2001年度田中ゼミ 8p


アクションリサーチ4

ホームレスな人々

ホームレス班


ホームレスとは…

 いわゆる「ホームレス」の厳密な定義は困難です、ここでは、失業、家庭崩壊、社会生活からの逃避など、様々な要因により、特定の住居を持たずに、道路、公園、河川敷、駅舎などで野宿生活を送っている人々を、その状態に着目して「ホームレス」と呼ぶことにします

 

☆目次☆

1. ホームレスの人の現状

2. 背景(どうしてホームレスになったの?)

3. ホームレスの人たちの仕事

4. 行政の対応と現状の比較

5. 炊き出しについて

6. 私たちにできること


 1.ホームレスの現状

 

 まずはじめに「ホームレス」状態にある人々の数や分布を確かめることはとても難しいそうです。なぜなら「ホームレス」状態にあるひとは居場所が定まらず、その多くが「徘徊」したりしているからです。

 そして「ホームレス」状態にある人々の中には社会的不適応による人もいますが、実態調査の結果では、個人的要因(病気など)と社会経済的要因(産業構造の変化など)が複合し、不況による失業を契機として路上生活に至るケースが多いそうです。

東京都23区内に住むホームレスの人数は、1994年で3300人、1997年で3700人、2000年で5700人であり、6年間で1.7倍になっています。全国ではホームレスの人は約2万人いて、そのうちの9割の人が大阪や東京、名古屋、川崎、横浜の5大都市に住んでいるようです。

 

表1 主要都市のホームレス概数(人) 

1998年

1999年

大阪市

8660

東京都

4300

5800

名古屋市

758

1016

川崎市

746

901

横浜市

439

794

 

 またホームレスの人の生活場所としては公園(66%)や河川(15%)、道路(13%)、そして駅舎(3%)などがあげられ(1999年)、中でも公園で生活している人々の数は全体の約3分の2に当たります。

 

    表2 東京都23区内のホームレスの主な生活場所(人)

1995年

1997年

1999年

公園

1600

2300

3855

道路

600

700

731

駅舎

700

100

157

河川

400

550

860

その他

50

195

合計(女性)

3300

3700 (72)

5798 (123)

 居場所はいずれの年も公園が最も多く、公園や河川が増加しているのにくらべ、 駅舎は減少傾向にあります。 これは駅舎からの積極的な排除が行われたことが関係していると思われます。 表2の合計の部分に括弧で女性の数がありますが、これも増加の傾向が見られます。

 また図1のように、ホームレスの人々の年齢は50歳から59歳までの人が一番多く40パーセント近くを占めています。

 

図1 ホームレスの年齢構成

 

 路上生活に至る理由は人それぞれだが、失業によるものが77.6%と最も多く、2番目が病気・怪我によるもので19.2%、以下、倒産2.4%、家出2.3%、借金0.8%、その他の理由7.2%となっている。

(成澤)


 

2.背景(どうしてホームレスになったの?)

 

1. 家族はいるのか?

 データでも実際に話を聞いてみてもそうでしたが、ご家族とは縁が切れてしまっている、また「迷惑をかけるから」という理由で自分から縁を切った場合が多いようです。

 

2.仕事について

  私達が見てきた中で、仕事をしたくないと言う人はあまりいなかったように感じました。逆に、仕事はしたいのだが出来ないという話を沢山聞きました。その理由は、次のようなものです。

@ 怪我をしているから雇ってもらえない(肩の骨を折ったからクビにされたというひとも)。

A 食べれないから力が出ない為労働できない。

B 住所、電話がないため職安に登録できない。

C 年をとっているから

など等、色々な理由があるようです。仕事も定職につけず、運良く日雇いの仕事ができれば食べていける、というのが実態のようでした。

 

3.どうして路上生活者になったのか

@リストラされた

 大工さんだった人が多いようで、年齢方が高くなったら使い物にならないから、リストラされるようです。

A 借金におわれている

 やくざがらみの金融業者からお金を借りて、それが支払いきれなくなり、恐くて逃げ出した、というケースが多いようでした。

 これらの理由が圧倒的に多いようです。少数派としては、「家族関係から家にいたくない」という理由もありました。

 また、女性の場合は、「家庭内暴力から家を飛び出した」というケースが多いようです。

 

4.ホームレスに触れてみて

 ホームレスについて私は始め、何も知りませんでした。正直言って、「現実から逃げている」ようなイメージがありました。会社や家庭から逃れているだけの人だと思っていました。

