とっても人間的なリスクテイカーでベネフィット誘因に弱いあなたにお勧めの一冊, 2012/10/7

レビュー対象商品: 事故がなくならない理由(わけ): 安全対策の落とし穴 (PHP新書) (新書)

帯をみると、逆説的な事例が列挙されています。(書店で手に取るとわかります)
それ以上に中身は面白かったです。

「工学的対策でリスクが減れば人間はリスクを高める方向に行動を変化させるリスク補償行動をとり、長期的には事故率が元の水準に戻ってしまうというリスク・ホメオスタシス理論」を筆者は紹介しています。
たとえば、曲がりくねって「危険な」道路をまっすぐで「安全な」道路に改修すると、ほとんどの人がスピードを上げて「危険な」走行を自らの判断でしてしまう、というようなことです。

「安全対策がどのような成果を上げるのか、あるいは上げないのかを決めるのは、その安全対策によって人間の行動がどのように変化するのかにかかっている。これは工学の問題ではなく心理学の問題なのである」と述べているとおり、人間の判断でリスクをとってしまう行動はどうしようもなく、誠にもって人間とはワガママなものだなあと感じますね。

煙草も酒も止められない、にもかかわらずスーパーの総菜に張られたラベルに長々と印字された添加物等に眉をひそめて買うのをためらってしまう私は、とっても人間的ななリスクテイカーで心理学的なベネフィット誘因に弱い、ほほえましい一市民だなあと痛感します。(←もちろん本書はこんなおちゃらけた趣旨では書かれていません、念のため)