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Vol.14 [2010-01-15発行]  PDF版

●[Interview]北山晴一教授〜
「21世紀社会デザイン研究科」を語る〜

●退官教授の言葉/マーク・カプリオ・ゼミ報告
●キャンパスの声
●修了生紹介
●コミュニティ政策研究会/危機管理研究会活動紹介
●21世紀社会デザイン研究学会報告
●21世紀社会デザイン研究科 公開講演会レポート
●AICC国際会議レポート

Vol.13 [2009-07-15発行]  PDF版
Vol.12 [2009-01-15発行]  PDF版
Vol.11 [2008-07-25発行]  PDF版
Vol.10 [2008-03-31発行]  PDF版
Vol.9 [2007-07-12発行]  PDF版
Vol.8 [2007-04-11発行]  PDF版
Vol.7 [2006-11-15発行]  PDF版
Vol.6 [2006-03-15発行]  PDF版
Vol.5 [2005-08-31発行]  PDF版
Vol.4 [2004-12-20発行]  PDF版
Vol.3 [2004-07-31発行]  PDF版
Vol.2 [2004-01-31発行]  PDF版
Vol.1 [2002-09-20発行]  PDF版

『Social Designer』Vol.1は、PDFファイルでご覧ください

 本学研究科委員長である北山晴一教授が2010年3月で定年を迎えることになりました。そこで今回の巻頭インタ ビューは設立の経緯から理念、今後の研究科への期待、個人的な社会デザイン哲学まで大いに語っていただきました。

北山晴一教授:21世紀社会デザイン研究科委員長

“21世紀社会デザイン”などという大胆な名前を付けた 研究科は日本全体を見回してもないはず


北山晴一教授
   北山晴一教授
 立教大学大学院の社会人対応は他大学と比べて著しく遅 れていました。そのことを当時の大橋総長に進言したとこ ろ、プロジェクト・チームが組まれ、そこに参加すること になりました。1999年のことです。形態は当時まだ珍しかっ た学部を持たない「独立研究科」。名称は「21世紀社会デザ イン研究科」もしくは「社会デザイン研究科」で、内容も 立教らしいミッション性をもつものに、というアイデアを 打ち出しました。その後、議論を進めていく中で「ビジネ スデザイン研究科」、「異文化コミュニケーション研究科」 の構想も加わり、2002年4月に3研究科が同時にスタート しました。我々の研究科は、パンフレット等で「サードセ クター(非営利・公共分野)を主対象とする新タイプのビ ジネススクール」を提唱していますが、しかし、いわゆる クラシックタイプのビジネススクールではないもの、つま り人文学、社会学、経済、経営までを含めた複合的な視点 から世の中の枠組みを考え、社会をデザインできるような 人間を養成したいという願いがありました。
 研究科のいちばんのポイントは“ネットワーク”でしょ う。同じパンフレットで「21世紀社会デザイン研究科はあ なたや私が、彼ら彼女らとネットワークをつなぎ合わせ、 市民ひとりひとりの知恵と知識と見識をもちよって、21世 紀の社会をデザインするために切磋琢磨する協働の場として活動し ています」とネットワーク型社会組織の重要性を唱っています。 “ネットワーク型社会”とは、19〜20世紀の近代社会を支えてき た縦型の権力構造を持つ組織とは対極にある、横型のもの。たとえ一 人一人の持つリソースは知識、知恵、経験の点で限られているかもしれないが、それを横 につないでいくことで実は大きな力を生み出すことができ る、そういう期待感に支えられたものです。
 70〜80年代は右肩上がりの成長路線に対する期待、夢な どが社会全体の生きがいとなっていました。しかし1995年 の阪神淡路大震災やオウムの事件、それに続くバブル崩壊 などで、もう今までのやり方ではだめなんだという実感を みなが共有するようになってきた。不安トレンドが社会の メインストリームになってしまったわけです。そこではこ れまでの社会規範や行動規範は通用しないし、当然ながら 到達点は見えない。でもヒントはあるのではないか、社会 デザインというのは、そのヒントに気づくところから始ま るんです。ヒントとは、海に突き出た氷山の一角のような もの。海の下は見えないが、そこには何かがある、そうい う感覚はみなが共有している。その共有感覚に励まされな がら新しい社会をどのように作っていけばよいのかを考え よう。そのプロセス、営みが社会デザインということであ り、そのことを理念の核として、この研究科を作ってきま した。


