2001年度田中ゼミ 5p
バリアフリー班
《はじめに》
私達が「バリアフリー」に興味を持ったのは、立教大学周辺が障害を持つ人たちにまったく対応していないのではないか、という疑問からであった。
立教大学は、障害をもつ人も受験できるし、そうした人たちへの工夫や設備の改善も積極的に取り組もうとしているのにもかかわらず、通学途中には、とても不自由そうな姿を良く見かけるのである。
そこで、学校の周りの「バリアフリー」に対して、行政や民間企業の取り組みの現状を調べ、そこから健常者も含めてどのような支援をしていけばよいのかということについて考えてみることにした。
《目次》
1. バリアフリーとは
2. 立教大学の対応とバリアフリーに対して〜A君へのインタビュー〜
3. 学校から駅までのバリアフリー実地調査
4. 障害者とその支援
5. 立教大学の障害者支援ネットワーク
6. 障害者福祉が発展している大学の例
《1.バリアフリーとは》
@「バリアフリー」の定義
平成5年に制定された「障害者基本法」によって定義づけされたもので、現代の日本社会が高齢化を迎えている中で、高齢者も障害のある人もない人も誰もが壁を感じることのない社会をつくろう、という考えである。
A「交通バリアフリー法」の誕生( http://www.ikiru.squares.net/news/vhree )
平成12年11月15日に制定され同月18日に施行された『高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律』(交通バリアフリー法)は、鉄道やバスといった公共機関を誰もが利用できるよう、駅やその周辺のバリアフリー化を目指すものである。この法律は、障害をもった人でも鉄道やバスを利用しやすくするために、一日の利用者が五千人以上の駅周辺を「重点整備地区」として、道路管理者や鉄道会社に義務付けたものであり、対象となる駅は全国2700ヶ所になる見込みで、政府は4300億円余りの対策費を盛り込む予定である。日本では、1970年代に全国各地に『低床バス』が運行するようになったが、1970年から80年にかけて法令化してきたアメリカやドイツ、フランスといった先進国からは遅れをとっているといわざるを得ない。
*その他行政の取り組みとしては、「交通バリアフリー法」と同様に公共性の高い場所(例;市役所、病院、市民ホール等)について『建築物バリアフリー法』を設定する働きや、「すべての人間」が共通して使いやすい製品や環境をデザインするという考えのもと作られた『ユニバーサルデザイン=共同品』(例;シャンプーのわきに付いているデコボコの印等)を開発するなどといった動きもでてきている。
B東京都および豊島区の取り組み
東京都では、東京で生活するすべての人が自由に行動し、社会参加のできる「やさしい街」を目指して、平成7年3月に『東京都福祉のまちづくり条例』を制定した。これは、東京都にある一般都市施設(整備基準への適合能力義務が求められる施設)に関してバリアフリーのある施設に改修することを義務付け、『適合証』を配布するという試みを行っている。
また立教大学のある豊島区では、東京都の条例に先駆けて、昭和63年10月に『豊島区福祉のまちづくり整備要項・同基準』を定め、"共に生きる"地域社会を作ることに力を入れてきた。しかし、予算や順番の関係で立教通りについてはわかっていても手につけられないでいるそうである。また、区民との協力のもと、『豊島まちづくり新聞』の刊行や、地域ごとの『まちづくりニュース』の発行を通して、できる限り区民とのコミュニケーションを図り、区民のニーズになるべく答えていけるようなまちづくりを行っているのである。
《2.立教大学の対応とバリアフリー〜A君にインタビュー〜》
今年、立教大学に入学したA君に、直接話を聞くことができた。A君は、毎日車椅子で登校をしている学生である。今はYMCAの人がボランティアで教室への移動、学校の行き帰りの手伝いなどをしているそうだ。
○ 学校の不便なところ
1、 5号館は古いので、入り口が狭い。入れないことはないが、ぎりぎりである。
2、 6号館の前などはスロープがあるが、坂がきつくて上がるのに大変である。もっと緩やかにして欲しい。
3、 車椅子にあった机がない。授業受けるときも、お昼を食べるときも、ちょうどいい高さがないため、苦労してしまう。
4、 図書館に行く時は、階段なので7号館に周ってエレベーターを使わなくてはならない。
立教は比較的協力的だったため、どうすればいいかなど、対策を練ってくれた。大学受験のときは車椅子が受け入れられるかどうか学校に電話で聞いてみたそうだ。しかし、ある大学は「うちは、どの生徒も同様に扱いますので、車椅子だからといって特別扱いしません」と言われたそうである。この大学は、自由で解放的な学校として知られているため、本人も意外だったという。
