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Vol.9 [2007-07-12発行]  PDF版

●[Interview]ホームレス支援、「ビッグイシュー日本」の挑戦(佐野章二 代表)
●キャンパスの声・在校生紹介
●新任教授
●各ゼミ紹介
●21世紀社会デザイン研究科 公開講演会開催
●CSRインターンシッププログラム
●修了生ら4人、地方統一選で躍進/21世紀社会デザイン研究学会のご案内
●[Schedule]行事予定/編集後記

Vol.8 [2007-04-11発行]  PDF版
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Vol.3 [2004-07-31発行]  PDF版
Vol.2 [2004-01-31発行]  PDF版
Vol.1 [2002-09-20発行]  PDF版

『Social Designer』Vol.1は、PDFファイルでご覧ください

社会的起業「ビッグイシュー日本」・佐野章二代表

佐野章二 代表

 現在、国内に2万人いるとされるホームレス。この深刻な社会問題の解決に、「路上生活者を販売員にする」という奇策で挑む一人の社会的起業家がいる。佐野章二氏。若者をターゲットにした雑誌「ビッグイシュー」(1部200円)を手掛ける有限会社「ビッグイシュー日本」の代表だ。2003年9月の創刊以来、207万冊を売り、2億2千万円もの収入をホームレスに提供してきたビッグイシューの奇策と挑戦について佐野氏に聞いた−−。

「100%無理」からのスタート

Q ビッグイシューの仕組みについて教えて下さい

 ビッグイシューは、ホームレスの人だけが販売員になれるユニークな雑誌です。もともとは1991年にイギリスのロンドンで始まったものなのですが、今や世界28ヵ国に拡大。国内でも11都市で売られています。
 その仕組みは、「初めに1冊200円の雑誌を10冊無料で受け取り、この売り上げ2000円を元手に、以後は定価の45%(90円)で雑誌を仕入れ、その売り上げの55%(110円)が販売員の収入になる」というものです。ビッグイシューの使命はホームレスの人たちの救済(チャリティ)ではなく、彼らの仕事をつくること。雑誌の販売を通じて、仕事への意欲を持ってもらい、ホームレスの自立を支援していくのが最大のミッションです。とは言え、日本で始める際には、周囲から「ホームレスは仕事なんてしない」「100%失敗する」などとよく言われましたね。

誌面は若者がターゲット

Q 誌面のコンセプトは何ですか

雑誌「ビッグイシュー」   ターゲットは35歳以下です。最初、「若者をターゲットにする」と言ったら、よく「正気か?」と言われました。「今の若者は活字を読まない。しかも路上で販売し、おまけにホームレスに売らせるか?そんなのナンセンスだ」と。我々の使命はホームレスが収入を得る機会を提共していくことですから、売れる雑誌を作らねばならない。では「日本で読まれる雑誌は何か」と考えた。その時、ホームレスと若者には「仕事がない」といった共通項があることに気づいたのです。今の日本は「一度社会からはみ出したら、なかなか元に戻れない」という社会構造で、非常に硬直化している。そこで、若者の視点から見た社会問題を切り口に「世代間の不公平などを、若い世代の側から『素直に、ストレートに、そしてラディカルに』取り上げ、社会に広く訴えていく」という「若い世代のオピニオン誌」というコンセプトに辿り着いたのです。

「事業性」にこだわり、有限会社

Q ビッグイシューはNPOではなく有限会社ですね

 そうです。先ほどもお話ししたように、我々はホームレスに収人を得る機会を提供していくのが目的ですから、何よりも「赤字で倒産」したら駄目なんです。売り上げを伸ばすためには、資金や収益も必要で、雑誌としても「出版業として成り立つ」ことが大前提。つまり企業的な事業性が求められ、誌面的には「社会的に必要性がある本」「エキサイティングな誌面づくり」が欠かせない。そこでよりビジネス性の高いカンパニーの道を選んだ訳です。

Q 誌面づくりはどのように進められているのですか

 その号を出す半年前に編集部でテーマを出し合い、3ヵ月ほど寝かせて、発行する2ヵ月前から取材に取り掛かります、そして発行の1ヶ月前になると、ここからは誌面のデザインに費やす。デザインに時間とお金をかけるのは、やはり若者をターゲットにしているからで、若い人たちに手にとってもらうには、何よりもデザインが大事です。

