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収入 と 支出


  マラウィでは最低賃金は、都市部と、それ以外(田舎とタウンシップ――小さな町)とで別々に設定されている。

  それぞれ、2000年末に改訂され、一日あたり、50K(クワッチャ、1K=1.6円、2001年7月現在。2000年7月頃は1K=2.2円)と37K、住宅費は5Kと3.7Kになった。2年ぶりの改訂で、21.7Kと17Kから引き上げられた。

  大幅な引き上げのようであるが、年間40〜50パーセントのインフレ率なので、驚くような引き上げではない。

  マラウィをはじめとして、南部アフリカでは、この程度の物価上昇率は例外ではない。このあたりでは、タンザニアの物価上昇率が年間10パーセント以下で例外的に低い。

  今回改定になった最低賃金で1ヵ月に25日働くと、月給としては1250Kと925Kになる。私の身近の役場に勤めている、高校卒の20−30代のホワイトカラーの給料が2000K程度である。40代で各セクションの中心者になっていると6000K程度だ。これに対して、ハウスキーパー、コック、夜警、など個人契約で働いている人は、月給500〜2000K程度で、役人に比べて悪いようだ。

  個人契約で働いている人の場合は、上記の最低賃金以下の場合もある。一般には買い手市場なので、アジア系の商店主などに、ごく低賃金で雇用されている例もあるようだ。また、おなじハウスキーパーであっても、主人の屋敷地内での使用人住居の有無、仕事内容、勤務日数、によっても給与は異なる。料理が上手にできたりすると、当然高額になる。

  この程度の給与をもらって、どんな暮らしが可能だろうか。

  都市部でも、電気はかならずしもすべての家に供給されていない。電気が来ていない家では、2〜3部屋で200〜300Kの家賃である。町で働くホワイトカラーは、弁当を持参する事はほとんどない。近所の簡便な食堂で昼食をとるか、あるいは職場に出入りしている業者から、あげパンなどを購入して済ませてしまう。平均して、一回30K以下だ。

  ちなみにンシマ(あるいは飯)と肉のスープで25〜40K、鶏肉のから揚げでは10〜30K、フライドポテトだけであったら15〜20Kで購入できる。

  水道も各戸に来ているとは限らない。近くの蛇口へバケツを持っていって、一杯あたりの料金を支払って水を得る地域も多い。

  こうして、家賃、水道料金、食費を勘案すると、給料にはほとんど余裕がない。夫婦がそれぞれ働いたり、出身地から食物を送ってもらったりして生活する事が一般的だ。


  一方、高級官僚、あるいは会社の幹部は、多くの手当てをもらっている。マラウィ国の各省庁の高級官僚について給与体系の見直しが2000年末におこなわれた。該当者は各省の事務次官、局長以下、全国でトップクラスの350人だ。外交官、大統領任命による役職者は含まれていない。

  彼らには月給5〜7万K程度と、以下のような手当てが支払われる。

  水道料金、電気料金、固定電話・移動電話の使用料、コック・庭師・警備員の給料、家賃、ガソリン代、月給の25パーセントを在職期間にわたって合計した退職金、である。役人の最上級クラスには子弟に月2500Kの教育費が出る。手厚い手当てだと思う。

  これらの手当ては具体的にはどの程度の金額になるのか。

  水道―500K、電気―1000K、固定電話―1万K、移動電話―1万K、コック―1500K、庭師―1000K、警備員―1000K、家賃―2万K、ガソリン代―4万K、子弟に1万Kとして、10万K/月程度であろう。

  手当てについての具体的な数字は、ブランタイヤ市長の場合に報道されていた。

  ブランタイヤは首都ではないが、マラウィで一番人口が多い都市で、市役所は政府とは別の予算運営である。ここの市長の手当ては年間200万Kといわれている。内訳は、月額、電気4000K、水道5000K、役職手当2万K、entertainment allowance1.5万K、固定電話4000K、携帯電話2万、家賃8万K、合計14.8万K/月である。その他にベンツのセダン、4輪駆動車、さらにもう一台のセダンが与えられている。

  国会議員は月給3万K+手当て、会期中は6000K/日の宿泊費が出る。

  大学教授は数万Kの月給である。大学教授の給与は他の職業との比較的高いように見える。しかし、近隣の南ア、ボツワナに比べると低く、多くの人材が国外に出てしまっている。給与以外の大学の予算がほとんどない事情もあり、これには別項で触れる。


  こうして眺めると、庶民の低賃金と、一部官僚の高賃金という構図が見える。その一方で、一般人が商売で多くを稼ぐ例も時には見られる。

  たとえば、ランチを供する簡便な食堂では700K/日の利益、醸造酒の製造販売で850K/日の利益、魚の仲買で1000K/日の利益、マンゴーの仲買で18000K/月の利益、ミニバスのコールボーイで1万K/月の利益をあげる例もある。これは、すべて新聞で報道されていた例である。








首都 リロングウェの官庁の後ろにある簡便な食堂
(中央と右)

左後方の、マラウィの中央銀行の近代的な建物と好対照

  物価について、どんな情報が実態に近いのだろうか。たとえば、日本人の、子供・年配者を含めて一人あたりのGNPは3万ドルをはるかに越えているが(一人あたりの国民所得、のほうが一般的な指標だが、こちらは1990年で19000ドル程度)、私たちがお金持ちの気分を味わっているかといえば、そうでもない。反対に、上記で紹介したマラウィの人々の所得は、高級官僚といえども日本人の平均より低いが、貧相な顔の人だけかといえば、そうでもない。マラウィの一人あたりのGNPは170ドル(1995年)である。


  マラウィやタンザニアなどでは、食費を中心とする生活費は、日本と比較して非常に安い。それでは、現地の人が、安い生活費のおかげで、余分のキャッシュを持っているかと言えば、そんなことはない。安い生活費をまかなうだけのキャッシュにも不自由している人が多い。また、政府や会社での立場上の特典を得ている者とそれ以外の者との差が目立つ。

  こうした中で、個人の裁量で多くを稼ぐ者が出てきていることは、たのもしく感じる。しかし、今のところはタンザニアの新興の金持ちと比べてやや小粒だ。これは、マラウィ全体が小さい国であることも関係しているのかもしれない。