 でも、私のこのイメージが変わったのは、「スープの会」の方々と炊き出しに行かせて頂いた時でした。ホームレスの人に一つ一つパンを配っているときに、声を掛けてくれる優しいおじさん達。そんなおじさんたちの切なさが心に染み入ってきました。ダンボールで寝ているおじさん達は本当に普通のおじさんでした。歯が欠けていたり、何をしゃべっているのか分からない時のありましたが、それでもおじさんたちは私達の目をしっかりと見つめてくれて、まるで何かを訴えたいかのようでした。私達のお父さんとあまり変わらないくらいの年齢で、こんな世界が新宿の中央公園にあったなんて…なんだか切なくなりました。と同時に、私は自分が幸せなことに気づきました。

 もう一つ、この炊き出しに行って、私が強烈に感じたことがあります。それは、ホームレスの方々は世間の被害者だと言うことです。経済とか、法律とか、そのような全ての世界のひずみをホームレスの人たちは一身に受けていると思いました。上手く言葉にはまとめられませんが、一つ一つの単純なことが、ホームレスの人たちにとってはとても大変なことであること。このことを私達はどう考えていくべきなのか、少しでも多くの人に考えてもらいたいと思いました。

 最後に、この「スープの会」の代表者である後藤さんという方に「私達には何が出来ますか?」と聞いた所、「自分の家族を大切にしてください」というお答えが返ってきました。私はこの言葉を聞いた時、ホームレスの人たちをとても身近に感じました。後藤さんが実際はどんな気持ちでこの言葉を言ったのかは分かりませんが、私は「もうこういう人を出来るだけふやしたくない」という思いからだと読み取りました。

 ホームレス班の一員として、私が今一番皆に伝えたいと思っているのは、「ホームレスは決して他人事ではない」事です。

(内舘)


3.ホームレスの人たちの仕事

 

要因…

 <就労する意欲があるが仕事がなく失業状態にある者>

・ 産業構造の変化や不況等により日雇い労働の雇用機会の減少、高齢により就労機会の減少

・ リストラ、会社倒産等による常用労働者の失業等

個人的要因(病気など)と社会経済的要因(産業構造の変化など)が複合し、不況による失業を契機として路上生活に至るケースが多数。

 

特徴…

・ 大半が単身男性で、50〜64歳の中高年齢層が6割以上と中心を占めています。多くは未婚または離婚経験者で家族と連絡を絶やしています。

・ かつては技能工など安定就労していた人が6割です。うち、事務職、専門職などホワイトカラーが1割で、特に39歳までの若年齢層では2割を超えています。

・ 7割は、解雇、倒産、病気など本人が望まない理由で職を失っています。

・ 飯場、社宅など仕事を結びついた住居にいた人が、失職と同時にホームレスになっています。

・ 食事の確保もままならない路上生活者の長期化により心身が疲弊しています。

・ 食事の確保の困難さ、通行人とのトラブル、健康状態の悪化など、厳しい生活環境におかれています。

 

*ホームレスの人たちの大半は求職活動をしていると答えており、就労を望んでいる。

・ 約7割以上は求職活動をし、また、約半数は仕事をして現金収入を得ている。

・ 仕事による収入は、約半数が月収3万円未満。

・ 比較的若い健康な人を中心に、ホームレスの8割が就労したいと答えている。

                (東京のホームレス白書 東京都福祉局)

 

図2 現在の仕事 

 ホームレスは「怠け者」というイメージで語られることが多いのが実状ですが、7割以上が、スポーツ新聞や就職雑誌を使う、知人や手配師から情報を得る、「寄せ場」で探すなどの方法によって、求職活動を行っていると答えています。求職方法については、図3を参照してください。

図3 求職方法

 

 

 ホームレスのほぼ半数は、路上生活状態の解消には至らないまでも、何らかの仕事をして現金収入を得ていると答えています。路上生活期間別にみると、ホームレスになって一定期間を経過すると、テントや小屋を常設して、そこを拠点に仕事に出かけていく人が増えます。しかし、5年以上の長期に及ぶと、健康状態が悪化するなどの理由により、仕事のある人がやや減少します。ホームレスが従事する主な仕事は、建設、運輸などの業種の日雇い仕事です。しかし、就労できる日数が極めて少ないなどのため、月の収入は1万円未満という人が2割を超え、半数近くの人が3万円未満と答えています。この程度の収入では、路上生活から脱出することは困難です。上の図にもありますが、チケットの購入の並び、本集め、廃品回収といった都市部に特有の雑業で収入を得ている人もいますが、これは、厳しい路上での生活のなかで、生命を維持するための、重要な手段となっています。

