●[Interview]土井香苗さん
「世界で起こる人権侵害に、私達ができること」
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●活躍してます!修了生
●ゼミ紹介
●21世紀社会デザイン研究科 公開講演会
『Social Designer』Vol.1は、PDFファイルでご覧ください
遠い外国の人権侵害問題は、ヒトゴトなのでしょうか? 国際人権NGO・ヒューマン・ライツ・ウォッチの東京支社代表・ 土井香苗さんに、その活動内容や難しさ、そして私達が人権問題に対して何が出来るのか、お話を伺いました。
まず、ヒューマン・ライツ・ウォッチという団体の活動を教えてください

土井香苗(どいかなえ)さん●1975年神奈川県生まれ。 1996年司法試験合格後、1998年東京大学法学部卒。2000年から弁護士業務の傍ら日本にいる難民の法的支援な どにかかわる。2009年4月、ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京オフィスを設立
私達の団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下HRW)は、主に世界中で起きている人権侵害を解決する為のアドボカシー(政策提言)活動をしているNGOです。
アドボカシーというのは、日本ではまだ、あまり知られていませんが、強い権力を傘に弱い立場の者から略奪
している人に対する国際的なプレッシャーを生み出すことが目的であり、私達が直接現地に赴いて人権状況を調査した上で世界各国の政府を動かしてそうした行為を止めてもらう為には、原理原則を守ったメッセージを押し出す必要があるのです。
HRWの起源は、ランダムハウスの社長が始めた活動にあります。1970年代後半“ヘルシンキ・ウォッチ”という名前で、旧ソ連圏の各国において、自由を求めて闘うライター達の活動をサポートしたことが出発点です。その後、1980年代に入り南米で政府・反政府軍間での内戦が起こるようになると“アメリカ・ウォッチ”として新たな活動を展開するようになりました。ここでは紛争当事者の双方について徹底的な調査を実施し軍事・政治的な面で援助を行うアメリカの行動に対しても批判的な検証を行ったことで、その活動に高い信頼を獲得しました。 こうした緻密な情報収集・処理に基づく活動は、1988年に“ヒューマン・ライツ・ウォッチ”として全世界を活動領域として展開するようになってから現在に至るまで当団体の最大の特徴であり強みです。

2009年4月「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」東京オフィス開設記念記者会見
実は私自自身もHRWという名前は知っていたものの、アドボカシー活動を行うNGOというより、むしろ調査研 究機関として認識をしていました。当時私は弁護士として難民の弁護を行っており、裁判所へ提出する為の資料を探していると、HRWの名前を目にする機会が多かったのですが、それだけHRWが作成している調査資料はクオリティが高く、評価されていたということでしょう。
弁護士という法律の専門家としての立場がHRWの活動に役立つことはありますか
難民弁護というのは、一般的に考えられる「正義」が必ずしも勝つ世界ではないので私自身、苦しくなることもありますし、難民認定されず、不法滞在者としてやむなく故国へ強制送還される人に対しては、日本を代表して「ごめんなさい」と言いたくなります。しかし、そこはある程度の距離感を持たなくてはさらに辛くなるので、「現在の日本の法律ではこうならざるを得なかった。悪いのは私ではなく制度」と割り切ることも必要になってきます。
また、虐殺などが行われる現場というのは壮絶で、そ こでは加害者と被害者の持つ力が圧倒的にアンバランス です。そうした状況における人権侵害を止めるためには、 力の無い人々が権力を振るう者と対等に戦う為の武器が 必要となり、その武器こそが法律であり、法律に定めら れた「人権」なのだと私は考えます。そうしてみると、 最初から意識して弁護士を目指していた訳ではないので すが、法律家という立場から人権侵害問題に立ち向かう ことが出来るのは、非常に良かったと思います。
グローバル化の時代になり人権侵害を取り巻く状況に 何か変化がありましたか
この地球上に人権侵害が存在するということでは、グ ローバル化の前も後も変わりません。そもそも人権侵害 というのは、権力を有する者がその力を自身の欲のため に乱用するということです。欲というのは人間の本質で あり決して切り離すことは出来ないものですから、その 欲によって引き起こされる人権侵害は、たとえ減らすこ とは出来たとしても、なくすことは出来ないと、残念な がら思います。
ブログなど新たに誕生したウェブ上のツールは手軽に 書き込みができて影響力が大きいだけに、それらに対する取り締まりも一層厳しくなってきています。ここでは 権利を主張する側と弾圧する側とのイタチごっこが繰り 広げられているのですが、昨年来のイランでの弾圧が良 い例でネットがあるからこそ世間に明るみになった人権 侵害もあり、インターネットの良い面も重要です。 また、これからの日本はソフト・パワーで、急成長で 迫りくる中国との差異化を図らなくてはなりません。そ うした点から言えば、若者には積極的に海外へ出て行き、 良いところは吸収し、新たなアイディアを生み出して 行って欲しいですね。今の日本はアジアの中でも勢いに 欠けていますが、それでも人権分野においては強力なア ピールが出来る希少な国です。
確かに日本は、特に人権侵害をしているイメージはな いものの、同時に人権保護に秀でていると評価されてい る国でもありません。しかしながらポテンシャルは十分 にあると思います。何を世界に誇れる国になるのか、ア ジアの中で如何にしてリーダーシップを発揮していくか、 外交の中で人権問題をもっとアピールしていくことに、 これからの日本の可能性があると私は信じます。
私たちが日常生活の中で、できるようなことは あるのでしょうか
私達は現在、メディアの発達により世界中で起きてい る人権侵害の事実を簡単に知ることができますが「知 る」の次の段階―「自分個人として、人権侵害を無くす ためには何をしたらよいのか」というところで立ち止 まってしまうかもしれません。しかし、何も大げさに考 える必要はありません。例えばブログやツイッターを通 じて自分の見た映画や読んだ本の感想を述べてみるとい うことでも十分です。国民一人一人がメディア化した現 代社会においては、自分が持っている情報発信手法の中 で、見たことを伝える・知っている事実を伝える・情報 が載っているウェブサイトを教える、ということが可能 なのです。 小さいようですが、こうした一歩一歩がいくつも重な りあうことで、最終的には国民の声として、政府に声を 届けることになり、人権侵害を無くす大きな一歩になる かもしれません。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ
1978年、ヘルシンキ協約の人権条項を旧ソ連各国が守っ ているかモニターする為に設立。設立後10年で、モニター 対象を旧ソ連国だけでなく、全世界に拡大。30年以上に わたり、典型的な人権問題のみならず、子供・女性・難 民など、社会の周辺に追いやられた人々の尊厳の実現に も取り組む。また最先端のテクノロジーを駆使し証拠を 発掘しながら国際法に基づいて加害者の責任を追及する。 世界各地に275名強のスタッフを有し、約80カ国の人権状 況について、報告書やブリーフィングペーパーを毎年100本以上発表 http://www.hrw.org/ja/home