小学校は8年間で義務教育、無償である。修了時にprimary school leaving certificate examination(PSLCE)を受験する。これに合格して中・高等学校(secondary school、以下セカンダリー)に進むことができる。となっているが、合格していない生徒を入学させているセカンダリーもあるようだ。

 セカンダリーは2〜4年間で2年修了時にjunior certificate examination(JCE)を受け、合格者が3年次に進む。4年修了時にMalawi school certificate examination (MSCE)を受ける。MSCEの合格者が次の大学や専門学校に進むことができる。学校によっては独自の入学試験を課すところもある。MSCEまでは一本道であるが、これから先は専門学校2年、大学3〜4年などの選択がある。大学院もマスターまでのコースは国内にある。

JCEの合格率が80パーセント(2000年)→51パーセント(2001年)と急に落ちた。MSCEの合格率は33パーセント(1996年)→28パーセント(1997年)→16パーセント(1998年)→13パーセント(1999年)→20パーセント(2000年)→18パーセント(2001年)となっており、こちらも2001年は振るわなかった。

一般にどの程度の年限の教育を受けているのだろうか。成人についての調査結果を表530aに示す。小学校を卒業して、教育年限が8年になる。表からは小学校を卒業する割合は直接的には分からないが、小学校段階でも止めてしまう割合が高いことは分かる。




教育年限(パーセント)

教育年限

ゼロ

4年以下

8年以下

セカンダリー以下

セカンダリー修了以上

16

44

27

12

1以下

28

45

20

6

1以下







○小学校教育・セカンダリー教育
 小学校は義務教育であるか。2002年7月には議会でこんなやり取りがあった。

野党議員「小学校は義務教育(compulsory)にするべきだ」
大臣「compulsoryにする前に学校、教員、教科書など整えるべき課題が多い。これらが片づいてからにしたい」

 ここでのcompulsoryは「保護者が子供を学校に行かせていない場合に法律上の責任を追及できるような罰則を設ける」という意味のようだ。「子供は小学校に行かなければならない(違反しても罰則はない)」という意味ではすでに義務教育になっている。しかし、大臣の答弁どおり、その環境は整っていない。一人一人が教科書を持つ状態からはほど遠い。

 セカンダリーでも教科書の配備は遅れている。私が聞いた範囲では5人に一冊の教科書があれば恵まれている状態のようだ。教科書はまったく使用しないで授業をおこなうことが常態である学校もある。これらの学校では教科書何冊かが図書室に備えられていて、生徒は必要な場合に借り出す。

 教科書が欲しくても入手できないのは看過できないとしても、「学校での教育では教科書を使用する」というのもこちらの思い込みかもしれない。ソクラテスは弟子をどう教育したか、ルソーは、ペスタロッチは、などと大きな名前を並べなくても教育の場に教科書が登場していない状態はありえるだろう。



○教育費
 定期的な収入がある者は、小学校教育でも公立を期待しないで私立の小学校に子供を入れる傾向がある。私立の小学校では、一学期(年間は三学期制)で3千〜4千Kかかる。私立のセカンダリーも同程度の金がかかる。また、寄宿制度の学校では7千〜2万K/学期の金が必要になる。大学はすべて寄宿制で年間2万5千Kである。510で示したマラウィの人々の収入と比べれば、かなり高いことが分かる。



○修了試験
 全国一律の試験はMalawi national examination board(MANEBマネブ)が管轄している。ここでも不祥事が毎年新聞をにぎわせてしまう。2000年は試験問題のコピーが出回って、マネブのトップと次席が更迭された。2001年は統計処理をするコンピュータの不調で結果が遅れた。2002年はマークシートを導入したが、記入方法が分からなくて正しく記入できない生徒が続出した。

 日本でも医師の国家試験が時々漏洩して新聞ネタになる。試験問題の漏洩など起こるべくして起こっている感だが、2000年の場合は非常に大々的であった。試験問題が広くコピーされて一科目300K程度で売り出され、田舎町のマーケットでも簡単に購入できたという。しかも科目によって微妙な差があった。つまり、いくつかの楽勝科目とされているものについては、買い手も少なく商売にならないためか、コピーが出回ることが少なかったという。


 不祥事が出る度に新聞には大きく扱われるし、何ヵ月間かはマネブのトップの発言もよく掲載され、改善の努力が示される。しかし私が知っている2000〜2002年でも毎年何かが起きている。ここに技術協力に入っている日本人の方もややあきらめた風であった。


○大学
 マラウィには、1964年の独立の年に創立されたマラウィ大学と、最近、1999年に北部に設立されたムズズ大学とがある。

 ムズズ大学は教育関係の学部のみを擁し、学生も一学年100名程度である。それに対してマラウィ大学は5学部がマラウィ各地にキャンパスを構えている。カレッジは、総長カレッジ(以下、チャンセラー校)、ポリテク校、農学カレッジ、医学カレッジ、看護カレッジである。マラウィ大学全体で3400名の学生と500名の教員が所属している。日本の私立大学の水準に比べれば教員は十分に多いように思える。これは公務員がむやみに多くなってしまうアフリカ諸国の状態を勘案して判断しなくてはならない。5つのカレッジの中では、学生数でも、予算規模でも総長カレッジが一番大きい。それについでポリテク校である。