○ 学校から駅までの不便なところ
1、 立教通りは狭いし、お店の物が路上に置いてあるのが邪魔である。
2、 違法駐輪や放置自転車。
3、 高い段差や斜めの車道。
○ 駅の中
1、 駅の中のエレベーターがない。(パルコへいって、エレベーターを使用する事もある。)
2、 階段のスロープが設置されてきたが、駅員さんが忙しかったり、頼んでも30分くらい待つこともあるので、あまり使っていない。
3、 早朝・夜はスロープが使えない。時間制限がある。
4、 定期券の改札口。
5、 電車の乗り降りのスロープがない。(そのため、駅員さんに手伝ってもらっているが、忘れられて、終点までいってしまったこともあるという。)
○ これまでの学校生活
小学生時代―今までで一番恵まれていた環境。
中学生時代―義務教育だったので、スロープの設置など前向きに対策をしてくれた。
高校生時代―高校進学のときは養護学校いくことも考えた。しかし、能力的には劣ってないため今まで通り普通の高校に行くことになる。結局家から近い学校へ。
高校には十分な設備がなく、身体障害者に対しての前向きな態度がなかった。先生も最初は全く手伝ってくれなかった。お願いしたことによって高2のときにエレベーターが設置された。
○ 使用している車椅子
既製品で売られているものは介護用のものがほとんどなので、サイズが合わない。だから、たいていはオーダーメイドである。今使っているのは、今年買ったもので自動である。今までは手動だったので大変ではあったが、自動のものと比べて軽かった。
○ これから考えるべきこと
これから入ってくる人がよりよく使えるように、もっと施設の充実を図るべきである。重度の障害者に合わせれば誰でも使えるようになる。その人だけに投資するという考えではなくて、これからはそのような施設が必要となってくるのできちんと対策をして欲しい。
私たちにできることは、エレベーターから降りたりするなど些細なことでいいから、心がけていきたい。
《3. 学校から駅までのバリアフリー実地調査》
A君の下校する道のりを一緒に歩いてみた。私達が利用している道のりでは、段差がきついところなど車椅子では通行不可能なところがあるため、かなり遠回りした道のりとなっている。

【下校コース】
上記の矢印通りに行った後、東武に入りエレベーターで地下一階へ降りる。
↓
駅の中を通り、西武の入り口(ルノートル口)から入り、エレベーターで一階に上がる。
↓
西武線改札へ
【所要時間】
約30分
上記の地図と対応させて、それぞれ気付いたことを上げてみた。
@ スターバックスの裏 車両禁止の看板・放置自転車が多く、通行できる場所を狭める。
A B少し道が傾いている 少々の傾きであっても車椅子では、慎重にならなくてはならない。
C段差・傾きが多い。
Dなるべく障害物のある道をさけるため、細い道を通る。
E横断歩道 ここの横断歩道のすぐ手前の部分は傾いているので、横断歩道近くで信号待ちをしていると、車椅子が動いてしまう。離れたところで信号待ちをしなくてはならない。
F西口公園内の地面は、石のブロックでできていて、かなりでこぼこする。
・駅の中 最も大変なことは、人ごみであふれているところ。人にぶつからないように慎重に進む。
・西武ルノートル口のスロープで上がる。なだらかで上がりやすい。
・エレベーターで乗り降りするとき、エレベーター内では、方向転換できないので、バックで降りないとならない。後ろが見えないので、付き添いの人に注意してもらうことが必要。
・西武線改札 一番右の改札のみ車椅子用に幅が広くなっており、そこから通る。改札に入った後も、駅員さんに電車に乗るためのスロープを用意してもらう。
【思ったこと】
道に障害物が少ないコースを選んで通っているにもかかわらず、たくさんの不便な部分が見つかった。私達が普段歩いている道はさらに多くの障害物があると思われる。実際に一緒に下校してみて、歩いている人達には、どうってことない段差でも、車椅子には大きな障害になってしまうということが分かった。微妙な段差をさけるためにかなりの遠回りをしなくてはならなず、大変な不便を強いられていると感じた。
《4. 障害者とその支援》
@ 様々な支援の形態
障害者を支援していく体制としては、大きく分けて「社会的支援」「学校の支援」「家庭の支援」の3つが考えられる。
社会的支援としては、上記にも述べたように、公共施設や交通機関のバリアフリー化やコンピュータ・インターネットの利用といった、現代の情報化社会に適応したところの支援がなされているといっていいだろう。例えば、営団地下鉄では『メトロニュース特別号』としてバリアフリーへの取り組みを特集したり( http://www.tokyometro.go.jp )、声に反応するパソコンの開発をしたりと様々な支援がなされているのである。
