私はマラウィで暮らしているが、自動車でタンザニアとマラウィ、さらにジンバブウェ、モザンビークを訪問する事もある。これらの移動にともなって、役所や道路上で多くの役人に書類を書いてもらったり、検査を受けたりする。いくつかの例を示そう。

○融通がきく場合  マラウィ
  マラウィに入国する時には、マラウィ国外で登録した自動車は、一時輸入許可を取得する必要がある。これは、マラウィのような内陸国には日常的なことである。カメラやパソコンなど高価な物を持ちこんだ場合は、自動車の一時輸入許可に書き添える。これらの物は、一時的に輸入が許可されたのであり、1ヵ月以内に国外に持ち出さなくてはならない。これを越える正当な理由がある場合は、申請して、1ヵ月ごとに最長6ヵ月まで延長できる。延長しないと1万クワッチャ(15000円)程度の罰金だ。

  実際には自動車についてはやかましいが、同時に持ちこんだ物について、本当に持ち出しているかどうかのチェックはほとんどない。したがって私も油断し、また、精密器械を悪路に持ち出すのも好まないので、パソコンをマラウィ内に置いたまま出国しようとした。

  運悪く、一時輸入許可証の内容どおりの物を持ち出しているか、税関職員が検査しようとした。パソコンをマラウィ内の居住地に置いてきた旨を告げると、職員は、2つの選択肢を示した。1)国境からパソコンを取りに戻る。2)パソコンに相当する金額を保証金として税関に預けておく。の2つである。どちらも私としては受け入れ難かった。「私はマラウィ大学の客員教授で、これからもずっとマラウィにいるので、パソコンは研究室においてきた」と少しだけごねたら、「上司に会え」といわれた。上司に説明すると、一時輸入許可を税関に預けて出国してもよい事になった。

  私は旅を続け、2週間後に国境に戻って一時輸入許可を回収した。

  このあたりの手順には国境の役人の裁量がかなりきくようだ。たとえば、どこの国境でも検疫と警察、あるいは税金の徴収のための事務所は設けてあるが、実効性は様々である。検疫と警察のチェックは面倒なだけなので、担当者が席を外していれば、なるべく通りすぎることにしている。マラウィでは2000年8月から国外ナンバーの車について、国内の道路使用料金をドルで徴収している。これも厳格に実施している場所は限られているようだ。


 上記の20ドルの料金の徴収は2002年には廃止になっていた(2002年8月記)。

  出入国管理の役人にも、融通がきく場合があった。タンザニアへは普通はsingle entry(1回限りの入国に有効)のビザで入るので、一度隣国へ出国して、1週間後に戻っても、20ドル支払って再度ビザをとる必要がある。しかし、「たった1週間じゃないか」と交渉し、はじめにタンザニアに入国したビザをそのまま使用して再入国した人がいる。私はタンザニアのresidentなので、「彼は私の友人だ」と言ってサポートした。


○融通がきかない場合  各国
  ジンバブウェ、タンザニアでは、国境で入国のビザを取得する場合がある。原則として、帰りの航空券か充分な金を持っている事を示さなくてはならない。

  これを厳格にあてはめて、なんとかあらを探そうとする役人もいる。「金を全部見せろ」「どこのホテルに泊まるのか」「この薬は何だ」「この器械は何だ」「通信機のように見えるが許可証はあるのか」などと荷物を開け始める。

  たしかに役人の立場になってみれば、私は興味深いものをたくさん運んでいる。薬も持っている。アマチュア無線の通信機やアンテナも分解して運んでいる。私の旅行地域には、いわゆる麻薬の汚染地帯もある。ケニア、タンザニア、ジンバブウェ、南アを結んで、流通のルートがあり、マラウィでも青少年への影響が懸念されている。また、麻薬を国家間で非合法に輸送して財を成した者もいる。

  私は、非合法な物は所有していないので、最終的にはこれらの役人の興味本位の追求も終わる。しかし、むだに国境で何時間も費やして、目的地に着くのが夜になってしまう。点検を短縮させる決定的な方法もないので、なるべく腹を立てないようにして付き合うしかない。


  役人が明確に賄賂を要求している場合や、近隣の町まで車に便乗する事を要求している場合もある。これらの要求を受けいれて、すぐに通過する事も可能だ。私の場合は、その時の気分と、体力と、荷物の内容によって按配している。強気の時は「私は、マラウィ国からは一銭ももらわないで、客員教授をやっている。私のほうが公務員のあなたから何かもらいたいくらいだ。今日は荷物チェックには協力できない」といって通った事もある。しかし、こんな強気で行くのは、よくなかったと反省している。賄賂の要求に対して、私の反応で多いのは、「次の機会にしてよ」というものだ。もちろん「次」はないことは、私も相手も判っていて挨拶としての表現である。

  これは池袋の歓楽街で客引きのお兄さんへの返答と同じであった。相手も一生懸命に仕事をしているので、無視したり、むげに断るのも悪い気がして、「今度来るよ」と答えるのである。


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役人の様態  1