 チャンセラー校とは妙な名称に聞こえる。これには経済、文学、物理、芸術までの学科がふくまれおり、教養学部といったところであろう。このカレッジがマラウィ大学では一番人気がある。

 チャンセラー校は、ゾンバの中心街に近いところに位置し、その建物も比較的きれいだ。レンガを多用した外観と、3階程度に抑えられた高さが好ましい(写真)。







マラウィ大学チャンセラー校。 背後にゾンバ高原が見える。 2000年撮影


 授業期間中は、学生が多数、キャンパスを闊歩している。女子学生がズボンをはいているなど、その服装にも自由さを感じる。大学まで来ている学生は、一般に裕福で、近所の閑静なバーで飲み会を開いている学生グループに出会う事もある。

 学生の数と人口との割合をみると、マラウィの大学生はごく一部の恵まれた存在である事がわかる(表)。人口比で日本の60分の1程度だ。絶対数でも少ない。毎年の卒業式に総長である大統領自らが出席するのもうなずける。

 各国の人口と大学生の数

 

マラウィ

日本

ザンビア

ウガンダ

学生数(人)

3600

276

15000

10000規模

人口(人)

1000

13000

1000

2200

学生数/人口(パーミル)

0.36

22

1.5

0.5

 



○大学授業料
 2000年には、学生とその親を驚かせる発表があった。それまで、年間1500Kであった授業料が2001年度から4万6千Kに引き上げられる、と発表された。30倍以上である。日本で1972年に、国立大学の学費が年間1万2千円から3万6千円へと3倍に引き上げられて騒動になった事を思い出した。これは3倍であるがマラウィは30倍の提案であった。

 マラウィの学生たちは当然、反対運動をした。彼らは、大学内の関係者、財務大臣、大統領に会ったり、近隣国の事情を独自に調べたり、ストライキをやったりしている。ストライキに過剰に反応した警察が催涙弾を打ち込んだ事もあった。2000年末で学費の提案は2万5千Kまで下がった。もう少し下がって妥結すると思っていたが、結局2万5千Kで決まった。

 なお、これは宿舎の使用料や食費などを含んだ一般学生の年額である。社会人入学者は授業料だけで4万5千Kで、彼らが寄宿舎を利用すれば別料金になる。



○大学の財政事情
 大学では実際に金がなく、学生からの授業料を値上げせざるを得ない事情もある。

 マラウィ大学全体として、1998年迄は毎年3000万K程度を図書と雑誌の購入にあてていた。それが、1999年からはその10分の1以下になっている。2000年からは財務省で認められた正規の図書費はゼロで、さまざまな方法で2〜300万K程度の図書を買っている状態だ。さまざまな方法とは、寄付とか、支払い延期などだ。

 ポリテク校では2001年4月の職員給与が支払えず、大学を閉鎖しレイオフを実施した。ポリテク校のレイオフは5月上旬から6月中旬まで続いた。学生も、いつまでも授業が始まらないので困ったと思う。

 こんな事態は大学だけではない。2001年の4月下旬にはマラウィの国家公務員全体にも2週間のレイオフが実施された。これも国庫に公務員の給与を支払う金がなくなったので、実施したのだ。

 マラウィの会計年度は7月から始まる。2001年7月からの会計年度では、マラウィ大学は12億Kの予算申請をしている。これに対して、財務省から認められた金額は三分の一の4億Kであった。これは、ほぼ人件費に等しい。つまり、水道、電気、電話料金を支払う金もなく、いつ止められても文句は言えない。図書は一冊も買えない、という状態だ。
 さらに、この4億Kが滞りなく財務省から大学へ渡される保証はない。マラウィでは実際の予算の執行にあたって、承認額よりもさらに絞られた金額が財務省から渡されるのが通例だ。2001年5月のポリテク校のレイオフも、毎月の政府からの金が滞ってしまったためのようだ。

 結局、上記の2001-2002会計年度の4億Kは2001年中に使用してしまい、2億Kほど追加が財務省から認められたようだ。2002-2003年度は18億Kを申請し、9億Kが認められている。

 マラウィ政府全体として、支出に対して厳しい目を向けるようになっている。今まで大まかな処理をしていた部署については、厳しく削られているようだ。大学もいいかげんさが有ったわけだ。他の部署では、在外の外交官の生活費が厳しく削られている。

 本当に予算がない状態で、大学を運営していくのは難しい。高等教育を整えなければ、次世代のリーダーを十分に育成していく事ができない。周辺国の事情もよく知られているので、優秀な大学教員はマラウィでの待遇に満足できず、南アやボツワナなどに流出してしまう。

 大学内での無駄も相当にあることは、財務省に指摘されているとおりだ。副総長は、各カレッジの独立性を高めて運営の効率化をはかり、一方では学費収入増を目指している。彼は、すでに70代前半だ。任期を5年務めたら多分引退だろう。それまでに是非、改革が軌道に乗って欲しいと思っている。







 

 


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