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Vol.2 [2004-01-31発行]  PDF版

●書を捨てよ、いざフィールドへ(福原義春 株式会社資生堂名誉会長)
●新任教授紹介
●院生情報 ゼミ紹介(2004年度開講予定)
●院生研究あれやこれや座談会 この研究科に期待すること
●印象に残った授業&出来事
●モントリオールだより 北山晴一教授
●院生グループの活動
●これからの研究科 知の体系化と学会設立
●今後の研究科予定

Vol.1 [2002-09-20発行]  PDF版

『Social Designer』Vol.1は、PDFファイルでご覧ください

1. 内山先生と山里の暮らし

 高校生の国語の教科書や大学試験問題に登場する内山先生の文章は、難しいと感じるテーマについて実にわかりやすい説明をされているのをお読みになった方も多いと思います。特殊研究 臨床自然学と言う名前からは、少し想像を超える授業ですが、21世紀社会デザイン研究科の授業の中でも印象的であり、課題図書としての「時間についての12章」(岩波書店)は、多様な読み方が可能な本であると、とてもおすすめです。
 たとえば、直線的な時間は、使い捨ての有限的な時間認識であり、その中で常に時間や効率におわれている暮らしが存在するのですが、一方で循環する時間は森をはぐくみ、村の暮らしや労働が永続的に続いていく多層的な時間世界を作り出すのです。時間の積み重ねについて巨木のたたずまいから学ぶことができた体験(夏の上野村スタディツアー)はとても貴重であると思います。
 自然がもたらす安らぎや、山里の暮らしに、なぜ魅力を感じ、憧れを抱く人が増えているのかを考えるとき、人間にとって大切なものを失いつつある現代文明に対しての疑問が生まれるのだと思います。
 先生のテーマである労働と人間と自然を巡る哲学の中で、時間についての概念は、現代社会に生きる私たちに、生き方を問うようなインパクトをもたらし、先生がすんでいる群馬県上野村での学びは、山里の豊かさを改めて認識することになりました。

(報告:齋藤啓子)

冬には毎年恒例の餅搗きが内山先生宅で行われます。
21Cの院生達だけではなく、森林フォーラムの方々などさまざまなところから人々が集まって、お餅をつきました。

 

2. 評価インターンプロジェクトに参加して

「コミュニティデザイン学演習」で、前期・後期にわたり「評価」の講義を専攻した私たち4名の学生は、2003年9月、島根県川本町で行政評価インターンを体験しました。日本評価学会と21世紀社会デザイン研究科によるパイロットプロジェクトの一環で、企画立案者は、当研究科の入山映教授と広島大学の長尾眞文教授。
 4名はそれぞれ、総合・福祉・文化・観光という4つの得意分野に分かれて行政評価を担当したのですが、風光明媚な土地にいながら観光どころではなく、調査期間の一週間は、役場の一室で、文字通り朝から晩まで資料に追われる毎日となりました。
 実際に評価作業を始めてみますと、机上の学問と実践とは大違い。何をどう評価すれば良いのか、初歩の初歩から試行錯誤の連続でしたが、講義を担当されていた講師の竹内正興先生、寺田幸弘先生のお力添えもあり、10月には川本町役場において評価報告会を実施、11月の日本評価学会・大分大会では、プロジェクトの成果を発表するにまで至りました。これがきっかけとなって、東京都内の某市役所から学生インターン受け入れの申込みがあった時には、私たちの苦労が報われる思いがしたものです。山盛りの「モズク蟹」に歓待された川本町での交流会など、辛さ半分楽しさ半分の素晴らしい思い出となりました。
「評価」は21世紀社会デザイン研究科ならではの講義です。今後、行政においてはますます評価の重要性が問われてくることでしょう。来年度からは評価研修が単位として認められることになるようです。後輩の方たちがこうした授業を大いに活用し、実践家としての実力をつけ、社会の中で活躍されていくことを心から期待しています。

(報告:森田朋子)

 

3. 石川先生の授業と車椅子体験

 石川先生の授業は創造的でパワフルなエンパワーメントする授業です。石川先生の授業の学生の声を集めると。
■「単に知識を仕入れるだけでなく、自分たちがアクションを起こし、提案し、社会を変えていくということの大切さを学ぶことができました。各授業は、どうしても自分の頭の中で考える段階までしか到達しないのですが、この授業では、『社会のデザイン』という『アウトプット』を試みる貴重な体験ができました」(太田圭子)
■「太っ腹で情熱的な石川先生と、フットワーク軽快な仲間たちと共に自分の手で情熱をカタチにするヒントの宝庫です」(鈴木桂子)
■「車椅子の体験を通して、身体で感じること、違った視点から物事を見る大切さを知りました。また、そこで感じた社会問題の解決法を探りながら、企画を具体化していくプロセスが学べました」(横井秀治)
■「ポジティブに知識と行動、そしてアルコールのバランスを重視する石川さんの授業は、市民活動の『自分が生まれ変わっていく』楽しさを体験できます」(富永さとる)
■「石川ゼミの特徴は『実践』。」(渡辺啓嗣)
■「あたまでっかちになりがちの、私の頭のマッサージをしてくれたのが、このゼミだったのではないかと思います。例えば、車椅子に乗って池袋を感じる。車椅子を押し、乗る人を思いやる。この経験を胸に次の階に昇ります」(佐藤万里江)
■では、最後に先生のコメントをプレゼント。
「身体で知ること。身体で覚えること。身体で感じること。身体でイヤがること。身体で何かを好きになること。身体で将来を見据えること。身体が幸せになること。ああ一杯ある。どうぞ身体を大切に短い人生を過ごしてください。」(石川はるえ)

(報告:小林勢以子)

 

4. 栗原彬先生「共生のネットワーク」

 日本の学問の主流は、脱亜入欧路線のもと「国家の知識人」としての大学人が、富国強兵に役立つ研究と人材育成を行うものでした。水俣病について東京大学が国策企業チッソは関係ないと調査発表したことはその象徴です。グローバリズムと生命政治の吹き荒れるなか、〈外部〉、社会的弱者と自然を犠牲にした経済発展による国家官僚機構のヘゲモニーはゆらぎ、新しい共同性を立ち上げる構えと場が求められています。
 そんな中、日本社会が新しい公共性として選んだ、市民活動のためのNPO制度。しかし、ボランタリズムの原点たる「共感」から義憤や正義感だけは巧妙に排除されつつあります。孤立を恐れ連帯を求めない天皇制文化のもと、強者の無責任を容認する奴隷−主人の馴れ合いでしかない「対立ではない行政との協働」が、最も矛盾をしわ寄せされる被差別者、排除される者−受苦者を置き去りにしようとしています。環境保護も人間への支配管理と同伴する危険性をはらんでいます。かつて労働運動が「八紘一宇のよき社会」の翼賛運動へと回収されたように、NPOもまた国家のヘゲモニー装置に転換しつつあり、日本社会の地殻変動がもたらした市民革命的側面は受動的革命へと転化しようとしています。
 生活知と専門知の交差から市民的専門知を編み出すという我が研究科創設の理念を実現する出発点を、受苦者の声に応えようとするresponsibilityに求め、経済的私益ではない親密圏から直接に公共性-公共圏-公的決定=市民政治を立ち上げることを構想し、市民自身が市民を差別排除していく構造と共犯的な人権−近代国民・国家を越える新しい人権概念を模索する先生の授業は、人間と人間、人間と自然の共生の原点を忘れた効率優先の経済主義と一線を画する我が研究科の砦であり、市民社会が大学に確保した橋頭堡です。

(報告:富永さとる)