16世紀の大航海時代の話の中で、コロンブスの卵に関する話題が出た。

復習しておくと以下のとおりだと言われている。


「アメリカ大陸近くまで行って(実際はバハマ諸島に到着した。またインド周辺であると思っていた)、スペインに戻ったコロンブスの歓迎会でのこと。『西にずっと進めばどこかにつくでしょう。たいした業績ではない』との揶揄に『卵を立たせることが出来るか』とコロンブスは応じた。周囲のすべての者が失敗する中で、コロンブスは卵の底の一部を割って卵を立たせた。あとからは容易に見えることもはじめにおこなうのは難しいことを示したのである。」


さて、この時の卵は、歓迎会の食卓に食用として出ていたのであるから、ゆで卵であろう。生卵をたべる習慣は、世界的に見れば少ないらしい。


したがって、コロンブスの場合は、ゆで卵を割って立てた。では、生卵を割らないで立てることは出来るだろうか?


立春の時には卵を立てることが出来ると云われていた。事実、1947年の新聞紙上で多数の立った卵の写真が報じられ、各界の学者が何故に立春の時にそれが可能であるか、を推理したことがある。この事件を取り上げ、卵を立てるメカニズムを解明して、中谷宇吉郎は「立春の卵」という随筆を著した。以下はその内容の趣意である。

「卵は立春に限らず、いつでも立てることが出来る。新鮮な卵の表面にある3点以上の出っ張りを足として卵を支え、卵の重心をそこに落とすべく、少しだけ根気よく作業すれば、生卵であっても、ゆで卵であっても、(先端が丸い方を下にしても、先端がとがっている方を下にしても ← これは中谷は言っていないかもしれない。WEB上でこの写真を紹介しているところもあった)立つのである。」

この記事に触発されて私も挑戦してみた。その結果、24分間で3個を立てることが出来た。一個平均8分かかっている。この時間が私には興味深い。つまり、私は中谷の随筆を読んで、「卵は立つ」と知っているので、集中した作業を数分間続けることが出来た。しかし、「立つかどうか分からない」状態では、数分間も集中した作業は出来ないであろう。







1983年撮影



その意味で、先達がいること、あるいは信頼できる人に結果が保証されていることは、作業を続けるための大きな助力になることは間違いない。

なお、この話を他の方にも紹介したら、1分ほどで立ててしまう人もいた。一方、話だけ聞いて、自分ではやってみない人も多数いた。

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卵を立てる
――コロンブスの卵と、立春の卵――