〜子どもと大人の関係に静かな革命〜

ロジャー・ハート著

子どもの参画

コミュニティづくりと環境ケアへの参画のための理論と実際

 

 

 本書はコミュニティづくりや環境に関わるプロジェクトにいかに子どもが参画するかについて、具体的な事例をもとにその原理と方法を提案したものである。本書を発案したのはユニセフ環境部と国際子ども発達センター(イタリア)であり、筆者のロジャー・ハートは長く子どもの遊び場の計画に関わり、また途上国の子どもに関連する団体との情報交換を行ってきた人物である。

  本書の特徴は、国連子どもの権利条約(1989年採択)によって、地球的課題の一つとして認識されるようになった子どもの参加の権利が、具体的にはどのようにしたら現実のものとなるのか、という点について多くの事例とともにその原理と方法論を具体的に示したことである。すでに原著が刊行されて以来、ハートが提起した「子どもの参画のはしご」は他の著書においてしばしば引用され紹介されている。

  私は今回本書の監修に関わったが、特に面白かったのは子どもの参加は「北半球のもうしっかりと民主主義が確立していると自認している国々よりも、民主主義にいま目覚めつつある国々において子どもの地域参加が進んでいる」とハートが述べていることであった。例えば、フィリピンのオロンガボ市では、NGOのひとつである「働く子どもの協会」は、ストリートチルドレンたちが市場の売り子、荷物運び、ジープニーの洗車などをして自分たちの生活向上をめざす活動を支援したきた。こうしたNGOの活動を認めて市長は、ストリートチルドレンが警察の手入れによって留置所に入れられることをなくし、彼らに一市民としての権限を認めようとしている。フィリピンでは働く子どもたちの全国会議を開催し、ストリートチルドレンらの社会参加・政治参加に大きく道を開いている。ハートは「裕福で家族がそろった家庭の子どもよりも、文字が読めず家族の影響が及ばない路上で暮らしている子どもたちの方が国連子どもの権利条約の原則をよく知っていることは皮肉なことである」と述べている。

  もちろん「北」における子どもの参加事例についても多くのが紹介されている。イギリスのウィルトシャー州の教育委員会は、田園地帯における高速道路の影響という環境調査に36の小・中学校を参加させ、高速道路が出来る前と後で田舎道に沿った植物や生け垣にどんな変化が起きるかなどの調査を実施した。子どもらの調査結果は専門家をもうならせるほどの貴重なものであったと報告されている。

  本書は第T部において子どもの参加に関するさまざまな理論と原則を解説したのちに、第U部と第V部で具体的な方法論としてアクション・リサーチ、デザイン、コラージュ、地図づくりなどさまざまな手法が紹介されている。ロジャー・ハートの『子どもの参画』は今後10年以上にわたって、子どもの参加論、環境教育、開発教育の分野において本書抜きでは議論を進めることができない程の基本的かつ重要な文献となることであろう。

(田中治彦)


ロジャー・ハートの「参画のはしご」

ロジャー・ハートの「アクション・リサーチ」


ロジャー・ハート著、木下勇・田中治彦・南博文監修、IPA日本支部訳

『子どもの参画−コミュニティづくりと環境ケアへの参画のための理論と実際』

Roger A Hart, Children's Participation: the theory and practice of involving young citizens in community development and environmental care, EARTHSCAN, London, 1977

本書のご注文は最寄りの書店か、萌文社(電03-3221-9008 FAX03-3221-1038永島)まで。


南北ネットワーク

田中研究室

立教大学フロントページ

立教大学文学部教育学科

研究室の人びと

授業科目と内容

研究テーマと主な論文

ももすけエッセー集

関連ホームページリンク

プロフィール