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自立支援を目的に世界中の紛争地、被災地で活動するNGO JEN。「自立を支援する」とはどういうことなのかを理
事・事務局長の木山啓子さんにうかがいました。そのお話には、国際協力の基本的な姿勢、被災時にコミュニティの
あり方が重要な鍵を握ることなどが示唆されており、21世紀社会を生きる私たちへのヒントにあふれています。
| 木山啓子さん:特定非営利活動法人JEN(ジェン)理事・事務局長 |
まず、JENの設立経緯、活動の内容や
目的を教えてください
木山啓子さん

設立当時から参加し、2000年からは事務局長を務めている。
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1994年、紛争中だった旧ユーゴスラビアへの支援を目
的に、6つのNGOが連合して活動を行ったのがJENの
始まりです。その後も、紛争や災害の起きた地域での自
立支援を行ってきました。
紛争や災害の傷跡は長く残ります。私たちも被災地へ
の緊急支援から始まり、人々が自立できるまで長期にわ
たって支援しているものが多くあります。支援にあたっ
ては、紛争や災害の性格とそれが起こった地域の特徴を
考慮して、必要とされる「道具」を提供します。これは、
物資の配布、井戸堀り、学校の再建といったすべての活
動を、その地域の人々が主体的に考え、行動するための
「道具」として提供することに徹するという意味です。
自立を支えるための活動とはどのような
ものなのでしょうか?
JENが目指しているのは、世界中の一人ひとりが幸せ
に暮らせるようになること。自立を支えることでそれを
実現しようとしているのです。
パキスタンでの活動を例にお話ししましょう。2005年に
カシミール地方で地震があったので、緊急から復興に至る
支援をしました。
支援は誰もが行きやすい地域に集中しがちなので、JEN
はバーグ県という被害が大きく、アクセスの悪い地域を選
んで復興に至る緊急支援をすることにしました。
たとえば、400世帯住んでいる村でテントを200張配布
する場合、全世帯には行き渡らないので、あえて村人を
集め、最も必要とする200世帯を選んでもらいます。そう
なると村人たちは話し合いますよね。その過程で、リー
ダーがリーダーシップを発揮したり、リーダー不在であ
れば、話し合いを通して適任者が現れるようなことが起
こります。テントを受け取ることをきっかけに、現地の
人々が自ら考え、公平な目で受け取る人を選び出す機会
をつくることで、再びコミュニティが機能しはじめます。
こうして人々の自立へとつながっていくよう働きかける
のがJENの支援です。この場合、「テントを配布するプ
ロジェクト」が「道具」なのです。
パキスタン・バーグ県にて。テントの配布先を話し合っている人々の様子
(写真提供・JEN) |
同じパキスタンの例ですが、現地の子どもたちは、自
分がいい子にしていなかったから神様が怒って災害を起
こしたのだと落ち込んでいました。そこで、地震のメカ
ニズムや防災に関する教育と心のケアを行い、災害は罰
ではないということを理解してもらうことにしました。
その際、私たちが子どもたちに直接話すのではなく、
現地の先生方に教え方を身につけてもらい、先生から子
どもたちに伝えてもらうよう働きかけました。また、先
生方が互いにトレーニングするようなプログラムも考え
てもらいました。大人から子どもに伝え、同時に、大人
同士でも理解を深め工夫してもらうようにしたのです。
JENの方針に、「最小限の費用で」というのがありま
す。現地の人たちの自立のためには1円も無駄にしない
のは当然ですが、一石二鳥ではなく、一石五鳥を目指し
て効率を高めるよういつも工夫しています。
支援を終える時というのは、どのように
決まるのでしょうか?
現地での活動を始める前には、支援の内容や期間の目
安を決めるので、その条件が満たされれば事業を終えて
引き上げます。たいていはスケジュール通りにいかない
ので、現地のペースに合わせて本当に自立できそうであ
ることを確かめるまで支援を続けることが多いです。
撤退が決まると、もっといてほしいと言われることが
しばしばです。冷たいと言われても、心を鬼にして去る
ことで、依存を招かないことが大切です。「あなた方が
去った時は冷たいと思ったけど、その後、自分たちで頑
張った結果、今はこれほどうまくいっています」という
誇りに満ちた便りをいただくことがあります。自立を支
えるというのは日々楽しいわけではありませんが、辛さ
が喜びに変わる瞬間です。
日本では新潟で活動されていますが、 どの
ような支援をしているのでしょうか?
新潟は2004年に新潟中越大地震が起きたことでかかわ
るようになりました。日本には人も物も十分にあるので、
当初は支援を考えていなかったのですが、問い合わせて
みるとJENが培ってきた調整の能力が役立ちそうとわ
かったので支援することを決めました。
私たちが入った中山間地は、もともとの過疎に加え、
地震後にも人々が離れ、集落はまさに存続の危機に瀕し
ていました。高齢の方が多いこともあり、いずれ集落が
なくなってしまうことを避けられない事実として受け入
れているようでした。日本は恵まれているようですが、
持続可能な自立という点で考えると、支援が必要な地域
があるのです。新潟での活動は今も続いていて、全国か
らのボランティアや様々な団体・機関と連携することで、
村おこしのモデルの一つになりつつあります。
被災地で活動をしていると、もともとのコミュニティ
の結びつきが、いかに被害を小さくするかということを
実感します。自立した一人ひとりが利益目的でなく結び
ついているコミュニティは、災害の際にも大きな力を発
揮します。コミュニティができているということそのも
のが、何よりの防災活動といえるかもしれません。
最後に、国際協力や災害支援に関心をもつ
方々に向けてメッセージをお願いします
皆さんには、今日からできる国際協力として次のどれ
か一つでいいので、実践していただければと思います。
@知る、A行動する、B続ける、C忘れない、D伝える、
の5つです。
旧ユーゴの難民キャンプに行った時、コンテナを改造
した部屋に招かれ、砂糖がたっぷり入ったコーヒーを出
していただきました。貴重なものだから申し訳ないと丁
重に辞退したら、「あなたが飲んでくれるととてもうれし
い。配給を待つばかりのキャンプで誰かに何かをしてあ
げられることが喜びなんです」と言われました。
現場で、極限的に厳しい状況にある人々にたくさん出
会い、人は自分のためには頑張れないけれど他者のため
には頑張れるということに気づきました。絶望のなかに
ある彼らに、世界には希望がもてるということを教えて
もらったのです。人の役に立ってうれしいという気持ち
は人間のDNAに組み込まれているのだと今は確信して
います。一人ひとりのなかにある、誰かの役に立ちたいと
いう気持ちに従うことが国際協力の始まりだと思います。
特定非営利活動法人JEN(ジェン)
1994年、旧ユーゴスラビア地域での緊急支援のため、日本初
の連合NGO「日本緊急救援NGOグループ(Japan Emergen
cy NGOs)」が設立されたことに端を発する。以来、「心の
ケアと自立の支援」をモットーに、世界各地で戦争・紛争や
自然災害に遭った人々を支援している。2000年にはNPO法人
格を取得し、現在の団体名に改称。2005年、認定特定非営利
活動法人(認定NPO)の認定を取得。事業の運営にあたって
は、現地のニーズを見極め、現地の人々とともに、とり残さ
れがちな人や地域を中心に、自立とその存続を、最小限の費
用で達成することを方針としている。
http://www.jen-npo.org/
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