 なぜ入学式はチャペルでやるのか?
それには”社会組織理論”的必然性がある

 具体的なカリキュラムに関してですが研究科ホームペー ジで「非営利組織の経営と現代社会の危機管理を学ぶMB A/DBAコース」という表現をしています。従来、社会 運営の主要なアクターは政府と営利組織でしたが、しかし、 文明論的危機にある21世紀においては、NPO、NGO、 ヴォランティア活動などのサードセクターとの連携なしに 新しい社会を作っていくことはできないと思います。日本 でも最近、「非営利」を教える大学院がいくつかできてきま したが、しかし、いずれもスキル的な分野に特化して教え ているにすぎません。現代社会の「危機管理」の重要性を 認識しているとも思えません。「社会デザイン」の構想を 練っていた2000年頃は、学内的には全く理解されませんで したし、社会的にもCSRという言葉が本格的に使われた のは2002年ですし、Social Businessなどという言葉も一 般の耳目には珍しかった。我々は流行りの言葉で人を釣る ようなことはしなかったけれども、「社会デザイン」という 言葉の意味するところと確実に重なっていたんです。
 研究科は、ビジネススクールの枠組みを持っていますが、 他方で臨床自然論や人間論、ライフサイクル論、身体論ワー クショップ等の科目に見られるように、社会や組織の具体 的な運営論や経営論と同じくらい、社会を構成するわれわ れ一人ひとりの生身の生き方に関する授業も重視していま す。わたし自身、「アイデンティティ論」や「親密社会論」 などといった科目を担当してきましたが、その場合でも、 つねに個人レベルの不安や悩みが社会全体の仕組みとどう かかわってくるか、そのいずれの項も軽く見ない、という スタンスでシラバスを考えてきました。
 「コミュニティデザイン学」「危機管理学」に加えて、研 究科の重要な柱として「社会組織理論」分野がありますが、 我々の研究科で研究するのは、社会組織あるいは社会のデ ザインであって、社会の「システム」ではない、という点 が重要です。私には「組織はどこかにバグがあるほうがい い。きちっと制御されシステム化された組織は死んだ組織 だ」というフィロソフィーがあります。つるつるに磨かれ た球体ではなくデコボコがある組織、デコボコがあること で立ち止まり、寄り道していろいろ考えていくことが重要 ではないか。だからそれを潰そう、システム化しようとい う動きには徹底的に抵抗してきたし、今もそう思っていま す。でもこれは会社、大学ではなかなか理解されない考え かも知れません。たとえばなぜ入学式を大きく効率的な芸 術劇場ではなくタッカーホールやチャペルでやるのか。授 業が9時40分までなのになぜ正門は9時に閉まるのか。ど うでもいいことのように感じるかもしれませんが、私の組 織論とは真っ向から対立するんです。こんなことをひとつ ひとつ大学側と議論しながら説得していくのは本当に大変 です。思えば、「独立研究科」という形態自体が、反システ ム的なのかも知れませんね。


 ファッション、食文化の研究とも
大きな社会デザインにつながっていく

 最後に個人的なことを少し振り返ると、私は1944生まれ で学園闘争の真っ最中に大学院にいました。この時に学部 生ではなく院生だったのが自分の人生の大きな分かれ目 だったと思います。生意気だったと思われるかもしれませ んが、〈知に携わる〉という職業意識を持って世の中を見て いた。そして、おいおい分かってきたのは、「社会を取り換 えること・・・つまり革命ですね・・・はできない」、しか し、「社会を変えることはできる」ということ。連合赤軍と 浅間山荘事件は、大きな意味をもったと思います。私は、 1972年にフランスに行ってそのまま15年過ごすことに なってしまいましたが、私が院生だった頃に学部生だった 年下の世代は企業戦士になり、おかげでその後日本は経済 大国になり、社会は豊かになった。ところがその豊かな社 会システムは90年代後半には壊れてしまった。ヨーロッパ を中心とする他の国々では学園紛争当時の異議申し立てを 社会の仕組みの中に組み込んでいったのですが、日本の場 合は自分の幸せ追求だけを第一義に考えて、社会全体の仕 組みを考えることをなくしてしまった。こうした“快楽の 個人主義”が、日本を「幸せになれない社会」にしてしまっ たのではないか。私がずっと追究してきた研究テーマは、 消費社会と人間の欲望にかかわるものです。とりわけ、人 間の生理的なレベルの問題と社会の仕組みがどういう風に 絡み合っているか、つまり個人の身体性と社会との間のイ ンターフェースが主な対象です。これまで、流通の話や、 ファッションや食文化、あるいは文化産業などについて本 も書いてきましたが、それは表面的なトピックス。これら も実は社会デザインを考えるにあたっての入口だったと思 います。


※文学研究科比較文明学専攻と21世紀社会デザイン研究 科のゼミ生が中心になって企画する北山晴一教授の 最終講義が3月20日に行われる予定です。
北山晴一教授 ●立教大学文学部文学科教授、同大学院文学研究科比較文明学専 攻教授。東京大学文学部フランス文学科卒業後、同大学院文学研 究科修士課程修了、同博士課程満期退学。クレルモンフェラン大 学、パリ第3大学留学後、パリ第3大学専任講師、立教大学文学部 助教授を経て、現職。他に、立教大学ジェンダーフォーラム所長、 山口大学時間研究所客員研究員、放送大学客員教授をつとめた。
●『おしゃれの社会史』(1991 朝日新聞社)、『美食の社会史』 (1991 朝日新聞社)、『現代モード論』(2000 放送大学教材)、『明日の家族− 自立と協調の実現』(1995 中央法規出版)、『衣服は肉体になにを与えたか』(1999  朝日新聞社)、『日本におけるカルチャーマネジメントの現状と展望に関する研 究』(2002 科研費報告書)、『世界の食文化』(2008 農文協)等、著書論文多数。