「居場所」の3要素
ワーク:『居場所マップ』づくり
作業@ 「自分が居場所がないと感じたとき」を書き出す。
・初めて東京に来たとき ・転校したとき
・自分が知らない話題が続く(3名) ・クラス換えで知り合いがない(2名)
・大学に入学したとき ・引越し ・電車の中でグループに囲まれた
・実習中の職員室 ・部活などで目標に対して未熟だと感じたとき
・皆の前で怒られたとき
・お昼ごはんを一人で食べてるとき、周りをサークルの集団に囲まれたとき(2名)
居場所には3要素がある。
1)空間としての居場所
2)時間としての居場所
3)人間関係としての居場所=承認
人から認められているという関係性は非常に重要である。単に人間関係があるだけではなく、承認されている関係であること。しかも相互の承認関係であることが重要である。
「相互承認関係」(マズローの欲求説)
「相互承認関係」を考えるとき、マズローの欲求説をあてはめることができる。マズローは人間の基本欲求を次のように5段階に分けている。基本的欲求が根底にあり、そこが満たされないと、成長欲求を満たすことが難しいとしている。
↓ 基本的な欲求 @生理的な欲求(暑さ、寒さ、睡眠欲、食欲…)
A安全と安定の欲求(身の危険)
B愛情・集団所属(人から愛されている、認められている、集団に入って受け入れられている)=承認欲求
C自尊心・尊敬(尊重されている、役割があり、力が認められている)
↓ 成長欲求…基本的な欲求が満たされている上で、自己実現が可能になる。
D自己実現の欲求、真・善・美・楽・完成への欲求
現代の若者に決定的に不足しているのは、「承認」である。認められてこなかったという不足感、飢餓感、欠乏感がある。高校生の7割近くが欠乏感を持っていると言われる。承認のチャンスが不足している原因の一つに、遊びが足りない、友達と交わっていない、地域社会の中で生きていないということがある。相互に認め合う関係にとって重要な子どもの遊び集団が減り、学校や塾などの限られた空間の中だけで生活している。遊びの中で承認される能力は多様である。そこで自尊心が養われるが、学校や塾などの限られた場においては、スポーツ、勉強がダメだと行き場がなくなってしまう。
人間関係が希薄で関係性の少ない社会では、お互いが認め合う場面が少なく、限られた学校という場の中だけでの限られた基準での承認しか得られない。半分以上の子どもたちは承認欲求を満たされていないと考えられる。かつての日本社会(約50年前)では自営業が多かった。自営業や農業は自尊感情が高い職業である。サラリーマン社会が今日ほど蔓延している時代はないが、地域社会が生きていた時代は、人間関係が濃密な社会であり、いやなこともあるけれど、承認関係は至るところにあった。子ども時代の遊びの世界は相互承認の世界だった。
時間としての居場所
生きがいとは、「居甲斐」と「行き甲斐」の2つである。これから進むべき目標があること。空間と時間の居場所がクロスするところに人間は生きがいを感じる。近未来の自分が展望できるところに居場所がある。居場所がないということは、自分の将来が見えない、先が見えないという不安を伴う。
ワーク:作業A 『居場所マップ』
* 自分にとっての「人間関係」「空間・もの」「興味関心のあることがら・夢」をそれぞれ書き出す。
「身体性」との関係(P58)
関係の起点としての身体。身体が縮こまるとき、例えば満員電車の中で体が緊張しているだけでなく、心も縮こまってしまう。逆に、身体が広がるとき、例えば車の運転に慣れてくると車全体が自分の体の延長のように感じ、一体化していくという感覚。
いじめにあったりすると、その感覚がなくなってしまう。行き場がなくなると、自分の身体という居場所さえ失ってしまう。心の共同空間である身体、自分の体が自分のものであるという感覚をどう回復していくかが問題になっている。
自分の身体にすら住んでいないという感覚を持つ若者が増えていることの問題性。なぜそのような状況が生まれてきてしまったのか?
自殺の事例などの場合、心の郷土空間を失い、身体性が脱落してしまったことが読み取れる。肉体的な恐怖(死に近い)を味わってしまったがために、自分の体が自分の安全な場所ではなくなり、心が縮まってしまう。神戸児童連続殺傷事件では、少年は「透明な自分」という表現を使っている。母親のまなざしが強すぎてそこから逃れるために自分を透明にしてしまった少年が、承認への強い欲求を抱いていたことが背景にあるのではないか。親が100%子どもを支配してしまうことは自立の妨げになる。自立していく過程とは、自分の身体を自分のものとしていく過程でもある。
居場所の意味について(P63)
1) 居場所は「自分」という存在感とともにある。
2) 居場所は自分と他者との相互承認という関わりにおいて生まれる。
3) 居場所は生きられた身体としての自分が、他者・事柄・物へと相互浸透的に伸び広がっていくことで生まれる。
4) 同時にそれは世界(他者・事柄・物)の中での自分のポジションの獲得であるとともに、人生の方向性を生む。
居場所の喪失の意味について
1) 居場所は、他者・事柄・物からの一方的規定によって喪失していく。
2) それは世界の中での「自分」というポジション、人生の方向性、存在感の同時喪失を意味している。
3) それはまた自明な世界の喪失でもあり、より安全な世界への引きこもりを促す。