イノベーションのジレンマ
第二章
バリュー・ネットワークとイノベーションへの刺激
後期課程1年 呉 團焜
組織とマネジメントにみる失敗の理由
優良企業が失敗する理由の一つとして、組織的な障害である。官僚主義、自己満足、「リスクを避けたがる」。
レベッカ・ヘンダーソンとキム・クラーク:部品ごとにサブグループの製品開発組織➝部品レベルのイノベーションを促す➝製品の基本的なアーキテクチャーが変更すれば、無効になる。
能力と抜本的な技術にみる失敗の理由
「抜本的イノベーション」と「漸進的イノベーション」
企業は過去に築いてきた能力の価値(漸進的)が技術革新によって破壊された時に失敗し、新技術(抜本的)によって能力を高められれば成功する。
ディスク・ドライブ業界➝「破壊的」
バリュー・ネットワークと失敗の原因に関する新しい見方
「バリュー・ネットワーク」という概念を導入。
l バリュー・ネットワークが製品アーキテクチャーを映し出す
図2.1は、製品システムの物理的な入れ子構造を示すと同時に、入れ子構造になった生産者と市場のネットワークが存在することを表している。一つのネットワークの中で生産され、一つ上の階層でシステムを統合する生産者に販売される。➝「バリュー・ネットワーク」。
l 価値の測定基準
価値を測る基準は、ネットワークによって異なる。図2.2。
独自おバリューチェンを持ち。
l コスト構造とバリュー・ネットワーク
バリュー・ネットワークは、製品の特性だけで決まるものではなく、特有のコスト構造がある。図2.4。
技術のSカーブとバリュー・ネットワーク
Sカーブは、一定期間、または一定量の技術努力によって得られる性能向上の幅が、技術が成熟するにしたがって変化することを示している。図2.5。
戦略的技術マネジメントの本質は、Sカーブの変曲点を見極め、現在の技術にとってかわる後継技術を開発することにあると主張している。
Sカーブとバリュー・ネットワークの違い:持続的イノベーション(漸進的、抜本的)と破壊的イノベーション。
図2.5と図2.6が、優良企業を失敗に追い込むイノベーション・ジレンマを示していることは明らかだ。
経営上の意思決定と破壊的イノベーション
ディスク・ドライブ業界の主要企業の意思決定パターン:
ステップ一:破壊的技術は、まず既存企業で開発される。
ステップ二:マーケティング担当者が主要顧客に意見を求める。
ステップ三:実績ある企業が持続的技術の開発速度を上げる。
ステップ四:新会社が設立され、試行錯誤の末、破壊的技術の市場が形成される。
ステップ五:新規参入企業が上位市場へ移行する。
ステップ六:実績ある企業が顧客基盤を守るために遅まきながら時流に乗る。
フラッシュ・メモリーとバリュー・ネットワーク
フラッシュ・メモリーの出現によって、バリュー・ネットワークの理論を検証する。
l 能力の観点
フラッシュ・メモリーの技術は多くのドライブ・メーカーが築いてきた能力を基盤としている。
l 組織構造の理論
「抜本的」技術と呼ぶ。
シーゲートとカンタムは独立部門を設置し、競争力のある製品を開発している。
l 技術Sカーブ理論
図2.7は、磁気ディスクのSカーブがまだ変曲点に達していないことを示している。したがって、磁気ディスクのSカーブが変曲点を通過しはじめなければ、フラッシュ・メモリーがディスク・メーカーの脅威になることはない。
l バリュー・ネットワーク理論による洞察
バリュー・ネットワークの理論によると、上記の理論はいずれも、成否を予測するには不十分であることがわかる。
能力の観点:買収
組織構造の理論:持続技術
技術Sカーブ理論:破壊的技術の軌跡はいつ市場の需要と交差する。
技術的に開発することが可能であったとしても、いま属しているバリュー・ネットワークの中で、採用されるかどうか。図2.8。
バリュー・ネットワーク理論がイノベーションに対して持つ意味
@ 企業が競争するバリュー・ネットワークは、イノベーションを妨げる技術的、組織的障害を克服するために必要な資源や能力を集約する能力にはっきりと影響を与える。
A イノベーションへの努力が商業的に成功するかどうかを決定する重要な要因は、バリュー・ネットワーク内の関係者のニーズにどこまで対応するかである。
B 実績ある企業が顧客ニーズに応えない技術を無視しようと決めたことは、二つの異なる軌跡が交わった時に致命的な結果を招く。
C 破壊的イノベーションについては、実績ある企業より新規参入企業のほうに攻撃者としての優位性がある。
D 実績ある企業が新規参入企業に比べて、いかに柔軟に技術ではなく、戦略とコスト構造を革新できるかどうかである。
検証すべき点:
l 破壊的イノベーションにかかわる性能指標が、すでに属しているバリュー・ネットワークの中で評価されるかどうか。
l 他のネットワークに参入したり、新しいネットワークを創設する必要があるかどうか。
l 将来的に市場の軌跡と技術の軌跡が交わり、現在は顧客のニーズに応えられない技術が、いずれ応えられるようになるかどうか。