21世紀はNPOの時代といわれていますが、現在のコンサルティングとしての企業再建のお仕事やご自身のNPO、特に環境問題とのつながりが深い関わりから、新たな時代に対しての先生のお考えをお聞かせください。
水野誠一氏…
(株)インスティテュート・オブ・マーケティング・アーキテクチュア代表取締役,NPO法人「日本ケアフィットサービス協会」理事長・他。
慶応義塾大学経済学部卒業。西武百貨店代表取締役社長,慶応義塾大学総合政策学部 教授を経て,1995年参議院選挙に比例代表で当選。現在,海外企業の日本進出や,国内企業の再生に取り組む。Think
the Earthプロジェクトでは単行本『一秒の世 界』、写真集『百年の愚行』の企画発行など環境問題にも積極的に取り組んでいる。立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科講師 |
企業の再建は広い意味で経営に結びついていきます。そのためにマーケティングと密接なつながりを持つわけですが、新たな時代の中でマーケティングの考え方は大きく変化してきているといえます。従来の企業が行うマーケティングの考え方から市場を含む社会全体に向けての責任が問われるソーシャルマーケティングという考え方が求められているのです。つまり、株主だけではない消費者や生活者といった社会全体に対する配慮、社会に受け入れられる役割が企業に求められています。
企業経営の哲学は、社会貢献を目的とし、手段としての収益を考えなければならないのです。このことはNPOとも、大きく関係しています。利益を目的としないNPOであってもNPOの継続、維持には利益を追求しながら最終的に社会貢献につながることを求めなければなりません。こうしてNPOも企業に近づいていくはずだと考えています。私がすすめているThink
the Earthプロジェクトにおいては、事業とNPOの活動、企業とNPOの関係を実験的にとらえNPOと企業双方への新たな指針を示すことを行っています。
企業再建を行う仕事の中にも、社会と企業の関係論は重要なテーマです。たとえば地方文化の担い手をしてきた百貨店を例にあげますと、経済効率や合理性から考えれば残していくことは困難です。しかし人々の暮らしである生活と密接な関係を持つ業界が社会との関係性、暮らしに存在する文化との関係を失ってしまうことは、文化的に貧しい社会につながります。経済的指針だけではない新たな価値軸が必要なのです。
20世紀に行われた、自然を征服し、利益追求を目指した経済活動の矛盾が21世紀、様々な形で出てきています。その解決に向けての大きなテーマがNPOの活動や新たな企業文化の中に存在していると思います。
小さな変化が社会的な大きなうねりへと変わっていくためにはどのようなことが必要なのでしょう?
20世紀の成功体験は21世紀には一端リセットして考えてみることが重要です。時には20世紀の常識を否定してみる「否・常識」が必要なのです。今までの企業人は、会社イコール社会と考え、会社の正義は社会の正義と錯覚していました。最近頻発する企業の不祥事は、こういう錯覚のもとに起きているといえます。社会という広いものさしで考えることが会社の経営に求められることから大きな構造改革に向かうのです。そのために市民の気づきの輪を広げていく活動が大きなパワーを持つといえます。
そしてNPOの役割は、大きなセクターとしての政治、経済、社会の3つの歯車をスムーズに回すための4つ目のセクター、知恵の歯車であることです。お互いの関係をスムーズにするためのはずみ車として様々な場面において活動が期待できますし、社会貢献をするためには、政治や経済の力を借りながら進める姿勢が、大切だと思います。
そのために必要なのは視野を広げて考えることであり、政治のセクターや経済のセクターを見ていくことです。もう一つ重要なことはエコノミーとエコロジーは両立できると考えることです。経済と環境は21世紀社会で深く関わり、環境配慮は大きなビジネスチャンスなのですから、自由な発想で知恵を使うことが経費から投資への発想転換になります。また、知恵とは文明と文化という二つの軸をもって考えることです。織物の縦糸と横糸にたとえるなら、横糸であるその時代に最も光っている技術である文明と、縦糸として歴史的な継続性を持つ文化をあわせることで生まれる、織り上げるという視点がこれからの時代に必要なのです。グローバリゼーションだけでなく、かといって古い文化を残す活動だけではなく、相互に関わることで生まれる織物が新しい時代の中で生まれていくことが求められるのだと思います。
企業だけではなく、NPOも21世紀型の活動を目指して進めなくてはなりません。NPOだけに特化するのではなく、社会人が本業を持ちながらNPOに関わっていこうとしている21世紀社会デザイン研究科のあり方は大変興味深く感じます。
企業人としての先生のNPOに関する授業は、多様な側面からの考え方にヒントを与えていただけると期待しています。さて、後期に向けて先生のお持ちになる講座について、受講生の準備や心構えとして必要なことをお聞かせいただけますでしょうか?
教わるのではなく、一緒に考える意思を持って参加してもらうことが、すでにもつ知識を組み立てることにつながります。知識を与えてもらうのではなく、共に知恵を育てあう授業を進めたいと考えています。“考える”こと、“意見を述べあう”ことを通して共に育つ“共育”をめざしていますので参加される方々の大いなるアピールを楽しみにしています。NPOとして、社会の第4の歯車を担うためにも、大学院での学びを知恵につなげてください。
(聞き手 土田あつ子) |
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