われたりするなど、鉄道会社が中心となって街が創られてきた。東京圏では、鉄道をベースと

した都市の交通システムと土地利用パターンが形成され、人々の生活もそれを基礎に置いたも

のとなっている

5

。東京都区部に絞って輸送機関別の輸送人員構成比をみると、鉄道偏重の傾

向が明らかである。

1975年度から2003年度までの間、東京都区部では旅客輸送人員の約70%

が鉄道を利用している。

 

 
【図表

0-3】東京都区部輸送人員輸送機関別構成比 

 

(出所:運輸政策研究機構「都市交通年報」各年より作成)

 

 

 

これらの旅客輸送を中心になって担ってきたのが、国鉄が民営化されて成立した

JR東日本

や、東武鉄道、東京急行電鉄、小田急電鉄、京急電鉄、京成電鉄、京王電鉄等の鉄道会社であ

る。本研究では首都圏の大手私鉄会社がどのような戦略を持ち、どのようなビジネスモデルに

よって成長してきたのか探っていく。

 

 

2.

既往研究の整理と本研究の位置づけ

 

鉄道会社のビジネスモデルを明らかにしようとする研究は、これまで様々な視点から行われ

てきた。本研究に関連する既往研究としては、鉄道会社の経営多角化に関するものやカリスマ

的経営者による鉄道会社の経営方法を研究したもの、鉄道会社と外部経済効果に関する経済学

的研究、また、ビジネスモデルそのものを研究したもの等が挙げられる。

 

鉄道会社の経営多角化に関する先行研究としては、吉田(

1987)や正司(1992)、正司・Killeen

1998)、松崎(2012)によるものがある。吉田(1987)は、民鉄(私鉄と同義)が古くから

事業多角化を行っており、主に自動車(バス)輸送等の異種交通機関と不動産や住宅開発事業

2種の事業分野への進出していることについて言及した

6

。同氏は、異種交通機関への進出

の動機は、関東エリアでは関東大震災後に急激に成長し始めたバス事業者に対抗する為に兼営

を始めたと説明している。一方、不動産及び住宅事業については

2つの動機が事業進出を誘発

しているとした。一つは、鉄道業から発生した外部効果を内部化するための沿線開発を行うと

いうインセンティブであり、もう一つは、多角化経営の一

環として鉄道沿線の不動産事業で

                                                 

5

 矢島隆・家田仁『鉄道が創りあげた世界都市・東京』一般財団法人計量計画研究所、2014、

p.12 

6

 吉田茂、1987、「交通産業の事業展開と戦略的意義」『運輸と経済』47(9)、p.5 

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

1975


1976


1977


1978


1979


1980


1981


1982


1983


1984


1985


1986

1987


1988


1989


1990


1991


1992


1993


1994


1995


1996


1997


1998


1999


2000

2001


2002


2003


鉄道

バス

ハイヤー・タクシー

自家用自動車