44
4.2.2.
製鋼・圧延設備における工程間の連結・連続化
経済低迷期に見られた第二の変化が生産管理における技術であり、これによって鋼材の高級
化・高付加価値化を後押ししていた。製鋼工程では連続鋳造化が進み、製鋼から圧延段階にか
けての熱間圧延工程が直行化され、圧延工程では冷延工場の
CAPLが導入されるようになった
67
。これによって、従来の規模の経済を追求する技術と設備投資の拡大から、スラッグ排除や
省エネを中心とするコスト削減志向へと変わっていった。
工程の連続化・連結一体化において、日本が世界に先駆けて普及を進めたのが連続鋳造技術
であった。従来のインゴット法では、鋼片を作る際に造塊・分塊の工程を経ていたが、連続鋳
造法では直接製造できる。これによって鋳型を切り落とす断面が減少し、歩留まり率の向上や
工程時間の短縮、省エネルギーにも貢献した
68
。【図表 4-6】は炉別連続鋳造率
69
と歩留まり率
70
の推移を表したものである。上図より、全ての炉において連続鋳造率が上昇しており、さら
にそれと同じ形で歩留まり率も上昇していることが分かる。こうした傾向が
1970年代以降の
日本鉄鋼業において急速に見られるようになっていった。
【図表 4-6】日本鉄鋼業における炉別連続鋳造率と歩留まり率の推移
(出所:通商産業調査会『鉄鋼統計年報』各年より作成)
67
夏目大介『鉄鋼業における生産管理の展開』同文館出版、2005年、p.179
68
同上、p.226
69
圧延用鋼塊の生産量のうち、連続鋳造によるものの比率。
70
歩留まり率=普通鋼熱間圧延鋼材÷普通鋼向け粗鋼圧延用鋼塊
80%
82%
84%
86%
88%
90%
92%
94%
96%
98%
100%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
1960
年
1961
年
1962
年
1963
年
1964
年
1965
年
1966
年
1967
年
1968
年
1969
年
1970
年
1971
年
1972
年
1973
年
1974
年
1975
年
1976
年
1977
年
1978
年
1979
年
1980
年
1981
年
1982
年
1983
年
1984
年
1985
年
1986
年
1987
年
1988
年
1989
年
1990
年
1991
年
1992
年
1993
年
1994
年
1995
年
1996
年
1997
年
1998
年
1999
年
2000
年
平炉連続鋳造率(左軸)
転炉連続鋳造率(左軸)
電気炉連続鋳造率(左軸)
歩留まり率(右軸)