○交差点としてのジブラルタル

イタリアから地中海を西にすすむと、やがて海は狭くなり、北側にスペイン、南側にモロッコが迫ってくる。ここはジブラルタル海峡で、その幅は15キロメートルほどしかない。この海峡をぬけると大西洋に入る。

ジブラルタル海峡は、陸地をみればアフリカとヨーロッパが接近する地点であり、海を中心に見ても地中海世界から大西洋への門扉になっている。










○ヘラクレスの柱

ギリシャ神話では、ヘラクレスがここに柱を建てたとされている。スペイン側は、現在のジブラルタルの町にある岩山で、モロッコ側はセウタの岩山がその柱だとされている。この柱は世界のはずれで、ここを越えれば海は奈落の底に落ち込んでいると考えられた。また、逆にここをあえて越えていった一里塚であったのかもしれない。

ヘラクレスの柱を抜けてアトランティスに到達するとされている。この場合は、柱の位置がアトランティスの場所を特定する重大なヒントになる。そして、かならずしも、このジブラルタル海峡の両脇に柱が立っているとする説だけではないようだ。



○スペイン内のイギリス

ヘラクレスの柱があるジブラルタルは、現在はイギリス領になっている。スペインとしては取り戻したい気持ちで一杯だ。

スペインの国旗には、ヘラクレスの柱が描かれ、柱がある場所はスペイン領だと主張している(ヘラクレスの柱が描かれている国旗は公用、軍隊用にのみ使用する。トリノオリンピックで使用されているスペイン国旗は、たんに赤と黄の2色で塗り分けた物である)。ところがそこの住民達はイギリス領である方を好んでいるらしい。



○モロッコ内のスペイン

ジブラルタルをイギリスに取られたスペインであるが、ヘラクレスの柱のもう一方があるモロッコ側のセウタをスペイン領として確保している。

同じモロッコの地中海岸沿いで、セウタより二百数十キロメートル東のメリリャも、スペインは領有している。
セウタはアフリカ大陸にあるヨーロッパの一部、といった位置を占めるので、ここを経由にアフリカからヨーロッパへの密入国が頻発している。



○旧スペイン(西サハラ)内のモロッコ
モロッコは西サハラを広く実効支配している。実は、ここは植民地時代、スペイン領サハラであった。

ここは現在、西サハラとして一定の独立をしている。「一定」と云うのは、西サハラを国家として承認しているのは世界で約50ヵ国あるが、一方では、承認していない国も多く(日本も承認していない)。



○変形三すくみ?
 つまり、イギリスがスペイン内の一部(ジブラルタル)を持ち、スペインがモロッコ内の一部(セウタとメリリャ)を持ち、モロッコは旧スペインの一部(西サハラ)を支配している。ぐるぐる回った図式で、簡単には「こうあるべきだ」と整理できない。

実際に現地で生活する人びとにとっては、こんな図式とは別に日常の喜怒哀楽の生活が毎日続いている。地域を見る場合に、かならずしも政治的な背景だけでは語れない部分も多いだろう。



これは『ふれあい広場』8号 2006年3月1日発行に載せた記事を改稿しました。



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