ソングウェ川の蛇行


 


私は、数年前からタンザニア=マラウィ国境で人びとの活動を見ている。2004年の夏もタンザニアを訪問し、調査を進めることができた。2004年は国境線の空間的な特徴が、人びとの移動に与える影響にも注目していた。

タンザニア=マラウィ国境では、ソングウェ川が国境線になっている。ソングウェ川はタンザニア=ザンビア国境の町であるトゥンドゥマ近くから発し、ニャサ湖(あるいはマラウィ湖ともいう)にそそぐ全長130キロメートルほどの川である。

ここでの全長は、地図上で大まかに計測したものである。実際にはソングウェ川は大きく蛇行し、川に沿って計ればこれをはるかに上回る長さになろう。蛇行の様子を下図に示す。1キロメートルも流れれば、大きく曲がっている様子を見て取ることができる。小さな三日月湖も、流路が二股になっているところもある。雨季になれば浸水する所も多い。

この蛇行によって国境線が長くなるだけではない。蛇行によって川の流路が数年ごとに変わってしまう。つまりタンザニア側の土地がマラウィに行き、マラウィ側の土地がタンザニアに来てしまうのである。ソングウェ川が流れている地域は無人地帯ではない。人口密度100人/q2以上で農民たちが住み、畑を耕している。彼らの畑が対岸に行ってしまっても、農民はそれをあきらめない。丸木舟で毎日川を渡って耕し続け、収穫物は持ち帰ってくる。

このような川の蛇行を、人びとの渡河が頻繁である要因の一つとして挙げることができよう。

ソングウェ川の流路を定めようとする計画はある。1960年代に両国は独立し、早くも1970年代に実施可能性を探る調査がおこなわれ、技術的には可能であると結論された。しかし、タンザニアもマラウィも経済的に余裕がなく、大規模な土木工事で国境を画定したところで利益は少ないだろう。農民たちは日常的に対岸に渡り、丸木舟や徒歩での渡河にも慣れてしまった。もちろん、橋や舗装道路があれば便利であるが、この地域にそれだけの投資をするだけの理由を見つけにくい。

国家としては、その境界をはっきりさせ、国民の出入りも管理したいのであろう。しかし、実際には国境を越えた非公式の人の移動も、国境線そのものの変動もおこっており、国家の論理だけが貫徹しているわけではない。そして、こんな事例はけっしてここだけではないだろう。







タンザニア=マラウィ国境を流れるソングウェ川。図の右端がニャサ湖。
(マラウィ政府統計局発行の地形図から筆者が改図)


written by TAROTAKO
『「人の移動と文化変容研究センター」ニューズレター』6号に掲載したものを改稿させていただきました。





アフリカ案内--タンザニア  へ戻る

タンザニア=マラウィ国境 へ戻る