――地域の区切りを越える――
地域の区切りがあっても人びとはいろいろな理由でそれを越えていく。越境で目立つのは、国境を越える難民、移住、出稼ぎ、観光などだ。これらは、別の機会に触れ、今回は他の例を考えたい。




――美のための越境――
美容目的、つまり整形手術を受けるために米国人が南米のコロンビアに出かける例が増えているという(CNN ウェブ版2006年3月26日)。

脂肪吸引をしてスリムになったり、豊胸手術を受けたりするのだ。コロンビアでの手術のほうが米国より安いから、観光もかねて出かける。これは例外的な人のことではなく、年間数万人にのぼるという。


日本から東南アジアのリゾート地に出かけて、エステを楽しむ人びとも多い。タイのバンコクでは日本人にスパやマッサージ師を紹介する日本語パンフや、日本人スタッフが目につく。


国外で美を求める場合、どんな美を目指すのか、執刀者と十分に打ち合わせておく必要があろう。「柳腰で小股が切れ上がった、みどりの黒髪の美人」が良いのか、「ゴージャスでボリュームがあるブロンド美人」が良いのか、誤解がないようにしたい。




戦国時代の人





チマ・チョゴリの人






ブロンドの髪の人

上記3点はすべて素材集より。






――健康のために――
美しくなるために金と時間をつかって努力するのは、結構なことかもしれない。しかし、美は健康や生死という話題にも通じている。より安い医薬品を求めての買い出しの越境(米国→カナダ)がある。健康を求めて、第三世界の金持ちや政治家が欧米で治療を受けることがある。第三世界の庶民も、国の援助で国外での手術に向かうことがある。

たとえばタンザニアでは、国内での心臓、眼や脳の手術は、機材と技術の面でむずかしい。患者をインドや南アフリカに搬送して実施することが多い。インドや南アフリカでの手術は、欧米での手術よりもずっと安い。たとえば、一般的な心臓の弁の手術ではヨーロッパでは3万ドル必要なのに対して、インドでは4,000ドルで済むと言われている。

それでも国の予算でまかなう数は限られている。タンザニアでは年間200名程度の患者を国外で手術しているが、国の援助を待つ人のリストは4,000人にも達する。つまり、20年待ちになっているが、その間に亡くなる患者も多い。



――臓器さえ求めて――
金持ちの国から患者が出かけ、第三世界で臓器移植をする場合もある。腎臓など複数ある臓器は、それを売る人がいる。第三世界からの臓器を取りつぐ組織もあるようだ。実際に臓器を必要とする人がいて、患者が住む国内で十分な臓器移植のチャンスがなければ、臓器を求めて越境する人がでるのは当然のように見える。実際、日本からも年間500名以上が国外に出かけて移植手術を受けている(毎日新聞 2006年4月22日)。



――越境は例外ではない――
美を求めての越境だけであれば、冷やかすこともできる。しかし、これは健康をもとめての施術や臓器移植につながる話題である。美を求めるのは、ごく日常的な事で、毎日気にしている人もいることだろう。同様に体調を崩して生死の局面に向かい合うことも、だれにでも、いつでもおこることだ。居住地と職場の往復で、毎日限られた地域で生活していても、体調を崩した機会には、すぐに世界全体を視野に入れた越境が他人事ではなくなってくる。

粛々と老いていっても、最近は国外で年金生活を送るための越境などもあるようだ。








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越境は他人事ではない