 炊き出しに行った時のお話では、手配師から得た仕事が「やくざ関係」だったなど、現状はかなり難しいようです。ホームレスの年齢層は50〜64歳の中高年齢層が多く、年齢制限から仕事に就けないこともあります。その他の理由として、体力的に無理(けが、病気、栄養失調などから力が出ない)、住所や電話がないために契約できない、などがあります。

 職安では住所がないと登録できないため、スープの会などの団体が住所、連絡先を貸したりしています。職安以外では、雇用主と直接契約をしたりすることもあるそうです。炊き出しを行った時に聞いたおじさんたちの仕事内容は、雑業(雑誌などを集めて売る)をしている人が一番多く、次に建築関係、看板持ち(サンドイッチマン)となっていました。中にはもちろん働きたくない人もいます。人間関係や労働が合わないなどの理由でドロップアウトしてしまっている人もいるようです。スープの会ではそういう人に対しても精神的に支えてあげたり、仕事を少しでもやる気になるように言葉をかけたりしています。

 

雇用の安定…

就労による自立に向けた職業訓練、職業紹介等の施策を実施する。

・ 求人開拓の実施

求人開拓推進員の活用による求人の掘り起こしを推進する。

・ 職業訓練の実施

公共職業訓練所を実施する。

・ 職業相談の実施

公共職業安定所に職業相談員を配置し、自立支援のための事業との連携の下に、職業相談を実施する。

・ 日雇い労働者の雇用の促進

日雇い労働者を多数雇い入れる事業主に対する緊急日雇い労働者多数雇用奨励金の支給を行う。

・ 45歳以上の者の雇用の促進

45歳以上の者を対象とした職業適応訓練制度を活用する。

45歳以上の者を継続して雇用する労働者として雇い入れた事業主に対する特定求職者雇用開発助成金の支給を行う(ただし、特定求職者雇用開発助成金について、45歳以上55歳未満の者を支給対象とする措置は、平成11年9月30日までの暫定措置である。)

 

 図4 今後の希望

 

山谷地域の歴史…

 ホームレスの仕事と言えば、主に日雇い労働です。ここで、日雇い労働の歴史として、山谷地域について触れたいと思います。

 「山谷」という地名の由来は諸説があり、付近に山麓があったことから「三谷」、あるいは3軒の民家があったころから「三家(三屋)」と呼ばれていたのが転じて「山谷」と呼ばれる様になったとも言われています。江戸時代の山谷地域は、日光街道と奥州街道の江戸への入り口となる宿場であり、木賃宿が建ち並び、行商人や旅芸人などが生活していました。

 明治に入り、次第に市街化が進みましたが、大正12(1923)年の関東大震災で木賃宿や長屋が大半焼失しました。しかし、まもなく復興して、約5千人の労働者が宿泊するようになりました。太平洋戦争後、戦災により焼け野原となった都内には被災者があふれ、とりわけ上野周辺に集中しました。治安への影響を重視した占領軍(GHQ)当局は、東京都に被災者の援護を要請し、山谷地域などに宿泊施設(テント村)を作り、山谷地域旅館組合に委託しました。テント村はまもなく本建築の簡易宿泊所に変わり、又、日本経済の復興により労働需要が増加しました。(昭和28年には、約100軒の簡易宿泊所「ドヤ」に、約6千人が宿泊していました。)

 昭和30年代には、日本経済の高度成長に伴った土木・建築作業や港湾荷役作業における労働需要が高まり、山谷地域は全国有数の「寄せ場」(日雇い労働市場)に成長しました。昭和39年の東京オリンピック開催に向けて進められた都市基盤の建設・整備は、山谷地域の日雇い労働者の力なくしてはあり得なかったと言われています。(昭和38年には、222軒の簡易宿泊所に約15000人が宿泊していました。)しかし、ドル・ショック(昭和46年/1971年)及び第一次石油危機(昭和48/1973年)の影響で、日本経済が動揺すると、労働需要は減少しました。

 その後、第二次石油危機(昭和54/1979年)を経て、低成長の時代を迎えました。昭和60(1985)年には、「バブル経済」の下、首都圏を中心に土地取引及びビル建設が活発化しました。土木・建設作業が急増し、人手不足の状況が発生しました。しかし、平成3(1991)年以降、景気が後退に向かったことから労働需要は急減しました。土木・建築現場では、長引く不況に対応して、作業の機械化及び省力化が進んでいます。また、労働者の高齢化が進んでいることもあって、就労を始めとする生活環境は厳しくなっています。