次に、学校の支援としては、指導要領改定で支持されている"自ら学び、自ら考える力"の育成を図る目的で、盲・聾学校にも情報ネットワーク環境の整備や学校施設の設備改正、または親との連帯を図っていくというように、より障害者のニーズに合わせた支援を行っているのである。
三つ目の家庭の支援は、最も障害者に影響を与え、最も身近な支援であるといえる。これは、「障害者本人とその家族の関わり」と言い換えることができ、障害をもつ人の心理的援助はもとより、家族との密な触れ合いにより、人間関係の形成や社会的行動の基礎を身に付けたり、自尊心を育てるための自己統御の力を身に付けさせることにつながってくるのである。
しかし、親の思いはかなり複雑なものであり、いくつもの葛藤があったにちがいない。というのも、思いがけず障害のある子どもを授かったという戸惑いから、精神的ショックを受け自信喪失や罪悪感さえも抱いてしまう親も少なくないのである。このような想いを共有し助け合うために、ネット上にはさまざまなサイトがあり、そのなかで親たちは悩みや悲しみを相談しあっているのである。( http://www.harunaru.com )
親の心理状態を図式化してみると、
このようにあらわすことができる。
こうした考え方ができるようになるには、家族だけではなく周囲の人々の理解や支援が重要となってくる、といえるであろう。
《5. 立教大学の障害者支援ネットワーク》
立教大学の中に、障害者支援ネットワークがあることは、知っていたが、実際にどのような活動をしているのかわからなかったので、直接立教大学事務局のKさんにインタビューすることにした。支援する側として、今度は学校の視点から考えることにした。
1、 歴史
1995年に障害者支援ネットワーク誕生。それまでは教務部の支援で、時々やっていたが、行き届かない部分が出てきて、委員会活動を作る。そこから、ネットワークへ。事務局員は2人。
2、 実際はどんなサポートがあるか?
要望があると、それを解決させるように努力したり、教務部などの関係者への連絡。障害者の方が、直接来てから考える組織なので、実動そのものではない。
今、行われているものとして、
・ Note Taking(講義の内容をノートにとってもらう)
→所属の学科や院内で声を掛けて、アルバイトとして募る。
・ 点訳(講義内容を点字で打つ) →外部に委託
・ 実験介助(心理学科や理学部)
・ 電卓介助(数学科)
など、アルバイトとして、学生部で募集していることもあるようだ。
3、 A君の受け入れ体制
まだ、整備が不十分。電動の車椅子の人は、初めてで、A君が入学すると決まったのが、正式に3月頃なので、入学までの時間が短すぎたのもある。現在は、教務と関係部から相談しながら受けている。
前期は、YMCAなどにボランティアとして手伝ってもらった。後期は、時間割が変わったこともあって、手伝ってくれる人を学内の掲示板で、ボランティアとして募集している。授業の毎時間の移動に手伝いが必要なことから、なかなか、人が集まらないようだ。
4、 問題点
・システム化がされていない。
今は助けが必要な人に対して、すぐに動けない。そこで、教職員と生徒の団体が連携して、すぐ対応できるようなシステムがあれば、ボランティアとして、探しやすい。
・まだ、学校内の設備が整っていない。
・相談に来てから考える組織でしかない。
軽度の障害の場合、本人から連絡が来ない限り、わからないことがある。入試を受けるときに、特別措置としてやる場合もあるが、全員の把握は無理がある。
5、これからの展望
・ バリアフリーの環境調査の実施
新座キャンパス内で、先生とサークルのボランティアの人が、バリアフリーについての調査を行った。何項目か、チェックがあり、エレベーター内に鏡がないなど、新しい施設なのに、改善するべきことがあったようだ。今後は、池袋キャンパスでも調査したい。
※エレベーター内に鏡が必要なのは、車椅子の人が、入る時は前から入るので、出るときに、後ろに人がいないかどうか、きちんと出られるかどうか、鏡で確認するためである。
・ きちんとした組織ではないので余裕がない。
ネットワークは、学生部や図書館の人が兼任してやっているので、忙しくて、なかなか、こちらに手が回らないときがある。
・ 独自事業として講習会をやりたい。
今は、点字講習など、チャペルが主催しているが、今後は独自でやりたい。
・ 個人レベルでしかない。
きちんと組織になっていないので、将来的にどうしていこうという目的が決まっていない。まだ、個人個人のレベルでしかない。
このように、大学側は授業がきちんと受けられるということなら、積極的に改善しようという姿勢のようだが、まだまだ、見直されるべき点がたくさんある。私達は、普段ならこの施設を使わないので、何をしているのかわからないが、これをきっかけにもう一度バリアフリーについて考えてみてはどうだろうか?
