーディネーターである本研究科の渡辺元教授も交えて討論会が行わ
れました。本テーマを語れる現段階でのベストメンバーの方々が一堂に会した講演会は、予定の3時間を過ぎても熱い
議論が続きました。
(2008年6月21日)
◆◆◆トピックス◆◆◆
研究成果を実践に 〜院生の講演活動〜
21世紀社会デザイン研究科の研究テーマの一つがコミュニティデザイン研究です。今回は院生が
研究の成果を地域で実践する機会がありましたのでご紹介します。
3月8日には、立教大学と地元池袋の協働のもと「池袋のまちづくりに関する公開講演会」が開
催されました。当日の発表の中では、本研究科のコミュニティソリューション論の授業で研究をし
た池袋のまちづくりに関する成果を、博士前期課程の子籠敏人さんが「池袋スタイル推進協議会の
設立」としてまとめ、発表されました。また5月13日には、市民参加による自治体計画策定に長い
歴史を持つ三鷹市の市民大学、三鷹ネットワーク大学において「三鷹市の市民参加を評価する」と
題して、博士前期課程の子籠敏人さんと、博士後期課程の平田賢典が講演を行いました。二つの講
演はいずれも好評で市民の参加者のみなさんから活発な意見交換をいただくことができました。
この他にも21世紀社会デザイン研究科では、さまざまな形で研究成果を実践活動に活かす取り組
みをしている方々がたくさんいらっしゃいます。
みなさんもぜひ、地域での実践に挑戦されてはいかがですか。
(博士後期課程2年 平田賢典)
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