 このように、山谷地域の日雇い労働は変化してきました。日雇い労働が重要視されたのは景気がいい時であって、今の情勢ではかなり厳しい状況です。仕事がない上に、人件費削減でお給料も少ないようです。以前は25000円くらいもらえていた仕事も、今では12000円くらいだそうです。月10万円もらえるといい方で、仕事がない時はゼロに近いこともあるそうです。

感想…

 今までずっと、「ホームレス」=怠け者、怖い、汚いというイメージがありました。炊き出し(スープの会の訪問活動)に参加する時も、最初はかなり抵抗がありました。しかし、実際にお話をしたりしてみて、私たちと同じ普通のおじさんだということがわかりました。中には、とても優しいおじさんが居ました。社会から排除されてしまったためか、人と接することのないおじさんたちは、きっと寂しいのだと思います。

 でも、私たちは外見から判断していまい、ぼろぼろの服を着て、"汚くて臭い"と思うと近づくこともできません。でも、実際に話してみるとイメージは変わります。「さっき、お風呂に入ってきたよ。」というおじさんも居て、身の回りのこともちゃんとしていました。私たちは一軒一軒のテントを訪ねて歩き、パンを配りました。テントにはそれぞれ個性があって、拾ってきた網戸にステンドグラスを貼っているおしゃれなテントがあったり、植木がたくさんあるテントだったり、玄関があったり、蚊取り線香をたいていたり、いろいろでした。「こんばんは。スープの会です。パンをお持ちいたしましたが、召し上がりますか?」と言って廻りました。そうすると、「ありがと〜。ご苦労様。」と笑顔で答えてくれるおじさんもたくさん居ました。

 テントの生活でも、かなり充実していて、その暮らしを少しでも快適に楽しくしようという工夫が見られました。話をしていくうちに、就労意欲があっても理由があり仕事に就くことができなかったり、精神的なリスクがあったり、背景には様々な要因があることがわかりました。

 仕事をしていないからといって、一概に「怠け者」とレッテルを貼ってしまうことに疑問を感じました。働きたいけれど、住所がなくて採用してもらえない、けがをしたから解雇された、などというのは、かなり大きな問題だと思います。働きたいという意識は大切です。行政と民間支援団体も力を合わせて、就労問題がなくなれば、ホームレスにならなくても済む人がたくさんいると思います。

 まず、自立支援センターには住所がないと入れないというのは、おかしいと思います。訳があって住所を持てない人もいます。そういう人たちは、ホームレスにならざるを得ません。解決策はないのでしょうか。ホームレスのおじさんたちは、「自分の気持ちを話せる人が欲しい。」「寝るのにゆっくり寝られる場所が欲しい。」と言っています。冬のダンボール・テント生活はかなり厳しいです。毎年、凍死してしまったホームレスの話題がニュースで取り上げられます。

 人間には<生きる権利>があります。せめて暖かい場所で眠らせてあげられたら…と思います。最近では、ホームレス襲撃事件も多発しています。学生やサラリーマンに多いようですが、ストレス解消にいきなり殴られたり、ダンボールの家にたばこを投げ込まれたり、と悲しいことが起きています。団体の酔っ払いもからんできたりするので、おじさんたちは集団でいないと怖いと言います。ホームレスの人たちを社会の弱者として「いじめる」のではなく、何故助けてあげようとしないのでしょうか。努力しない人を助けるのは気が進みませんが、話を聞く限りではおじさんたちは努力をしていました。

 社会情勢のため、それがうまくいかなかったり、できなかったりするので抜け出せないでいます。もし、少しの援助で路上生活から脱出できるのなら、サポートすべきだと思います。ホームレス自身の自助努力が一番必要ですが、ホームレス問題は社会全体で取り組むべき問題です。国や自治体、民間団体、都民が連携し、セーフティーネットを構築する必要があると思います。

施策…

以下の3点が必要だと考えます。

・ 就労、住宅、福祉、保険・医療など、各分野にわたる総合的な対策

・ 福祉施策としては、自立のための一貫した処遇システムの構築

・ 国と都、23区が一体となった取り組み

 

参考文献…

・ 「東京のホームレス白書」 東京都福祉局 平成13年3月9日

・ 「山谷地域の歴史と現状」 http://www.tctv.ne.jp/members/iinacaya/sanya.html

・ 「ホームレスの自立支援方策について」 ホームレスの自立支援方策に関する研究会

平成12年3月8日 http://www1.mhlw.go.jp/houdou/1203/h0308-1_16.html

 

<スープの会>〒169−0075 新宿区高田馬場2−7−17

Mail:soup1994@pop06.odn.ne.jp

 (岡田)


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