《6. 障害者福祉が発展している大学の例》
カナダのマギール大学では、積極的に障害学生の支援ならびに対策を行っている。この大学では、1995年5月までに障害学生支援室に登録している学生は171名いる。
障害のある学生に対して、最も大きなバリアとなりうるものは大学側の態度である。入学に際しては、「障害者学習支援を行っている」という情報をしっかりと与える事が重要になる。
≪マギール大学における障害のある学生に提供されるサービスの例≫
この大学では、障害を、聴覚損傷・視覚障害・移動ないし協応損傷・慢性的医学的損傷・学習障害と分類し、それぞれにあったサービスや対応をおこなっている。ここでは、移動ないし協応損傷の学生へのサービスをあげてみる。
「移動ないし協応損傷の学生へのサービス」
・試験のための筆記者…自分の答案を口述筆記してもらう必要のある学生のため。音声認識コンピューターの導入もなされてる。
・構内バスの使用………この大学は構内が広く、障害を持っている学生が電話をかけてよぶことができる構内バスが設置されている。
・優先駐車場と低率料金
・アクセス路の計画
・付き添いケア…………非常に重度の障害で、排泄や食事の援助、本を片付けたり、教室で援助を必要とする学生のための付き添いケア。
・改造寄宿舎室
・試験のための時間延長……また、障害のあるすべての学生が得られるサービスも設置されている。
・10の主な図書館での改造コンピューターとスキャナー…それぞれの障害に合ったコンピューターの設置
・個人教授………障害学生は授業中に十分理解できていないことが多いため、設けられている。
・ 学事、管理スタッフとの連携
・ 財政補助と奨学金の情報
・ 携帯用コンピューターの貸与
・ 「アクセスマギール」学生集団……全ての学生に開かれた学生集団で、一般学生自治会によって主催される。参加している学生は、障害学生の為に一緒に働く機会を持つ。
・ 障害者に関する評議会小委員会……教員の代表と、大学の運営主体である理事会の二つのグループから、小委員会のメンバーが指名され、また、10人の学生が加わっている。
障害者にとっての優れたサービスを提供するには、私達の見方を改める必要がある。
「私達の環境に合わせるためにあなたは何をすべきでしょう?」ではなく、「あなたに合った環境にするために私達は何をしなければならないのでしょうか?」という視点で考える必要がある。
(参照:障害学生の支援 慶応義塾大学出版会)
《さいごに》
一年にわたって、「バリアフリー」についてリサーチしてきたわけであるが、この調査を終えてみて、障害者支援という問題に対してどれだけの人が障害者の立場に立って物事を考えているのだろうか、と疑問に感じた。日常の生活に何の支障もないわれわれが、健常者という立場から考えた「バリアフリー」と、実際に障害と向かい合いながら生活している人から見た「バリアフリー」はかなり異なったものであろう。ただ法を施行し、様々な設備を整えただけでは十分ではないのである。健常者ひとりひとりが「障害者と共に生きている」という意識をもって生活していくことが、本当の意味での「バリアフリー」といえるのではないだろうか。
これまで障害者には、「自立」することが目標とされてきたし、今なおその考え方は根強く残っているといえる。「自立」とは、他人の助けを借りずに自分の力だけでやり遂げることを指すが、障害者は事実「自立」することは難しい。むしろ、自分で自分のことについて決める「自律」のほうが重要なのではないだろうか。自分ですべてをできなくても、自分で自分自身のことを決めることはできるのである。
このような考えを常にもち、自然に助け合いながら生活していくことが重要なのではないだろうか、と考えさせられるリサーチであった。
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