地域のきまり

 

○ポコット人の村のきまり

  ある地域で暮らしていると、あたり前なので気づかないが、他所から来た人の眼には「その地域のきまり」と見えることがある。

  ケニア西部のポコット人の村で暮らし始めた頃だ。ここでは、水浴びは川でおこなう。ほんの数十センチの深さの水であるが、やはり水浴びをすると気持ちがよい。乾燥した地域なのでほこりをあびることが多く、ほとんど毎日水浴びに通っていた。時には先客がいる気配もあり、誰かがパッと逃げだしたような感じがした。それからは、こちらの存在を知らせるべく足音高く、また咳払いなどしつつ通っていた。しばらくして、水浴び場は午前中は男性、午後は女性の使用になっていたことが分かった。そのきまりが分かった以上、これに従って決められた時間帯に通わざるを得ない。

○ニャキュウサ人の村のきまり

  タンザニア西部のニャキュウサ人の村では、川にそって男性の水浴び場、女性の水浴び場、そして飲料水を汲む場が設けられていた。これらを間違えてはいけない。表札などはついていないので、利用者しか区別を知らないのであるが。

「地域のきまり」も、かならずしもいつも守られるわけではない。水浴び場でないところで水浴しても、適当なところで水を汲んでもとくに咎められるわけではない。一方で男女の水浴び場の境界を侵すと、やはり怒られるであろう。また水くみも、定まったところの水は、安心して飲める水だ。砂地を通過してきた水なので、濾過されてきれいになっている。その他の適当な場所で汲んだ水では腹をこわすことがあるかもしれない。

一般的にはきまりに従っていた方が安全で便利なようだ。地域ごとに少しずつきまりが異なっていると、その違っている様子が興味深い。

 

○スペインの宿のきまり

もう30年以上も経ってしまうが、スペインのマドリードの安宿に泊まっていた。安宿街では、どこも一階は店舗で、二階以上に客室が設けられている。宿の管理人も適当に引き上げてしまい、夜はフロントにはだれもいない。スペインでは昼寝をするためか、夜が遅い。映画、観劇、食事などを済ませて宿に戻ると、夜の12時はすぎてしまう。管理人は宿の入り口に鍵を掛けてもう何処かに行ってしまっている。

  そんなときは大きな音を出して手を叩く。すると、近所の宿の入り口の鍵をごっそり持った男性が現れて、すこしのチップで鍵を開けてくれる。とても便利な「きまり」だと思った。

  しかし、いまの物騒な時代にこのきまりがそのまま残っているだろうか。すっかり変わってしまい、鍵束を持った男性はもう引退しただろう。きまりも、大きく変わる可能性があるのだ。また、不合理なきまりであれば積極的に改廃すべき場合もあろう。

 

○私の町のきまり?

  さて、私が住んでいる町のきまりは?これがさっぱり思いつかない。すべてがあまりにも標準化しているので、特別の地域性は見つかりにくいのか。あるいは、やはり当事者としては分かりにくいのであろうか。






これは『ふれあい広場』9号 2006年4月1日発行に載せた記事を改稿しました。



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