Q 売り上げは順調ですか

   おかげさまで2002年9月の創刊以来、今年の5月末までに約207万冊、金額にして約2億2千万円の収人をホームレスの方々に提供できました。これまでに携わったホームレスの数は644人、出たり入ったりもありますが、これまでに54人の方が自立されました。就業先としては清掃などの仕事が多いですね。ただ、ビッグイシューの現状としては年間1千万円の赤字です。我々としては「あと1万部」増やして部数を4万部体制にすれば、広告なしでも黒字になれると見込んでいるのですが、東京で苦戦しています。

Q なぜ、大都会の東京で苦戦なのですか

 東京には「炊き出し」に代表されるような、ホームレスに対する支援の手厚い活動があります。横浜では日雇い労働者が仕事にもれた際には、パン券なども配ってくれる。それをホームレスも活用するから、「ビッグイシューで儲けよう」とのモチベーションにつながりにくい訳です。一見、東京は大都市で「大阪以上に売れるのでは」と期待されるかもしれませんが、その土地で行政がどのようなホームレス対策を行っているかも重要なポイントなのです。

Q 黒字へあと1万部、どう達成させますか

 やはり東京です。苦戦している東京で何としても売りたい。東京はポテンシャルのある都市で、多少時間はかかると思いますが、絶対に売れ始めると期待しています。言わば、今は持久戦の状態ですね。それと本来なら広告なしでやりたいのですが、CSRや社会貢献を重視している企業にとっては、ビッグイシューは恰好の宣伝媒体で、手応えもある。これからのメイン広告になると思い、取り組んでいこうと考えています。

◆ビッグイシューが考える「自立への3ステップ」

【1】 「脱“路上”」。一口に25冊売れば、2750円の収入が得られ、500円のコンビニ弁当を3回食べても、残金で簡易宿泊所(1泊1000円前後)に泊まれ、路上生活から脱することか可能に。

【2】 「住所を持つ」。これから更に販売部数を10冊伸ばせば、1100円が上乗せでき、貯金が出来る。貯金は1ヶ月で約3万円となり、敷金を貯めて自力でアパートを借りられるようになる。

【3】 「就職活動」。新しい住所を基点に、ハローワークへ通うなど就職活動を行うことか可能に。年配者なら生活保護を受けることもできるようになる。

次なるステージ、基金

Q 今後のビッグイシューの展開もぜひ聞かせて下さい

 はい。今年9月の創刊4周年に合わせて、「ビッグイシュー基金」を立ち上げる予定です。繰り返しになりますが、我々のミッションは「ホームレスが収人を得る機会を提供し、自立を支援していく」ことで、最終的には就職活動へとつなげることです。これまでの活動を通じ、販売員の中ににもずいぶんとこの段階へ進む人が出てきました。ただ、就職活動には販売員一人ひとりに対応した丁寧なサポート体制が必要で、それを支援していく非営利団体として、今度は「ビッグイシュー基金」を立ち上げるのです。  基金活動の骨格は「3つの応援プログラム」から成ります。一つは「生活自立応援プログラム」。これは、仕事や家を失い、身近な絆をも失って「一人ぼっち」になったホームレスの人たちが、人や社会との「つながり」を取り戻していけるよう相談にのるものです。生活や医療、住宅、法律など様々な相談に応じていきます。二つめは「就業応援トレーニングプログラム」です。これは履歴書の書き方からマナー、PCのスキル、そして資格などを身につける支援を展開し、仕事の選択機会を増やすことを目的とします。そして最後が「スポーツ文化活動応援プログラム」。これは家や仕事を得ても、豊かな一常生活を持続するには「生きていることへの喜びや意欲があってこそ」との考えから、ダンスや歌、サッカーなど様々なクラブを作ったり、料理教室などの講習会も開いて、楽しい活動にチャレンジする機会を提供していくものです。

NPOに託す、社会の光明

Q 今、佐野さんのような手法で、次々と非営利団体が立ち上がっています

 例えば、団塊の世代の方々などが非営利団体やNPOを始めるのは素晴らしいことだと思います。日本のNPOには期待できるし、私も「みんなでやれば、解決できない社会の問題なんてない」と思ってやってきました。大切なのは「シンプルに問題を語り、シンプルに始めること」。そうすれば早く問題解決に辿りつくし、みんなで取り組めば一変に社会は変わる。今、日本の社会は「若者のホームレス化」など、格差問題どころではなく、もはや崩壊し非常にピンチなのに、政府や霞ヶ関は「近視眼」。今取り細めば少ないコストで済むのに、それには蓋をして、将来への膨大なコストに目をつぶっている。これは将来への犯罪で、若者はもっと怒っていい。

夢は「早く潰れたい!」

Q 最後に佐野さんの夢を聞かせて下さい

 一日でも早くビッグイシューが潰れる事です、その時はきっとホームレスがいなくなっているでしょうから。